反射
先程から、ちらちらと気になる。
白頭巾が短剣に反射させる月光が、女人狼の目に入る。
(小賢しい。目眩ましのつもりか!)
『コン。』
響く音。
それは、白頭巾の足下で生まれた、軽く前に振った右足と小石とが月夜に協演した小さく短い音楽。
音の直後に女人狼へ飛んで来る何か!
それを人狼の目は見逃さない。
そして、『そんなものが当たるか。』の言わんばかりに、白頭巾を睨んだまま、ゆっくりと位置を変えた。
『コロコロ…。』
音ではなく、転がったもののイメージが聞こえた。
(小石か? 何か、企んでいるな!)
また、反射する月光が女人狼の目に入る。
そして、
『コン。』
こちらも同じ、小石。
ここまでは同じだった。
だが、白頭巾が蹴った右足で、地面を踏ん張り体重を前に。
踏み込みの体制。
「シャァァァァァ!」
小石をかわし、威嚇で白頭巾の踏み込みを止める。
「読まれたか…。」
白頭巾から漏れる悔しそうな台詞は、女人狼の自尊心をくすぐる。
右足を引きながら、体重を戻し左斜に構え直す白頭巾。
今までの行動から、
(まさか小娘の残りの武器があの短剣だけか?)
考えが浮かぶが、
(いや、まだ何か隠しているに違いない。)
慎重になる。
(まただ。)
白頭巾が、短剣で月光を反射させた。
(こいつは、私を攻めあぐねている?)
ゆっくりと左に周り始める女人狼。
(仕掛けてみるか。)
くすぐられた自尊心が後押しした。
前に出した左足の親指の付け根を軸にし、後ろに引いた右足の位置をずらしながら、周る女人狼を常に正面に捉える白頭巾。
ようやく、拳銃を拾い元隠れていた場所…、荷物のある場所へ戻る神父。
教えられた手順を思い出す。
そして、気が付く震える手に。
「落ち着け。」
自分に言い聞かせるが、弾倉に上手く入らない。
「ふーっ。」
深呼吸し、作業を続ける。
「落ち着け。」
弾倉の穴にようやく弾丸の先がかかる。




