夕方
夕方までかかり、大きな穴は何とか塞がった気がする状態にまではこぎつけた。
「これで何とか…。」
見上げた天井は、やはり夜空に浮かぶ星座になっていた。指図、銃創座と言ったところ。
「やっぱり、大工さん呼ばないと無理ね。」
「最初から、呼べは…。」
小さな声で抗議するペーター。
「まっ、雨降らなければ何とか大丈夫でしょ。」
誤魔化したのは明らかだった。
「お腹空いた〜。」
話題を切り替える白頭巾。
「作ります。」
「手伝うよ。」
神父とペーターの二人が食事の支度を始める。
「私は、今までの事を記録するわ。」
アノ本とペンを出し考えながら書き込んでいく。
食事を終え一段落。
「ペーター。予備のナイフあったでしょ。」
「ちょっと待って。」
大荷物へのところへ行き中を漁る。
「あったよ。」
鞘に収まっているナイフを白頭巾に手渡した。
受け取ると神父に向き、
「これを。」
神父に差し出す。
「これは?」
「護身用です。何かあったら、これを使ってください。」
ナイフを見つめ、
「申し訳ない。仮にも神に使える身、武器は手にできません。」
右の掌で押し返す。
「私が守れる時ばかりじゃないからって思ったんだけど…。」
「ご心配ありがとう御座います。大丈夫です。私には、これがありますから。」
神父は首に掛けていた十字架を持ち上げ、白頭巾に見せる。
「なるほど。神に使えるものの武器ですね。」
「武器と言う言い方には些か引っかかりますが…。」
白頭巾は何か気になったように、
「古いもののようですが…。ちょっと、よろしいですか?」
十字架を首から外し、
「はい。どうぞ。」
白頭巾に渡しす。
一見し、
「古いですが、良く手入れされていますね。これを何処で?」
「これは、マーシュ神父様が私に使ってほしいと。何でも、代々この街の教会に伝わるものらしいです。正式に次の人が就任すればお渡しするつもりです。」
「マーシュ神父から…。この街の教会に伝わるもの…。」
鈍く光る十字架の表を観察。
「へー。」
裏返し、気が付く。
「模様が彫り込んである…。」
それ長年の歳月で、多少擦り切れた。
模様を見ながら十字架を上に、下に、右に、左に…、と色々な角度から眺め、耳の側で揺すり、次に指で弾いた。
そして、考えた込む白頭巾。
「ありがとう。」
十字架を神父に返した。
「十字架に何かあるのですか?」
やはり、興味をそそられ白頭巾に聞いていた。
「そう思って調べたけど、普通の銀製の十字架みたいね。」
「そうですか。あの昔話と関係があるのかと思いました。」
「私も。」
その後、明日の準備を始めた白頭巾とペーター。
「忘れ物ないようにね。」
「任せてよ。」
手際良く用意するペーター。
「明日も忙しくなりそうね。」
白頭巾が愚痴ぽく漏らした。




