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開ける


 掘り続ける二人を尻目に白頭巾は木陰に入り高みの見物。


 ついには、うとうとと船を漕ぎ始める。



 ペーターに掘る手応えで無い感触と『ガツ』という音。

「あった。」

 ようやく棺を掘り当てた。そして、蓋の周りの土が退けられる。



「ご主人様。出たよ。」

 微睡まどろみの中でペーターの声を聞き、

「うっんーん。」

 背伸びしてから立ち上がった。



 二人で掘った穴の底に横たわる棺を見下ろしながら、

「ゆっくり開けて。」

 二人は、棺と蓋の間にスコップの先を掛けた。

「危ないって思ったら直に逃げてね。」

 二人は目で合図した。

「仲間になったら面倒だから。」


 スコップに力を掛けると、『ギィー』と軋む音と共にゆっくりと蓋が開いていく。


 その場の三人に緊張が走る。


 白頭巾は後の腰に挿した短剣の柄に手をかける。


 スコップに掛けていた力が不意に開放された。打ち付けていた釘が抜け、蓋が浮く。


 逃げ出すペーターと神父。


 棺の中を確認する白頭巾。

「あれ?」

 緊張感の無い声。

「空っぽだ…。」

 逃げ出した二人も戻って来て、中を確かめる。

「本当だ。」

「本当ですね。」

 神父は目を閉じ記憶を探り、

「確かに、ここに死体はあったはずです。」


「うーん。」

 腕組みをして考える白頭巾。


「考えても無い物は無い。次は最初の犠牲者の墓を掘って。」

 二人に指示を出し、

「私は棺を調べてみる。」

 穴に降りる。



 二人は休む間もなく、次の墓に行き掘り始めた。


 白頭巾は棺の中を丹念に調べ、終えると蓋を戻した。


 また木陰に戻り座る。


 目を閉じる。


 その口元からぶつぶつの聞こえるのは、今回は寝ないで考えているのだろうと察しが付く。



 次の棺が掘り起こされ、また緊張の時を迎える。


 開かれる棺。


「こっちも空か…。」

 先程と同じ様に穴に降り、

「調べるから、向こうを埋め戻して。」

 指示を出した。


 白頭巾が一通り調べ穴から這い上がり、空を見上げる。


 埋め戻しをしている二人に、

「お昼にしよう。」


「お腹空いたぁ…。」

 ペーターが持って来た荷物の中からお昼ご飯を出した。

「今朝、市場で買ってきたんだ。」

 神父は、受取りながら、

「ありがとう御座います。」


「いただきまーす。」

「いただきます。」

 やはり、二人は直に食事を始めた。

 神父は、一人祈りを捧げた。



 ここだけ切り取れば、楽しいピクニックに見えるだろう。



「ごちそうさま。」

「ごちそうさま。」

 先に食べ始めた二人は食事を終える。

「お腹いっぱいだ。」

 お腹をさするペーター。

「お行儀悪いよ。ペーター。」

「誰も見てないから大丈夫。」


 そんなやり取りを見た神父は慌てて残りを搔き込みむせた。

「ゴホッ! ゴホッ!」

「慌てるから。ペーター、水。」

 言われ水筒を出し、

「はい。」

 白いに渡す。

「はい。飲んで。」

 渡しながら背中を擦る白頭巾。


 また、神父の中で白い頭巾の少女の印象がれる。


 落ち着くと、

「すみませんでした。」

 謝る神父。



 その後、休憩し、

「再開! 埋め戻しよろしくね。」

 二人に言い、本人はバスケットから革表紙の本を出した。


 本を開くと白紙で、それが手帳かノートの類だと判る。

 そして、ペンで何かを書き込み始めた。

 書き込んでは、手を止め空を仰ぎ考えるを繰り返した。



 おもむろにペンを置き、『パチン』と本を閉じる音が響いた。


 本をバスケットに戻し、また取り出した。よく見れば、取り出した本は年期が入っいる。


 開くと、びっしりと書かれた文字。ページによっては絵が描き込まれている。


 指でなぞりながら読み、時折考えるように天を仰ぐ。



「終わったよ。」

 ペーターが白頭巾に作業の終を告げた。

「帰りましょうか。」


 三人は街への帰路へ付いた。


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