に 最弱なりの防衛戦と最弱の想い
あまり日にちが空くことなく投稿できました。
感想待ってます(笑)
「よく逃げなかったな」
「逃げれる訳ないだろ。ラファとの、約束だ」
「へぇ、じゃあ精々足掻けよ」
「では〜試合時間45分になっちゃったけど始めるね〜。よ〜い、スタ〜ト!」
言い終わった瞬間、山野君は距離を詰め、大剣を振るう。俺はサイドステップで回避し、走って距離を取る。
「やっぱりまともに戦って来ないな」
「当たり前でしょ。まともに戦ったら死亡確定だよ」
「…いつまで、逃げれるかな。楽しくなってきたぜ」
楽しくねえよ。本当にマジで。
まあいいとにかく回避!そして距離を取る。20分くらいそれで稼ぎたいな。そう思っていた。だが、忘れてしまっていた。俺が雑魚だということを。時間稼ぎのことに夢中になってた。
「ちっ、ちょこまかと!」
「ぐぅ…危なっ!」
数十回ほど回避してきただろうか。体力が無なくなってきた。まだ10分しか経っていないというのに。
最初こそ完璧に回避出来ていたものの、どんどんギリギリになってきた。
そして、遂にまともに一撃を食らった。
「かはっ…ゲホッゴホッ!」
「くくく、くははははははははははっ!やーっと捉えたぜ。おらぁ!」
腹を蹴られる。もちろん痛い。
「おらどうした?さっさと起きろよ!」
顔を蹴られた。待ってめっちゃ痛い。
それからというもの、蹴る踏む立たせて殴ると、ボコボコにされる。
「ゴホッ…あ…………がぁ………」
立とうとする。蹴られて転がる。止まったら丁度良く時計が見えた。あと15分で授業が終わる。クソ、遊んでやがるな。終わらせられるならさっさとして欲しかったな。全く。
改めて死にたくねえな。ラファと、もっと一緒にいたいな。
「おい、立てよ」
そう言った山野君はかなり遠い位置にいる。今度こそ立たせる気なのだろう。
「ぐ…ぁ……………ぁあ、はぁ、はぁ」
「よし、立ったな。じゃあ今からお前が今立ってる位置に魔法打ち込むから。頑張れよ」
動けないこと、知っててそう言ってるんだよな。分かってる。
死亡確定かな。ほんっとに動けん。
「ッ………!」
諦めた瞬間目が、合った。ラファと。その目は、まだ希望を持っている目だった。
なんで、諦めちゃってたのかね。まだ、死んでねぇじゃん。
「なあ桐生」
山野君に呼ばれる。喋ると色々痛いから代わりに睨んだ。
「…なんでそこまでそいつを守ろうとする?」
なんで、か。そうだな、ただ単に、頼られたのが嬉しくてつい言っちゃった言葉だったかもな。守るって。でも、それだけじゃないのは確かだ。
「俺は、ラファの過去を見た。…スゲー酷い過去、だった。もう俺なんて比べるのが申し訳ないくらいにな。…小さい頃母親が殺されて、左目見えなくなって、剣術なんてそこまで教えて貰えず、挙げ句の果てに捨てられて、貧しい生活して、学校でいじめ受けて、あー、もう死のうかなって思った自分を殴りたい。この程度で、なに死のうとしてんだよってな」
涙が出てきた。想いが溢れてしまって。きっとクラスの奴らドン引きだろうな。
「ラファは…ラファは俺よりもっと、ずっと重いもんを、あんなに小さな背中に、たった…たった1人で背負って来たんだ!人間を憎んでるはずなのに、俺に笑顔を向けて来たんだ!だから!守りたいって思った!」
吐血する。口の中がもう気持ち悪い。
「ゲホッ…だから守ってみせる!命を、賭けてでも!さあ来いよ!この覚悟をぶち壊せる自信があんなら来いよ!そして殺してみろ!俺は、勝ってやる!お前に!」
「…へえ、じゃあ死ね!【地崩烈斬】!」
【地崩烈斬】斬撃属性を持つ衝撃波を地面を通して相手に打ち込む魔法っぽくない魔法。
