翌朝
翌朝。
様子を見に来て家の変わり様に驚き駆け込む神父。
「あら、神父さん。お早うございます。」
箒を手にした白頭巾が挨拶した。
あまりにも日常の一駒の様な挨拶に面食らい、
「あっ、あっ。お早うございます。」
詰まりながら返した。
奥ではペーターが木切れを拾っているのが見えた。
「あっ。神父さん。おはよー。」
気が付き挨拶した。
「お早うございます。」
室内を見回し、あまりの惨状に思考が止まった。
ようやく、現実に思考が追い付き、
「こ、この惨状は…。」
だけは、言えた。
「昨夜、来客があったので。」
白頭巾は軽く言った。
もう一度、室内を見回し、
「どう見ても戦った後ですよね…。」
「ええ、来客だったので。」
鈍っていたのだろう脳の回転が通常運転を始め、
「そっちの来客ですか!」
改めて驚いた。
「良かったら、片付けを手伝って下さい。」
はっとし、
「解りました。」
見たよりも、実際の片付けが大変だと分かった。
どれだけ、激しい戦いがあったのか、壁や天井に空いた穴が物語っていた。
どれ位掛かったのだろう。最初に片付けた時よりも時間が掛かったのは間違いなかった。
一段落し、気になっていた、
「お客さんはどうしたんですか?」
「帰っちゃって…。」
「そうですか…。」
「しばらく、泊まってもらおうと思って頑張ったんだけど…。」
比喩で表現しているが、生け捕りにしようとしていたのだと神父は理解した。
「何か作りましょうか?」
「待ってました!」
ペーターが飛び上がる勢いで喜んだ。
「お願いします。」
「任せてください。」
「じゃあ、ペーターも手伝ってね。私は外行って来るから。」
「は~い。」
二人の料理が始まった。
外の仕掛けを確かめ、
「やっぱり、こっちから来たみたいね。」
見詰めた先には街並み…。
「街に潜んでいるんだ。」
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさま〜。」
やはり、神父よりも早く終わる二人。
神父が食べ終わるのを待っていたかの様に、
「ちょっと休憩したら、穴を塞がないとね…。」
室内は昨日よりも断然明るかった。その原因は昨夜の戦い。
家内中の穴を見回し、
「これ、大工さんの本職仕事ぐらいの穴だよね。」
抗議したペーター。
「ペーター。最近の男子は何でも出来る人がモテるのよ。」
笑顔の圧力。
「前は、料理出来る男子がモテるって言ったのに。」
「料理は何でもに入ってるの。それに、大工さん呼んだら説明面倒だし、お金も掛かるでしょ。」
「別に、ここにずっと住むわけじゃないのに…。」
「お仕事終わるまで、雨降らないと良いわね。」
最後の一言でペーターの顔に諦めの表情が見て取れた。
「私も手伝いますから。」
神父が名乗り出た。
「良かったねぇ。ペーター。」
「解った…。」
落とした肩越しに白頭巾を見て、
「で、ご主人様は何するんですか?」
「私は…。」
可愛く首を傾げ、
「お応援するわよ。」
笑顔も浮かべた。
「手伝わないの?」
せめてもの抗議。
「私が手伝って穴が広がったらどうするのよ。」
「ホントだ…。」
本気で答えた。
「そこは、否定するところでしょ。」
ぷぃっと、そっぽを向く。
ペーターは神父に向き直り、
「やろっか。」
今までのやり取りに気を取られていた神父は、
「わ、解りました。」
いきなり振られて慌てた。




