掘る
翌朝。
二人は、教会を訪ねる。
「おはよう御座います。」
教会の正面で迎える神父。
「おはよう御座います。」
「おっはー。」
二人も挨拶を返す。
「言われた物を裏に用意しています。」
歩き出し、先導する神父。
教会をぐるりと回ったところの壁に立て掛けてあった。
「じゃ、ペーターよろしく。」
「えーっ!」
抗議。
「ほら、荷物いっぱいだし…。」
言葉の通りにペーターの背中に荷物。背負い袋からはみ出ているのは、昨日の筒型の武器。
「私もいっぱいだし…。」
白頭巾は大きなバスケットを抱えていた。
神父の記憶では昨日はペーターさんが抱えていたはず。
この中には銀の短剣がある? と言う事は、昨日戦った様な奴と戦う?
「ペーターなら大丈夫!」
バスケットを置き、立てかけてあった穴掘り用のスコップをペーターに持たせた。
「もう…。」
一応、抗議する。
「じゃあ、出発!」
振り向き歩き出す二人の背中を、
「手伝います。」
スコップを持つ神父が追いかける。
三人は仲良く歩いて街を出た。
スコップさえ無ければ、楽しそうなピクニック見えただろう。
神父は、この道がたどり着く場所を知っている。
「墓地ですか?」
「そうよ。昨日、街で聞いたの。」
「墓地で何を?」
「う~んとね。」
少し考え、
「墓暴きかな?」
聖職者を前で聞ける台詞では無いのは確か。
「は、墓暴き!?」
驚く神父。
「ほら、私達が来る前に二人の犠牲者が出たんでしょ…。」
「そうですが…。」
「死体の状態を確認しないとね。」
昨日の事を思い出し、
「そうですね…。」
それだけ答えた。
墓地に到着。
「神父さんなら、埋めた場所解るでしょ。」
「はい。私が埋葬の時に立ち会いましたから。」
「どっちから…。」
首を傾げ考え、
「新しい方からにしましょ。何処かしら?」
「こっちです。」
神父が案内する。
「此処です。」
お目当ての墓地の前。
「ペーターよろしくね。」
「はぃ…。」
あまり、乗り気では無いらしい。
荷物を降ろすと、スコップを構え地面に突き刺す。
少し遅れ、神父も同じ様に掘り始めた。
掘り始めたのを確認すると、白頭巾はバスケットを降ろし、中の物を取り出した。
「ご主人様…。」
「何かしら?」
ペーターの方を見ないで、取り出した物を身に着けていく。
「何で、その装備が必要なんですか?」
ペーターの方を向き、
「だって、掘る音で起きたら要るでしょ。」
「えっ!」
ペーターと神父が同時に驚く。
「起きるって…、死体が?」
「決まってるじゃない。感染していれば確実に仲間よ。」
ペーターは神父を一度みてから白頭巾に向き、
「僕達、大丈夫なんだよね。」
「大丈夫よ。」
安堵するペーター。
「殺られる前に逃げれば、問題なし。」
ペーターと神父の手が止まる。
「手を止めないで掘る。後一つ有るんだから。」
白頭巾は、やはり容赦無かった。




