第4話 定期試験−ホーク編
扉が二つ。
現在地と目的地のみの位置関係を表示してある液晶の画面。
直線距離では右側の扉を行くのがいいようだが、ここはそう簡単ではない事をすでに数分前、経験済みだ。
その経験を生かし、左側の扉を開けた。
だが、僕の運はいい方向に行ってはくれないようで、そこには亀がいた。
後ろの扉は既に閉じられている。
後戻りはできない。
亀。
正式名称、シャーハ=タートゥ。温厚だが知能が高く、攻撃が効かない。
倒す事ができず、逆に倒される事も無い。
亀の後ろには扉が一つ。
「三つのうち、二つはダミー?」
独り言のように言ったが、意外な事に返事が返ってきた。
(否)
視線を亀に向ける。
今の念話からして、相当古くから生きている亀のようだ。
「それなら、全て正解?」
(否)
「正解は一つ。だけど他も開くべき」
(是)
「なるほど」
じっと亀を見詰める。
開く順番か。それとも鍵が入っているのか。扉を開く事自体が鍵なのか。扉の中の魔物が鍵を所持しているのか。
いずれにしても、とにかく開けよう。
僕は亀の脇を素通りし、左側の扉を開けた。
目に入ってきたのは岩壁。他には無い。
空っぽの部屋。
なんか、こんな魔法があったような。
『空白(empty)』だったか。
部屋の中に魔法の気配すらない。
一旦外に出て扉を閉める。
亀は、こっちを向いていた。
意思は読み取れない。
次の扉を開けることにした。
今度は真中の扉。
しかし、そこも空っぽ。
右側の扉も空っぽだった。
亀の隣に立つ。
「扉にも魔力は感じなかった。と言う事は、魔法を使わないで通れる」
(否)
違うらしい。
空っぽの部屋が三つ。
なぜ三つあるのか。なぜ亀がいるのか。
理由があるはずだ。
それと、魔法は使わないといけない。
攻撃魔法は使えない。次来る人のために、洞窟の形状は広いドーム状の所以外は形状を変えてはいけない事になっている。
補助系の魔法か。
三つの部屋全部使うのだから、次の二つが考えられる。
連鎖。一気。
連鎖的に起こる仕掛けだったら、六パターンあるから面倒。
一気の方をやるか。
「亀さん、手伝ってくれますか?」
(是)
「その左の部屋に入ってくれますか?」
(是)
亀はゆっくりとその部屋に入っていった。
「僕は、っと」
足元から少し外れた場所に魔方陣を展開させる。
「アイネ、ナハビルドゥンク」
そう言うと、僕と同じ姿をした人が魔方陣の中心からせり上がってきた。
「君は、右の部屋に入ってくれる?」
その『複製(reproduction)』された僕は指示に従い、右の部屋の中に入っていった。
「僕は真中っと」
扉を開けて中に入り、扉を閉める。
部屋の真中辺りまで来ると、仕掛けが作動した。
地面がぱっくりと二つに割れ、僕は真っ暗闇の底に落とされたのだった。