教会
教会に帰って来た三人は裏の倉庫に直行し、穴掘りの道具を片付ける。
「あの声は?」
白頭巾が気が付く。
それは、子供達が同じ文言を同時に発していた。
「あれは、マーシュ神父様が子供達に読み書きを教えているのですよ。」
「へー。」
ペーターの自分とは関係無いと言わんばかりの言い方。
「ペーターも教えて貰うと良いわね。」
笑いかける白頭巾に、ほら来たとペーターは、
「何で僕が…。」
「だって、ペーターは字書けないでしょ。」
「書けるよ!」
強く否定した。
「あら…。いつから?」
「さ、最近だよ…。」
語尾は小声になった。
「ふ~ん。」
白頭巾は、新しい玩具を見付けた子供の目をした。
「お、お茶入れますから。」
神父は話題を変える。
「直に用意します。」
台所へ向かう神父の背中に、
「教会の中を見せてもらっても良いかしら?」
白頭巾が声をかけた。
「どうぞ。」
「許可が無いとね。」
そう言うと教会へ入った。
「ここに、おられましたか。」
祭壇の前で白頭巾を見付けた。
ちなみにペーターは椅子に座ってうとうとしている。穴掘りで疲れたのだろう。
白頭巾が天井を見上げ、見回す様にゆっくりと頭を巡らせていた。見る事に集中していたるのか、近付く神父には目もくれない。
「この教会が作られた時のままだそうです。」
ちらりとだけ、神父を見る白頭巾。
「何でも、マーシュ神父様の提案で近々修復されるとか。」
修復と言われた通りに、天井の絵はかなり色褪せ、剥がれていた。
「冷めないうちに、どうぞ。」
その言葉に反応しペーターが目を開き、
「わーい。」
最初にティーカップの横に置かれたお菓子を手にした。
「あっ、ペーターずるい! 私のも残しといてよ。」
あっという間にお菓子が無くなる。
お茶請けに用意したお菓子が、本命でお茶で口直しする。何とも子供らしい状況となった。
お茶を飲み終えると、
「神父さん。明日もお願いしたいのですが。」
「私に出来る事ならば何でも。」
「では、明日もよろしくね。」
「解りました。」
教会からの帰り際、
「神父さん。棺の中の事は内緒で…。」
右の人差し指で、鼻と口を封印する仕草をした。




