酒場、再び
街へ帰って来たのは、予定よりもかなり遅く日がとっぷりと暮れ、夜の帳が下りた頃だった。
白頭巾は、そのままアノ酒場へ行く。
酒場の扉を開くと、
「いらっしゃい。今日は、飲みに来たのかい?」
マスターが出迎えてくれた。
「白頭巾のお嬢さん。今日は?」
木こり達の言葉も優しい。
「今日は…。」
言いかけた時にカートが入って来た。
「カートじゃないか。」
そして、
「なんて、湿気た面してやがる!」
木こり達が、見たままを口にした。
「今日はね。カートさんに報酬を。」
マスターに向かい、カウンターの上にお金を置いた。
「これで、カートさんに飲ませて。」
右目を瞑り目配せをする。
「こんだけ飲んだら、汗まで酒になっちまうぜ。」
ニヤリ。
「そうなったら、見に来るわ。呼んでね。」
返した。
「そういうことか。良かったなカート。」
木こり達が囃し、
「酒だ!」
勝手に注文した。
カートの一口。
それを見た木こり達は、
「何か、あったか?」
何かを感じた様だ。
また、一口。
「何でも…。」
と、だけ答えた。
「まっ、何があったにせよ。酒で流すのが一番だ。」
カートの背中を平手で、
『バン!』
と。
「ぶっ!?」
その後、蒸せたのはお約束。
「じゃ、よろしくね。」
マスターに言うと、扉に向かう。
「任せな。」
背中に声がかかった。
同じ扉にでも、潜る方向が違うと外へ出る。
「帰りましょう。」
外で待っていた二人に合流し帰路に付いた。
道すがらペーターが、
「カートさん。大丈夫かな? かなり、ショックだったみたいだけど…。」
「そうね。帰り結構ぼーっとしてたね。」
「うん。」
そう、予定より帰りが遅れたのはカートの心に刻まれた鍾乳洞の事が原因だった。
流石、狩人といったところなのだろう、危なかっしいながらも、安全に街に帰れた。
「たぶん、お酒が流してくれるんじゃないかな?」
「大人だから?」
「そうそう。私達が心配しても仕方ないじゃない。」
「そうだね。」
「それよりも、心配なのは…。」
「心配なのは?」
白頭巾は頷き、
「晩御飯!」
『ギュルルル。』
何とも良い時に、ペーターのお腹が鳴った。
「まあ、お腹で返事するなんてペーター卑しい。」
戯ける白頭巾に対して、恥ずかしそうなペーター。
その二人のやり取りを後ろからみていた神父は、自分自身も日常と非日常の狭間行き来する事に次第に慣れはじめていると気が付いた。
更に、それを受け入れ驚かない自分がいると認識した。
それ程、ここ数日で起きた事は衝撃的だと言うことらしい。




