さん 最弱に気がある女の子がいるようです
第3章投稿!もうすぐ、春休みが終わる…
翌日、俺はいつものように学校に来て、教室に入る。何も言われない。机を見る。何も書いてない。置いてない。少々目線が気になるものの、何かをしてくる気配は無い。もしかしたら脱いじめかもしれんなキタコレ。
まあ、そうだろうな。いくら油断していたとはいえ、あの山野君を倒したのだから。
しっかしあれだな。色んな小説読んできたけど1日1回しか使えない技って大体は凄く強いの多いけど、俺のってそんな大した技じゃないよな。たった1回攻撃を等倍率で返すだけだぞ?
はぁ、流石魔力が平均の1万分の1だな。雑魚過ぎ。
ま、いっか。平和ならよしだ。そんなことを思いながら今日も普通に授業を聞いて、たまに寝て、過ごす。
平和過ぎる。平和過ぎて落ち着かない。だからと言ってまたいじめられたいとかそういうことではなく、なんかこう…なんというか…何かが欲しいのである。
キンコンカンコンとチャイムが鳴る。その音で我に帰ると、腹が減っていることに気がついた。時計を見ると既に4時間目が終わっており、昼休みだった。
「ラファ、購買行ってみようか」
「うん」
この学校に来て初めての購買だ。噂ではメロンパンが世界一美味いだとかなんだとか。
「…」
「りお…」
「分かってる」
誰かが俺の後を追って来ている。ラファどうか頼む、合わせてくれ!
「ラファ、歩くの疲れたか?抱っこしてやるぞ?」
流石にラファに猛ダッシュさせる訳にはいかん。さあラファ、無茶は承知の上だ!合わせてくれ!
「……うん。ありがとう」
流石、ラファである。
「りおだっしゅ!おなかへった」
ナイスだラファ!
「おうよ!行くぜー」
あそこを曲がれば購買だが、そこで曲がると購買に来ただけなんだけどとか言われるだけ。なら、生徒が普段お世話にならない教室がある廊下を行けばいい。そして曲がったら待ち構える!
俺はこの先立ち入り禁止がある廊下に向かって曲がる。そして息を殺し、気配を殺した。
少しずつ大きくなる足音は、見失うまいと走っていた。俺はタイミングを測って飛び出る。
「誰だ!!!」
「きゃわっ!」
えっと、なんだか可愛い悲鳴が聞こえたぞ?俺はその可愛らしい声の主を見るために下を見た。桃色の髪がふわりと浮いておりすっとした輪郭、垂れ目で優しい印象を受けた。胸は程よく育っておりって、どこ見てるんだ俺は!?俺は更に視線を落とす。すると本来、見ようとしないと見ることのできない不可視の領域が見えた。
つまり、パンツが見えちゃったのである。俺は慌ててそっぽ向いた。
横目で見ると慌てて隠す姿が映った。
「あの、なんで後を追って来たんですか?」
「え!?いやその、その先に用が…」
と言って、一瞬右に視線を外す。嘘をついたな。俺は尾行した証拠とも言える一言を言い放った。
「立ち入り禁止場所にですか?」
「あ…………ご、ごごごごめんなさい!許して下さい何でもします!何でもしますから!」
「いやいやいやいや、別にそこまでー」
「じゃあぬいで」
「ちょっとラファ!?なに言ってるの!?」
「分かりました脱ぎます」
「いやちょっとなに言ってんの!?ダメ!ゼッタイ!脱いじゃダメ!ちょっとなにセーターまで脱ぎ出してんの!?泣きながら脱がなくていいから!本当にストップ!ちょっと!何でもするっていったでしょ今すぐ脱ぐのをやめてぇええぇぇえぇぇえぇええぇえええええ!!!!」
俺は慌てて脱ごうとするのを止めた。その際、女口調になっていた気がする。
***
もう、やだ。ギガ疲れた。たったの数秒で。
「それで、君は、ゼェ、何しに、ゼェ、来たのん?」
俺は脱ぎ捨てたものを全部着直した彼女に質問する。途切れ途切れだけど。
「あの、昨日の桐生さんの熱弁に心打たれまして、お近づきになれたらなぁって思ってて、でもなんて声かけたらいいか分かんなくて、後を追っちゃう感じになっちゃいました…」
あーーーーなるほど。分からなくもない。
「つまりあなたはりおがきになってる?ほれた?」
あはは、何言ってんだか。そんな訳なっ………あれ?なんか図星っぽい?