どうしたら。そう考えていた刹那、体が全体的熱い。左目はもっと熱く燃えているような感覚。なんだこれ。どう動けば良いかが分かる。
俺は前に剣を軽く突き立てる。そして衝撃波が触れた瞬間にその衝撃波を掬う様に剣に乗せ、引き、俺の少ない魔力ほぼ全て使い留める。そして一回転し、地面に剣を叩きつけた。俺の魔法と言って良いか分からない魔法。【カウンター】。
「なにっ!?」
山野君は慌ててそれを防ぐ。その隙に残りの力を振り絞って、走る。
「うおおおおぉおぉぉおおぉおおぉおおおお!」
一閃。腹を深く抉る一撃。
「うそ、だ…ろ…」
「勝者は〜、桐生君だね〜」
誰も、何も、言わない。そんな中、100%腹黒担任の結城紗南が山野君に回復魔法をかけながら場に合わない、いつもの間延びした声を響かせた。
「桐生君、交換権あるよ〜?」
「要りません。ラファは俺の使い魔です」
「そう、じゃあ次誰か交換権欲しい人いる?別に要らないなら今日は帰ってよしですけど〜?」
「なあ、ゲーセン行こうぜ」
「そっちの方がいいな」
「うち、アイス食べに行きたいんやけど」
「…ほな、行こか」
みんな、微妙な顔をして帰って行く。そこで暖かい光に包まれる。ラファの回復だ。
「ありがとう、ラファ」
「…」
「あれ?ラファ?」
「ごめんなさい」
泣いていた。
「ふぇっ!?ラファ、なんで泣いてるの!?」
「だって、わたしのせいでりおが…りおがぁ……………」
自分のせいか、それは違うよ、ラファ。俺は優しく抱きしめた。
「ラファはなーんにも悪くないよ。俺が勝手に、ラファと一緒にいたいがために、こうしたんだからさ」
「…いい感じだから先生帰るね〜」
黙って帰れよ。まあいい。
「ラファ、笑って。その方が俺、癒されるなー」
「…うん…………わかった!」
うんうん。俺は、その笑顔が見たかった。
「…!りおっ!」
「うおっ!どうした?」
「めのいろがちがうよ!」
「目?目のい、ろ…」
俺は右目を隠した。ラファが見える。なんで?左目は見えないはず。
「ちょ、か、鏡あるか?」
「りおのきおくのなかにあった!じぶんみるどうぐ。……これ?」
「そうそう!でかした!」
鏡を覗く。驚いた。オッドアイになってる。見えないはずの左目が、赤色…に少し黒を混ぜた様な赤になっていた。が、どんどん赤が消えて行き、元のエメラルドグリーンの瞳に戻った。それと同時に見えなくなる。
「…ラファ、少し寄っていいかい?」
ラファはコクリと頷いた。いつの間にか完全に回復していたので、ラファを抱っこし、カウンセリング室へ向かう。
何やら会話が聞こえる。俺はコンコンッと2回ノックする。
「誰だ?」
「桐生です」
「おお、桐生君かい!」
「お前は黙れ!いいぞ、入って」
あはは、いつものメンバーか。
「失礼します。美里さん、理事長」
「やあ桐生君!聞いてよ!美里が今日も酷いんだ」
「お前が胸を突然揉んでくるからだろアホ!」
紹介しよう。俺が理事長と呼んだこの男、神楽友濂。見た目が本当にチャラい。金髪だしピアスつけてるしホストみたいなスーツだし。でも、俺がここに入学出来たのは、理事長がなぜか推薦を取ってくれたからである。それでなんとかギリ合格した訳だ。感謝してもしきれない人。
そして俺が美里さんと呼んだ女性は原中美里。黒髪ロングでいかにも清楚といった感じだが、言葉は少々荒い。白衣を纏った女性だ。いつも真剣に相談を聞いてくれるいい先生だ。
2人の関係は多分、理事長が美里さんに片思いしてて、その気持ちをはっきり言ってて、美里さんは迷惑に思ってる?的な?感じだ。
ってえ?揉んだ?その大きなメロンを?
