事件
まだ人が夜を恐れていた時代。
昼は人が支配し、夜は魔物が支配していた。
この街に転属になってから、早二ヶ月。少しは馴染んできたと思うのはレイモンド神父。
朝の静寂を破る音。それは、ノックではなく、叩く音だった。
「神父様! 大変です!」
繰り返しながら、扉を叩く。
寝間着のまま、扉を開き、
「どうしたのですか?」
穏やかな声。扉を叩いていたのは市長付きの使用人。
「また、殺られました!」
眠気が、一気に吹き飛び、
「直に準備します。」
奥へ向かった。
着替えを済ませ出ると、
「市長に連絡は?」
使用人に聞いた。
「そちっは、別の者が行っています。」
「解りました。では、こちらは現場に向かいましょう。」
使用人は無言で頷く。
街外れ。
そこが現場だった。
神父が到着すると数人の男が既に来ていた。その中の一人が気付き、
「神父様。」
その声に反応し、
「市長。」
返す。
男達の所まで行くと、
「見てください、神父様。前と同じです。」
言われ、無残に転がる死体を覗き込む神父。
観察し、
「一度なら偶然もありましょうが、これは明らかに狙っての仕業だと…。」
「神父様もそう思われますか、私達も同じ結論です。」
市長はどうしたものかといった表情。
しばらく考えた神父は決意したように、
「やはり、専門家に頼りましょう。」
「専門家ですか…。」
困惑する市長。
「以前、お世話になったリチャード神父様に聞いたことがあります。」
「はぁ。」
市長は、半信半疑といった面持ち。
「リチャード神父様に聞いてみましょう。」
「お願いします。」
藁にもすがる思いだった。
「直に、手紙を認めます。」




