尋問
「細かい事は聞くのが一番ね。」
ペーターに松明を渡すと、アノ短剣を引き抜いた。
「手近な、これから聞いてみましょう。」
カートは最初に見た時から疑問に思った。
(これはどう見ても人間の死体だが。ここは鍾乳洞の中。湿度はかなり高い筈なのに、干乾びている。しかも、胸に刺さった木の杭は腐ってない…。)
白頭巾を見て、
(それに、この娘はさっきから聞くとか言ってるが、死体に聞くのか?)
自分の常識が通じない世界を足を踏み入れたと感じていた。
「二人は離れててね。」
そう言うと、死体の側に片膝を付けしゃがんだ。
そして、短剣を死体の腹に軽く刺した。
間を開け、もう一度。それは、反応を確かめるかのよう。
「死んでるか…。」
(何を言っているんだ? どう見ても、死んでるだろう。)
カートは隣の神父の反応を見る。そして、自分と違うと感じた。
(この神父は、娘のよりの反応か?)
次の死体も同じ反応。死んでいるのだから当然と言えば当然。
三体目の死体は、他とは違っていた。
右腕の肘から先、左脚の太腿から下が無かった。切り口は鋭利な刃物で切断された様な綺麗なもの。
神父は思い出す、あの朝の戦いを。
(この斬り方は見覚えがある。あの時と同じ。)
同じく白頭巾が腹を刺す。
驚いたのは、カートばかりか死体も。
「ギャーオォォォォォ!?」
口を開き、絞り出す悲鳴。それよりも叫び声に近い。
更に目を開くと左右に激しく動いた。
「やったね。生きてた。」
死体が生きていたと、喜ぶ白頭巾。
死体は藻掻き苦しみ、右腕を白頭巾に伸ばす。
「大人しくしなさい。」
立ち上がりながら、右腕の肘の辺りを左脚で思いっ切り踏み付けた。
白頭巾の言葉が聞こえたのか、死体は大人しくなり、目の焦点が合ってきた。
膝を曲げ、顔を近づけ、
「私の言う事が判るわね?」
だが、死体は無言のまま。
もう一度、死体の腹を刺し、
「聞こえないのかしら?」
今度は凄みのある声で。
干乾びた顔からは表情は読み取れないなが、目は苦悶を訴えていた。
「その姿。俺を殺した奴だな。」
それは人が言葉としてギリギリ認識できた。
「残念。貴方、死んでから何年経ってると思ってるの?」
やはり、目が驚きを表した。
「何が聞きたい…。」
「貴方のマスターの事よ。」
「マスターか…。」
「話して。」
死体は記憶を探り、
「『銀の牙』と名乗っていた。」
白頭巾も記憶を探る。
「『銀の牙』ねぇ…。」
「貴様等など、一捻りだ。」
その勝ち気な言い方が気に入らなかったようで、
「五月蝿い。」
短剣で一突きした。
また、苦悶声を上げる死体。
「マスターの死体は何処にあるの?」
死体の目が驚き、
「マスターが殺されるはずが無い。」
じっと死体を観察し、
「その分だと、マスターより先に殺されたみたいね。」
「マスターが人間如きに…。」
台詞を遮り、
「あーぁ。折角、こんな所まで来たのに残念。」
肩を竦め戯けた様に言った。
振り向き、三人に、
「今度は、また印が隠されてないか調べて。」
死体に向き直り、
「ちょっと大人しくしてなさい。」
踏んでいた足を退けた。




