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第六話 ウソ×ウソ

余命1ヶ月。今まで、それを感じさせない生活をしてきたつもりだ。まさかバレている?いや、まだわからない。取り調べなわけじゃないが、自分からボロは出さないようにしないと。

「あぁ、別にそんな重く捉えなくていいけどさ、ただ単純に興味があって。余命って決まってたらどんなもんかなーと」

余命が決まっていたらというか、もう決まってる側からしたらたいして生活は大きく変わってない。ただそれだと味気ないので「好きな人に告白する」「散財する」あたりを選んでおく。当の本人がほとんど出来てないのでもちろん嘘だ。顔が赤くなっていくのがわかる。怪訝な顔をされているか怖いので翔の方を見れず、ずっと俯いたままだ。


「そっかーやっぱそうだよな。どうせなら告白しちゃえだよな。まあ俺だったら元々金無いから散財は無理だけど」

きっとみんなそうだ。勇気がないってのは別の言い方にすると「それから先どうなるかわからないのが怖い」ってことで。先が決まってたら、多少大胆になれるし、自ずと勇気が湧いてくる。それでも告白とか出来ないって人は勇気がどうこう以前になんかオカシイ奴だ。例としては私。


翔がトイレを借りると言って、この話は唐突に終わった。バレては…いなさそう。翔も隠し事が下手なタイプなので、バレていたら向こうの顔に出る。あ、でも私自身が俯いてたからよく見てなかったな…多分大丈夫だと思う。

帰り際、折角だし玄関まで見送ることにした。ホントは翔の家まで見送りたかったが、どうしてもそれを言う勇気がない。玄関までですら「頭でも打ったか」と言われるくらいだから、家まで行ったら何かしら勘付かれる。意外と鋭いところがあるからな…


「んじゃ、またな」

手を振って、振り向くこともなく去っていく。お土産を買う予定だからこれが最後ではない。向こうも最後ではないと思っているから、いつも通りなんだ。



確かにこの日は、最後に会った日ではない。

だけど私は気づかなかった。捻れた嘘に隠れる、正しい嘘を。




北海道の夏は、比較的涼しい。


と思っていた。実際超暑い。やばい。

交通機関と旅館の情報ばかり調べていたせいで、肝心の気候を調べていなかった。幸い快晴だが、それはそれで想像よりずっと暑い。半袖着ていて良かった。冬は寒いのに夏は暑いあたり、試される大地の二つ名は伊達じゃないと思い知らされる。


一人旅行をすると決めた時、両親は「自分から外に出るなんて奇跡か」と喜んでくれた。喜んでいる両親を見て、私は微妙な気持ちになった。こうすれば喜んでくれると知るのが遅すぎる。

空港から事前に調べた電車に乗って、目的地まで揺られる。一面がビルで埋まった車窓は、徐々に畑や林が多くなっていく。電車の乗り換え中は焦って観光出来なかったが、電車内では割とのんびり景色を楽しめた。

飛行機や電車等の交通機関は、結構どうにかなった。私が思っているほど複雑なシステムではなかったし、わからないことは従業員に聞きまくれば大丈夫だった。以前なら「向こうにめんどくさい奴だと思われたくない」とあまり尋ねられなかったが、今は気にしなくていい。今はってか、元々そんなの気にしなくていいんだろうけど。

電車が止まる。ここで降りる乗客は私しかいないみたいだ。その方が、都合がいい。


ここが私の目的地。

最初で最後の一人旅行は、秘境駅。



誰にも縛られない自由を、探しにきた。

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