第一話 ネガティブゾーン
最近、死ぬことばかり考えている。
私は、高校三年生にもなってろくに進路を決めていない。というかどっかに進むのがめんどくさい。勉強はしたくないし、仕事はもっとしたくない。正直ニートがいい。
でも、世間は半ば強制的に進学や就職をさせる。いや、それが正しいのであって、私が間違ってるんだけど…どうにもやる気が起きない。
ニュースやツイッターでは、人が死んだ、テロが起きた等暗い話題や社畜の愚痴で溢れている。良い面より悪い面を探すほうが得意な私には、余計にそう見えてしまう。
未来に希望が持てない。ためしに書いてみた履歴書も詰まる。みんなは勉強ができたり、運動が得意だったり、そうでなくても誇れる特技があったり…私の良い所は何か。そこらの人よりは優しい…気がする。あと、正直者で嘘がつけない。昔から嘘をつくとすぐ顔が赤くなる。
優しい所、正直な所。それって社会で役に立つのか?どちらも損をする光景しか見えてこない。正直者が馬鹿を見る。視野が狭いだけか、それとも…
口癖のように「死にたい」と呟いている人がいたとする。でもその人はいじめられているわけではなく、むしろ少ないながら友達もいる。周りの人は優しいし、進路だって適当ではあるが決まっている。
そういう人は、単にネガティブなんだろう。この先自分が幸せになるビジョンが見えないのだろう。実際、私がそうだから。私の周りに、嫌な奴なんていない。私が正直なことくらいしか取り柄のないダメな人間でも、それを環境のせいにはできない。全部私のせいだ。私が悪い。当たり前だとわかっていながら、変えようともしない。めんどくさいから。
どこに行けばいいかわからず彷徨っている。そのうち、どん底まで落ちていく。
考査前最後の休日、テスト勉強をしたくなくて用もないのに外出した。全てを投げ出して逃げたい。何故逃げたいのか自分だってわからないのに。いっそこのまま適当な道を曲がって…
ふと、違和感を覚えた。
時代に取り残されたような寂れた道。この道はちょっと怖くて、曲がったことがない。だけど、今日はその道を歩いてみる。何か生活に変化が欲しい。良い事でも、悪い事でもいいから。
だが別に目新しいものが落ちているわけでもなく、また見知った大通りに出ただけだった。落胆と同時に、ここを通ればこれから時間短縮できるな、と少しだけ得をした気分になる。
大通りを散歩した後、またその道を通って帰る。どうにも違和感が拭えない。きっと何かある。もう一度目を凝らして、今度は隅々まで見てみよう。
しかしそれは杞憂に終わる。そこにはどう見ても怪しいお婆さんが普通に立っていた。「胡散臭い」を擬人化したらまさにこうなるなという見た目。ただ、どこか私と雰囲気が似ている。お婆さんと言えば怪しい魔女みたいな役にぴったり、は私の持論だ。
お婆さんの前を通り様子を見ようとすると、思ったより若々しい声で話しかけてきた。
「あんたの寿命、引き取ってやるよ」
この人は、何を言っているんだろうか。