まあいいか。
「俺なんかで良ければいつでも声かけてよ。んで、お名前は?」
「私、涼音です。天羽涼音」
「おけ、じゃあ涼音、一緒に購買行くか?」
「行きます!」
「じゃあ行こうか。俺のことは理央でいいよ」
「じゃあ、理央君で」
それからしばらく3人で話していた。
***
放課後。俺は理事長からカウンセリング室に来てくれとメールを受け取った。
「り、理央君」
「ん?ああ涼音。どうした?」
「一緒に帰りませんか?」
「あー、今日用事があってさ、カウンセリング室に行かないとなんだ」
「………ついて行っても?」
「………多分いいと思う」
確認するために理事長にこのことをメールすると、可愛いの?と返信があり、俺が可愛い方だと思いますと返信すると、連れて来いと返信が来た。
「おっけーみたいだから行こうか」
「うん!」
「りおー、だっこ」
「あーはいはい。よっこいしょ」
俺はラファを抱きかかえ、3人で会話しながら1階のカウンセリング室に向かう。
「ふう、やっと着いたか」
「ここなの?」
「そ。ここがカウンセリング室」
俺は2回ノックする。
「桐生です」
「入れー」
「失礼します」
「し、失礼します!」
「ん?なんだ桐生、連れがいるのか」
「ええまあそうですね」
「は、初めみゃ…」
噛んだ。それが恥ずかしかったようで、両手で顔を隠してしまった。
「あははははっ、そこまで緊張する必要はないよ。それよりもなかなかべっぴんさんではないか」
「うむ、僕もそう思うよ!」
あ、さっきから理事長の姿が見えないと思ったら美里さんに踏まれてた。何をしちゃったんだこの人。
「信じられんかもだが、この人が理事長だよ」
「こ、この人が………」
信じられない。と、言いたげだった。理事長は滅多に生徒の前に現れないため、顔を知るものは少ないのである。
「それより理事長」
「うん。分かっているよ。その子に聞かれてもいいのかい?」
「問題無いと思います」
「分かった。じゃあ昨日【魔眼】ついて調べて分かったこととか話すよ。その前に昨日聞きそびれたんだけどさ、模様とかあったかい?それが分かると数十種類の選択肢が数種類まで減るんだが」
「えーっと…」
俺は思い出そうとする。あの時は左目が見えることに驚いて注意深く見ていなかったのである。
「めはねこのめみたいになってた。たてにながいひとみとかが」
ラファが、そう言った。
「お、覚えてるのかラファ。他には?」
「んーっと、もえてるみたいだった」
「燃えるようにゆらゆらと揺れているように見えた、とかかい?」
「うんうん、そういうこと」
「うーん、すまないね桐生君。見た目がそれに該当するものが無いようだ」
「そうですか…まあ、いいですよ。少し残念ですけど、諦めます」
「そっか。新しい情報が入ったらその都度知らせるよ」
「重ね重ねありがとうございます」
しっかし、びっくりした。あの《世界の頭脳》ですら知らないとは。
「んで桐生。この後どうするんだ?なんならお茶飲んでくか?」
「いえ、今日はもう帰ろうかと」
「そうか、気をつけて帰れよ?」
「了解です。では」
「桐生!私は嬉しいぞ!彼女出来たんだな」
その一言で、涼音が盛大にむせた。
「ちょっ、涼音!?大丈夫か!?み、美里さん誤解です。別に付き合っている訳じゃ…」
「別に隠さなくていいではないか。ふむ、息子が彼女を連れてくる感覚を学んだよ」
「何学んでるんだ!ていうか本当に付き合ってないですからーーーーー!」
俺のその叫びは虚しく響き、消えていった。
それから数分後、ようやく帰路を辿る。
「ごめんな、色々と」
「うんん、別にいいよー」
と言って、涼音は少し残念そうな顔をしながらラファと手を繋ぎ、俺の1歩前を歩く。
俺は2人の背中を見ながら、考える。ラファが涼音は俺に気があると言って涼音はそれを否定していない。俺も鈍感主人公ではないつもりなので、気がある訳が無いとは思わず、気がある可能性があると思っておこうなんて、ね。そもそも主人公じゃないか。
さて、もし気があるとして、俺はどう答えるべきなのだろうか。恋愛経験ねえし、真摯に答えればいいだろうってことにしようか。
「ねえ理央君」
「ん?なに?」
「今さ、私の家に一直線に帰ってるけど、大丈夫なの?」
「んー、うん。今の所通学路だよ」
「そっか」
今は、このままでいっか。今はこの平和に浸っておこう。いつ崩れるか、分からないのだから。
「…ん?どうした?涼音。止まったりして」
「家に、着いたんだけど…」
「…通学路だ」
「まじすか」
「まじです。そんじゃ明日一緒に学校行こうぜ」
「いいの?」
「ダメな理由がないからな」
そう言うと、涼音はニッコリと笑った。滅茶苦茶嬉しそうだ。
「じゃーなー」
「うん!また明日!」
「…よし、帰るぞー」
「きょうのばんごはんは?」
「んーと、オムライスかな」
「……はやくかえろ」
「了解」
この平和、ずっと続けばいいななんて、フラグを立てて見たり、ね。
ニューヒロインちゃん登場!なんだかほのぼのとしてますね〜笑。
こんなにほのぼのとしたやつを考えたっけ?
まあいいでしょう!
次回、「最弱と天使様の共闘お披露目です」の予定です!