創造主
朝の光が部屋に差し込む。あれ、もう夜明け…?窓に目を向けると、まだ顔を出したばかりの太陽が建物と建物の間からチラチラと見えていた。
麻姫はぐっと伸びをした。夜中からずっと作っているテディベアはもう、手足を胴体にくっつければ完成というところだった。
今日は中学校の卒業式。当たり前のように毎日会って喋っていた彼とも会えなくなってしまう。だから、得意なテディベアを作って渡すんだ。麻姫のことを忘れてしまわないように。
早く、でも丁寧に、麻姫は縫い続けた。
家を出なきゃいけないギリギリの時間。
やっと完成したテディベアをカバンに詰め、麻姫は上機嫌だった。だけど、急がなきゃ。もう間に合わないよ。
身支度を整え、朝ごはんもおざなりに家を出た。
だいぶ大変な時間。卒業式で遅刻なんて、ありえない。
ここの信号、長いんだよね…。
まだいける、大丈夫。麻姫は駆け出した。
点滅し始めちゃったけど、渡り切れる!
なにか重いものがぶつかった。まだ赤になってないよ?左半身に例えようのない痛みが走った。なにかが、麻姫の身体に体当たりした。テディベア、守らなきゃ…。反射的にそう思ったけれど、意識は暗闇に放り出された。
目を開けると、真っ暗闇だった。不思議と身体の痛さはない。どうしたんだろ、ここ、どこだろう…。
周りを見渡すと、暗闇に紛れて幾つもの扉があった。
なんとなく、扉を開けて誰かと会う必要がある、って思った。
誰かが麻姫を待っている。
そんな確信があった。