じゅうご 最弱、デートに行く(初詣も行くよ!)
試験のことで頭がいっぱいだ…なんとか書き上げましたが…
気を取り直してと、15章、デートです。
午後1時。今日の中で1番気温が高いのだが、それでも気温は12度程。寒い。
俺はピーコートの前のボタンを閉めた。待ち合わせの時間まで、あと15分以上ある。早くきすぎただろうか。遅れるよりかはマシなことはわかる。しかし、この何もしていない時間が、否応無しに鼓動を速くする。
「なあラファ…って、そう言えば美里さんに預けたんだった…」
ほんの数十分前の出来事も既に頭の中から飛んでしまっている始末だ。こんな調子で俺は大丈夫なのか。
そう考えていると、突然視界が塞がれた。
「だーれだ」
「わっ!す、涼音!?」
「正解。驚きすぎだよ」
「そ、そうだね…」
そう言いながら俺は振り返る。目に映ったのは紺の微光沢のあるジャケットを着ており、インナーにグレーのタートルネックのニット。ボトムスには紺のフレアスカートでバッグが何故かモコモコしていて全体的にかわいらしさが滲み出ていた。
「まあ、夏祭りの時はミスしちゃったから成功してよかったよ」
「あの時は下駄履いてたし、仕方なかったと思うよ。…行こうか」
俺は手を差し伸べる。すると、涼音はそっと握ってきた。そして。
「うん」
と頷いて微笑んだ。
冷たい風が吹き抜ける街並みを2人で歩く。まずちょっとお洒落なお店でランチを楽しむ。少し背伸びをしてしまったかもしれないと思ったが、なんとか乗り越えた。
次に、ショッピングモールへと足を運ぶ。そこでふと、涼音が呟く。
「そいえば、水着、このショッピングモールで買ったね」
「そうだね。また見たいよ、涼音の水着姿」
「来年の夏になればまた海行こうよ」
「うん、そうしよっか」
「あ、あそこ見に行きたい」
涼音は外国ブランドの洋服屋を指差し、俺を引っ張る。俺は涼音が引っ張るがままについて行く。
多種多様な冬物が取り揃えてあり、服について多少の知識は入れてあるものの、目を輝かせ服のあれこれを語る涼音について行けるほどではなかった。まあ涼音が楽しそうだから、問題はないだろう。
「ね、これ似合うかな」
ジャケットを脱いで俺に渡し、ベージュ色のコクーンコートをハンガーから外して羽織る。なんだかエレガントな雰囲気が追加されたように感じる。俺はいつもと少し違う涼音を見て、顔が赤くなった気がし、それを誤魔化すように軽くそっぽ向く。
「うん。似合ってるよ」
「ふふん、でしょ」
誇らしげに胸を張り、ドヤ顔。それがなければ大人びて見えるのに。
まあ可愛い涼音も好きなので言わないが。
それからあれやこれやと色々な店を片っ端から物色。特に気に入っていたものを買ってあげた。
「さて、次の目的地に行くのにはちょっと早いけど、どうする?」
「んー、じゃあゲーセン行きたい」
「…ゲーセン?ちょっと待ってね。近場のゲーセン探してみるね」
「うん」
予想外の場所指定で一瞬言葉が詰まるが、すぐさまマップを開きゲームセンターで検索。すると運がいいことに、5分足らずで着く。
「こっちだよ。行こう」
「うん!」
「ゲーセンで何するの?」
「プリクラ撮るの」
「何それ」
「え、マジで?」
「う、うん」
プリン・クライシスかな?違うよね。プリンで経済的危機とか怖すぎる。
「まあ、百聞は一見にしかずって言うし、とりあえず行こう!」
「それもそうだね」
歩いて3分で地下街の様な空間に入る。
微かにタバコの匂いが鼻につく。まあこの程度ならあまり気にしないようにすることも可能だろう。
「あれだよ、理央君」
「あ、あれ?」
四角いフォルムに数箇所垂れ幕の様なものがある。そして壁にはモデルの顔がデカデカとプリントされていた。
