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待ち伏せ


 響く足音と子供達の笑い声が通路を満たす。


 混じる水滴の音。


 それに、気付くのは狩る者としての本能。


「危ない。」

 神父がその声を聞いたのは、二度目の衝撃の時。

 一度目は、何かが体に当たる衝撃。

 二度目は、体が何かに当たる衝撃。


 軽い脳震盪のうしんとうを起こし、ふらふらと立ち上がる。

 この時、二度目に当たった何かは、床だと判る。



 頭を二、三度振り、

「何が…。」

 自らに起きた事を確かめる。

「えっ!?」

 驚き。


 自分が居た場所に覆い被さるかの様にうずくまる人の形をした毛むくじゃらなもの。

 その存在よりも目を引くのは、背中らか突き出た鈍く光るモノ。


『ズルリ…。』

 正にズルリと毛むくじゃらなものが、滑り落ち床に仰向けになった。

 その様子を目で追っていた神父に浮かぶ疑問。

(何から滑り落ちた?)


 視線を向け、

「白頭巾さん!!」

 驚く。


 片膝立ちになり、頭を丸め身を低くした白頭巾。


 全てを理解した神父。


 白頭巾が天井から落下して来た毛むくじゃらのものより、自分を助ける為に体当たりしたのだと。


「大丈夫ですか!?」

 近付く神父。


「何とかね。」

 向けた笑顔を覆う白い頭巾を、べったりと赤いものが纏わりついていた。


 答えを探すように、毛むくじゃらに目線が行っていた。

(やはり…。)


 毛むくじゃらの胸に深々と銀の短剣が刺り、赤いものが流れ出していた。

 背中らか突き出ていたのは刃先。そう、理解した。



「子供達を囮にして、上から襲うなんて考えたじゃないの。」

 立ち上がりる白頭巾。

「でも、その傷じゃあねぇ。」


 そう、その毛むくじゃらの両肩と左脚に開いた穴からは、止まることなく流れる赤い筋。


 視線を神父に向け、

「神父さんこそ、大丈夫だった?」


 まさか心配されるとはおもってもみない神父。

「あっ、はい。大丈夫です。」


「良かった。咄嗟だったから…。」

 短剣の柄を掴む。そしてニ、三度揺らすと引き抜いた。


 その反動なのか、毛むくじゃらのものは背中を反らせ痙攣けいれんする。

 直ぐに動かなくなると、全身の毛が抜け、ただの人の姿となる。


 白頭巾は、動かくなくなった死体を短剣で何度か突き、

「前に使った薬の効果がまだ残ってたようね。死んでるわ。」


 神父は、

「最初に殺された人です。」

 顔を確認し答えた。


 少し考え、

「じゃあ、これで残りはマスターだけね。」

 残り数を計算していたようだ。


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