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仮住まい

 その庭師を一言で表すとしたら、

(無口)

だと思いながら後ろを付いて行く白頭巾。

 更にその後に付いて来るペーターは大荷物。



 見て回った町中を抜けると、少し先に一軒家が見えた。


 辺りを見回し、

「あそこなら大丈夫そうね。」

 言ったが誰も反応しなかったので独り言になった。



 一軒家に近付くと、扉と窓が開けられ、中から音が聴こえる。

(そういえば、神父が用意しているって言ってたわね。)


 不意に、

「ここです。」

 庭師の声を初めて聞いた。


「ありがとう。もう、大丈夫よ。」

 それが合図になったようで、庭師は軽く頭を下げると、そそくさと帰った。


 扉を叩き、

「入っても良いかしら?」

 神父が手を止め、

「どうぞ。」

 その声はくぐもっていた。


 中に入ると神父が布で口元を覆い、はたき掛けをしていた。

 くぐもった声の正体はこれらしい。


 二人が入ると手を止め、

「早かったですね。こちらは、もう少し掛かりそうです。」

 その通りに部屋中に埃が積もっていた。


 見回し、

「皆でやった方が早そうね。」

「良いのですか?」

「何が?」

「手伝って貰っても…。」

「終わらせないと寝る所が無いでしょ。」

「申し訳ない…。」


「でも、何故神父さんが掃除をしているの?」

「私がお願いしたのに何も出来ないので、せめて掃除でもと思いまして。」

「なるほど…。」


 もう一度、部屋を見回す白頭巾に、

「私がここに来る前から使っていなかったとか…。」

「そのようね。でも、私の出した条件にはピッタリよ。」

「そう言ってもらえると…。」


 間。


「やっちゃいましょう。」

 頭巾を抜き始める。


 視線を感じ、向くと神父が見ていた。

「脱がないと、埃で灰頭巾になっちゃうでしょ。」


 沈黙。


 振り下ろされる右手。

「痛!?」

 頭を押さえながら、

「なんで、僕が…。」

 抗議したが、

「五月蝿い!」

 一蹴された。


 白い頭巾の下から出てきたのは、艷やかな金色の二本お下げ。愛嬌のある可愛いらしい顔に良く似合っていた。

 それが、かえって神父を混乱させる。


(戦っている時、話をしている時、そして…その今の表情。彼女の本当の姿は?)


「やっちゃいましょ。」

 その言葉で神父は我に返り。

「はい。」


 次に見た白頭巾は、白いホッかむりの姿。


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