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捕まえーた


 白頭巾は口角を上げ、

「やるじゃない。」


 そして、見た。人狼の口元がニヤリとするのを。


 人狼にとって物理的な絶対的有利である体重の差。


 腕を畳みながら体に引きつける。一方、体は前に押し出す。

 これは白頭巾の位置を後に下げないで、短い距離で助走し加速を付ける。


 体重差を生かした体当たり。


「ちょ!」

 白頭巾は後ろに跳ぶが、仕掛けた人狼が刹那早い。


 威力を殺しきれず、よろける。


 白頭巾に目掛めがけ殺意の一撃が繰り出される。


 咄嗟に短剣を差し出す。


『カーン。』

 受けたと同時に手が痺れ、握っていた物が喪失した。


 壁に『ザクッ』と短剣が突き立つ。


「ヤバっ。」

 人狼の背中が見えた。


 無意識に両腕を交差させる防御体制をとらせたのは、鍛錬の成果なのか、その身に流れる血の本能なのか。


 人狼は灰掻き棒を振った勢いで回転し、空中で後ろ蹴りを放った。

 後にローリング・ソバットと呼ばれる技である。


 重い一撃。


 耐えきれるはずもなく、吹っ飛び転がる白頭巾。




「あたたたっ。」

 床に大の字の白頭巾。


 空いた穴から差し込んでいた月明かりが、闇に変わる。同時に、締められる首。


 人狼が灰掻き棒を捨て、白頭巾の首を右手で押さえていた。


 その気になれば少女の細い首など一捻りできるのだろう。

 それをしないのは恐怖を植え付けるためか、いたぶっているのか?

 人狼の目に浮かぶのは、勝ち誇ったものの優越さ。『どうしてやろう』と言わんばかり。



 鼻を近付け、匂いを嗅ぐ人狼。


 この少女の恐怖の匂いは、今までにないない程の香しいものであろうと思いながら。


 違和感!?


 少女の匂いは恐怖では無かった。


「捕まえーた。」

 人狼の右手首を掴む白頭巾。その手は少女以外の何ものでもないが、伝わって来る得体のしれないものに恐怖を覚える。


「ガルッ!」

 右手首を掴む手に気を取られる。


 一瞬。


 目の前に突き付けられた拳銃。


 記憶を遡っても白頭巾が拳銃を取り出す仕草は思い出せなかった。


「グッ!」

 戦いに夢中になり、気が付かなった。白頭巾の倒れた側のベッドの下からの臭いに。


 そう、そこはペーターが隠れているベッド。



 あの時。


 床に大の字に転がった白頭巾の右手はベッドの下に入っていた。その手に、弾を込め直した拳銃をペーターが握らる。



『パン!』

 人狼の眉間に付けた狙いを右肩に移すと同時に撃った。


 激痛に体を引く人狼。


『パン!』

 今度は、左肩に激痛が走る。


 たまらず床を蹴り飛び退く。


 『パン!』

 足先が床に触れる直前。一番無防備な瞬間を撃った。

 左太腿に激痛が追加されていた。


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