隠し扉
祭壇の回りを探る白頭巾。
ある場所で手を止める。
「神父さん。荷物を。」
「はい、。」
呼ばれ、近付く。
背中から下ろそうと、手を掛けたところへ、
「下ろさなくていいわよ。」
横の小袋を外した。
小袋から出したのは火口箱。
素早く火を点け、紙撚状にした布を灯した。
布には何か染み込ませてあるのだろう、黒い煙を上げながら明るく燃えている。
差詰め、小さな松明といったところ。
白頭巾は、火を壁に近付け大きく…、
右に、
左に、
上に、
下に、
動かし、何かを探している。
不意に手を止め、
「あった。」
そこでは壁の隙間の呼吸で吹き出し吹き戻し、紙撚の火が揺れていた。
「それにしても…。」
見上げる白頭巾に、釣られるように神父も見上げ、
「そうですね。まさか、ここだなんて…。」
二人の見上げた先には、この教会で皆が祈る象徴。
その真下に、探していた場所があった。
紙撚の松明を左手に移すと、右手でナイフを取り出し、
「たぶん、開ける仕掛けは無いはず。」
ナイフの先端を壁の呼吸している隙間に差し込んだ。
隙間に沿ってナイフを走らせると間隔が広がり、深々と刃が入った。
そして、捏ね手が入る空間を確保した。
ナイフを戻し、今度は右手を差し込み力を入れた。
結果。
「神父さん。持ってて。」
紙撚の松明を渡した。
左手も差し込み、力を入れる。
「重い…。」
それは動かないと同じ意味だった。
「では、二人がかりで。」
荷物を下ろし、渡された紙撚の松明も床へ置く。
四本の手が差し込まれ、
「『せーの』でいきましょう。」
神父が音頭を取る。
「いきますよ。」
二人が腕に力をためる。
「せーの!」
一気に解放される力。
しかし、壁は隠した秘密を守るべく抵抗する。
拮抗する力と重さ。
続く攻防。
そして、訪れた決着の時。
ついに、『ジリジリ』と動き始めた壁。
二人の前に敗けを認めた。
大人が腰を屈めて通れる程に開いた壁。
二人の勝利である。




