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生きることに意味があるか

作者: 中島虎太郎

生きることに意味があるか

無い。それは、数学者の得意としている演繹的な照明ではなく、物理学者が得意としている帰納的な推論から導きだされる帰結である。生きる意味、という、ユークリッド幾何学やマクスウェル方程式よりも重要に感じられるこの問いに対し、数々の偉人、貴人、変人がアプローチしなかったわけがない、かくいう自分も考えた。わからぬ。まったくわからぬ。何をどう考えてもわからぬ。意味という無数の意味の砂丘から、一粒の意味あるものも見つけてこれないのであるから、これはもうないと考えるほかない。しかし、これはまた、ひとつの矛盾をもっている。なぜ、みんな(みんなというのは、世間一般に言われるみんな、であり、世間一般の世間の部分のこと)は生きているのか。これに対して、私はとりあえず、生きる意味がないことは、死ぬ理由にはならないといってみる。しかし、それは本当か。人間の一日は、目覚めという不快から始まる。起きて、寝るまでの間に守らねばならぬ、ルール、モラル、法律という名の呪縛。なにも思い通りにはならないという無力感。誰からも愛されぬ、評価されぬという孤独。真面目に生きれど、持って生まれた者との差は縮まらぬ。顔、金、コネ。男達の三種の神器は、誰にでも与えられているわけではない。人類みな不平等だ。それでいいのだ、それが人間と、上っ面を飾り立てる偽善者を見よ。奴の隣にいる女はなんだ?奴の身に着けている時計はなんだ。そう、それらはすべて強者の飾り立てにすぎない。

人は生まれて、死ぬまで、これら不幸と一生向き合い続けなければいけない。そして、驚くべきことに、これらの不幸に意味はない。単に運が悪かっただけ。女優と結婚したあの男も、若くして病気で亡くなったあの子にも等しく意味はない。


ああ、誰か俺を救ってくれ。俺を、この無価値で無意味な世界から救い上げてくれ。

「いいよ。」と笑顔で言った彼女は、先日結婚したらしい。


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