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契約


 二人は…。いえ、白頭巾は街の中を散々見て回り、ペーターはそれに付き合わされた。



 市長宅に帰ってきたのは、お昼過ぎ。

「お帰りなさいませ。」

 使用人が迎えてくれた。

「市長がお待ちです。」


 その言葉に一番に反応したのは、左の目尻。

「決断したのかしら。」



 使用人に案内され、寝室へ通される。


「お待ちしておりました。」

 体を起こそうとする市長へ、

「そのままで良いわよ。」

「助かります。」


 ベットの横に用意された椅子に腰掛けると、

「お腹空いちゃた。」

 使用人に笑顔で催促した。

「僕も!」

 当然の様にペーターも乗った。

「かしこまりました。用意いたします。」

 使用人は下がる。


 市長に向き直る白頭巾。

「どうするの?」

 単刀直入聞く。

「お願いします。」

 それを聞き、笑顔で

「良い判断ね。流石、市長さんね。」

「褒めても、追加は出ませんよ。」

「あら、残念。」

 お互いに笑った。


 一頻り笑うと、真顔に戻り、

「街中を見てきたけど…。」

「はい…。」

 市長も真顔で受ける。

「居るわ。今朝の奴の仲間が、紛れ込んでいたわよ。」

「まさか!?」

 驚きのあまり痛みも忘れ起き上がった市長。


「私も、まさかとは思ったけど…。」

 グッと拳を握り、

「この私を値踏みするなんて。」

 怒り。それが滲み出た。

「値踏みですか…。」

 話が予想外で、驚きを忘れていた。


「奴ら、まだ自分達が狩る側だと思っているのよ。」

 言葉の重みが市長に染みた。

「私が来た時に、狩られる側になったと解ってない。」

 その自信は市長を安堵させる。


 不意に。


 気が付き、

「ところで、神父さんは?」

「ああ、レイモンド神父様なら、あなた達の住まいを準備しに行ってます。」

「じゃあ、後で行ってみるわ。」

「後ですか?」

「ええ、後で。だって…。」


 扉が叩かれる。

「ほら、来た。」

 市長は、またも驚かされた白い頭巾の少女に。


「用意できました。こちらへ。」

「はーい。」

 部屋を出て行く背中を見詰めながら、

「姿に、惑わされてはいけないと言う事か…。」

 小さく呟く。




「ごちそうさまー。」

「ごちそうさまでした。」

 食事を終える二人。

「ここの料理担当の方は腕が良いのね。」

 片付けをしている使用人に話かける。

「そう言っていただけると喜びますよ。」


 

「さてと、私達の家に行きますか。」

「じゃあ、荷物取ってきます。」

 ペーターが客間に向かった。


「誰か、案内してくれる人を。」

 使用人が片付けの手を止め、

「はい。承知しました。」

 部屋を出る。



 先に帰ってきたのペーター。


 それから、程なくし使用人が帰って来ると、もう一人初老の日焼けした男性が付いて来ていた。

「庭師に案内させます。」

 そう言うと、食器の片付けに戻った。






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