「ん?なんだ桐生揉みたいのか?」
「ぶふぉっ!ごほっげほっ!んな!いいです結構です!」
「そうだよ、りおにはわたしがいるもん」
と、なぜか対抗してきたラファ。その一言でこの場を沈黙で包んだ。
「桐生君、まさか使い魔に手を出したのかい?」
「いや!違います!手なんて出してないです!ラファも誤解されること言っちゃダメ!」
「桐生最低」
「美里さんも!?信じてくださいよ!俺にそんなことが出来る甲斐性がある訳ないじゃないですか!……うぅ」
「あーあ、自分で自分を甲斐性無しと言ってへこんだ」
「自業自得だろ」
言葉が刺さる。めっちゃ痛い。
「りお、わすれてる」
「え?あ!そうだ!聞いて欲しいことがあるんです!美里さんだけでなく、理事長にも」
「欲求不満?」
「違います」
「そうならそうと言えよ?胸くらいなら触らせてやる」
「だから違いますって!あのですね!今から真面目な話するんですからね!」
「すまんすまん、なんだ?話って」
「はい、えっとですね、数分間だけなんですけど、左目が見える様になったんです」
と、俺が言い終わった瞬間、美里さんが飛びかかってきた。予想外すぎて対応出来ずに押し倒された。
「ちょ!み、美里さん!?」
「本当か?見せてみろ、こら、目を背けるな私の目を見ないか」
「いや、その…む、ねが…」
「美里、僕には美里が桐生君を襲っている様にしか見えないぞ」
「む、すまん…」
言うの忘れてた。美里さんはへこんだ時ものすっごく可愛いです。ギャップがやばい。
「それで桐生君、その時目立った変化はあったかい?」
「あ、はい。赤色になったんです。少し黒を混ぜた様な赤色に」
「…………………………ふむ、それは【魔眼】かもしれないね」
「【魔眼】?」
「ああ、でも【魔眼】は色んな種類があるからな、赤色の【魔眼】なんて、1番数が多いし、今日はこれで失礼するよ、【魔眼】について、調べておくよ」
「いいんですか!?」
驚いた。理事長直々に調べて下さるとは。これは素直に嬉しい。
「ああ、いいとも。あ、でも今度、ランチに行かないかい?僕の奢りだよ」
「もちろん!理事長のお誘いとあらば!」
「嬉しいよ、じゃあ」
「ふん、静かになったな」
それもそうだ。俺も、美里さんも多くしゃべる方じゃない。大体は理事長がしゃべって、俺たちが何か言うだからな。
「今日は帰りたまえ。押し倒してすまなかったな」
「いえいえ、少し違う一面が見れたので」
「う、五月蝿いな!出てけ!」
放り出された。ま、いっか。
「帰ろっか」
「………うん」
今の間はなんだろう。あとで、聞いてみよう。
***
バタンとドアが閉まる。
「…………くく、くくく、くはははははははははははっ!いやぁ、なんとか耐えられたぁ〜。桐生君の前で笑い出す訳にもいかなかったから大変だったぁ」
もう今日以上に嬉しいことは過去に無かった。
「桐生君だと思って推薦までして取って良かったよ。桐生君自身はギリ合格だと思っているだろうけど色々やって100%合格にさせたんだよね〜。これで違いましたとか、笑えないけど」
けど、当たった。ビンゴだ。僕の目に狂いは無い。
「見つけた。ようやく見つけたよ。《赤き殺戮王》を」
不気味な笑い声は誰の耳にも届くことなく、響き続けた。
これラスボスと戦ってたっけって思うほど理央が感情を爆発させてましたね。
まだまだ続きますよ!
次回、『最弱に気のある女の子がいるようです』
お楽しみに!頑張ります!