市長宅、再び
二人は昨日と同じ時間に教会に来た。
「おはよう御座います。」
こちらも昨日と同じで教会の前で迎える神父。
「おはよー。」
「おはよう御座います。」
「今日は、この街の昔話聞ける人を紹介してください。」
昨日のお願いと言ったのはこれらしい。
「解りました。」
伝承を調べるのか? と思いつつ、
「どれ位、昔が良いのでしょう?」
「できるだけ、昔の話が良いわ。この街が造られた頃だと、最高なんだけど…。」
少し考え、
「市長さんのところへ行ってみましょうか、街の人の事は詳しいと思いますから。」
「そうね。そうしましょ。」
「えっ。市長さんの所!?」
驚くペーター。
「ペーターさん。何か問題でも。」
その表情を見た神父が聞く。
「いやぁ、市長さんの所へ行くなら、朝御飯食べなきゃ良かったなって。」
白頭巾の右手がまた振り下ろされた。
「バカ!」
「痛たたた…。暴力反対。」
抗議は認められなかった。
到着すとる使用人に市長がいる寝室に通される。
「お加減はどうですか?」
「何とか…。」
神父の問に笑顔で答える市長。
「今日は何か?」
見舞いに来たのではないと雰囲気で察したようだ。
「白頭巾さんがお話を聞きたいそうです。」
「お話ですか?」
「えぇ、この町の昔話とか伝承を聞きたくて。」
「なるほど…。」
「できれば、この街が造られた辺りが聞きたいのですが…。」
考え始める市長。
「それでしたら、私よりも適任がおります。」
側机の呼び鈴と取り鳴らす。
「なんでしょうか?」
使用人が扉から入って来た。
「ジャン爺さんは、まだ息災だったな?」
「確かそのはずですが。」
「解った。」
神父達に向き直り、
「ジャン爺さんに聞くと良いぞ。」
「ジャン爺さんですか…。」
「そうだ。」
「西地区で聞けば直に判るはずだ。」
「行ってみますわ。」
ふと、何か思い出した様な顔になり、
「傷口を見ましょうか。」
バスケットからアノ短剣を取り出し、いつでも抜ける様に腰に挿した。
傷口を見ながら白頭巾は、
「順調みたいだけど…。」
不意に短剣を抜いた。
「えっ!?」
鈍く光る刃に、神父と市長が驚くのは当然だろう。
白頭巾は短剣の腹…平とも呼ばれる横の平らな部分を傷口に当てた。
「熱かったり、痛かったりはしない?」
「ないです。」
答える市長の顔から嘘が無いと確認した白頭巾は、短剣を収めた。
「問題無いようね。」
その言葉は市長と神父を安堵させた。




