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断末魔


「これ以上は、何も無さそうだし…。」

 広場を見回す。

「帰ろっか。」

 白頭巾のその言葉に頷く三人。


 広場から出ようとすると、

「あっ。忘れてた。」

 生きていた死体の元へ。


「おーい。起きてる?」

 いつの間にか目を閉じ死体に戻っていた。


 ゆっくりと目を開くと、

「まだ、何か用か?」

「殺してあげるね。」

 瞬きをし、

「俺様は死なん。現に生きている。」

 今度は白頭巾がゆっくり目を閉じるも、口元を上げ笑い顔を作った。


「当時は、まだ完全に殺す方法が解らなかったから、心臓を潰し生命力が尽きるのを待つ以外に無かった…。」

 目を開きながら、ポケットから小瓶を取り出し、

「今はね。簡単に殺せるのよ。」

 死体の目の前で振って見せた。


 小瓶の栓を抜くと、短剣に垂らす。


 死体の目に恐怖が浮かび、

「死……!」

 最早言葉にならない。そして、全身で藻掻く。


 短剣を右手で逆手に構え、柄頭に左手を添える。

「その魂。人にかえりなさい。」


 勢い良く振り下ろした短剣は、死体の眉間を貫く。


「ギャァァァァァ!」

 死体が目を見開き、喉から絞り出した断末魔は口を引き裂かんばかりに開かせた。

 痙攣がしばらく続き、動かなくなると体が黒い粒子となって消えていった。


「人に戻れたから、時の重みに体が耐えられなくなったんだね。」

 白頭巾の憐れむ声。


 他の二体も短剣を刺すと同じ様に黒い粒子となり消えた。


 その光景と断末魔は、カートの心に深く刻まれた。この世のものならざる恐怖として。


「さっ、帰ろう。夜になる嫌だから。」

 皆に声を掛け、先に出口ヘ向かう白頭巾。


 カートは、はっと我に返り後を追った。




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