「ほら、入るよ」
そう言って涼音は俺の手を引き、垂れ幕の1つに突っ込んで行く。中には大きなレンズがありその下の中くらいのタッチパネルモニター。涼音はそのモニターで何かを入力していた。何度か機械音声が流れたものの、正直言って聞いてなかった。振り返れば緑一色の背景がある。何ここ。
「ほら理央君、カメラ見て!ピースピース」
「え?」
気づけば3、2とカウントダウンが始まっていた。俺はすぐさまピースする。
かしゃり。
俺はフラッシュにびっくりして目を閉じる。
「あ、目瞑っちゃった」
「瞬きしちゃった?」
「うん、フラッシュが眩しくて」
「んー、フラッシュの後なら大丈夫じゃないかな。あ、次撮るよピースピース」
「え?あ、うん」
言われた通りにピースを作る。シャッターが切られた直後に涼音を見ると慣れた感じでポーズを作っていた。
俺はと言うと無知すぎておろおろとしているだけだ。誠に情けないなあと思っていると、今度は涼音が腕に抱きついてきた。どうやらこの体勢で撮るらしい。
「ね、理央君」
「んー?なに?」
俺はレンズを見たままそう返事し、次の言葉を待つ。するとシャッターが切られる直前。
「次は、キスしよ」
カシャリ。と、鳴る。同時に思考の混乱。そして次行くよーと急かす機械音声。それらによる脳の機能の低下。
キスだ。なにもおかしくない。え?この状況どうやってキスすんの?え?まあいっかキスをすれば。
俺は涼音と向かい合い、唇を重ねた。シャッターが切られる音がしても、重ね続けていた。不意に涼音が俺の胸板をポンポンと叩く。それのおかげで冷静さが戻ってきた。唇を離すとお互い同時にぷはっと、空気を吸った。
「……」
「…撮り終わったみたいだね」
「…う、うん」
「えっと、この後は?」
「えっと、お絵かき、かな」
「じゃ、行こうか?」
「う、うん。こっちだよ」
機械の裏手にある垂れ幕の中に入る。すると大きなタッチパネルモニターがあった。そこには先程撮った写真が出てくる。
「あ、改めて見ると恥ずかしいね」
「そ、そうだな」
「理央君は1枚目のやつに好きなようにお絵かきしていいよ」
「あ、うん。…キラキラ付けてけばいいの?」
「そそ。でもキラキラだけじゃダメだよ?」
「了解。任せてくれ」
「うん」
少しの間沈黙が訪れた。やはり恥ずかしかったのだろうか。掘り返すのも、悪くないかもしれない。
「なんでキスしようと思ったの?」
ガンッ!
「…」
涼音はどうやら動揺して膝をぶつけたらしく、しゃがんで膝をさすっていた。
「ご、ごめん、聞いた俺が悪かった」
「…したかったんだもん」
ぼそりと。でも確かに、そう言った。
「そ、そっか。嬉しいよ」
「うん」
今度から軽いいたずら気分で話を掘り返すのは控えよう。最終的には俺の方が照れてしまう。
「はい、理央君の分」
涼音からシールをもらう。先程加工したものだった。
「じゃあ、次はどこ行くの?理央君」
「ディナーだね。オムライスがすごく美味しい所」
「おお、私オムライス大好き!」
「それは良かった。じゃ、行こう」
今朝と同じように、手を差し出す。今度はすぐにぎゅっと握られる。そして予約しておいた店にゆっくりと向かった。
店に入り席に着く。俺はメニューを開いて涼音に渡した。
「理央君は決まってるの?」
「デミグラスオムライスだよ。ここにきたらそれしか頼んでないまである」
「んー、じゃあ私もそれ!」
「いいの?」
「うん。初めてきたし、定番が安定だよ」
「それもそうだね。量は?」
「特大!」
と笑顔で即答される。俺は思わず笑ってしまう。
「え、ダメだった?」
「いいや、いい笑顔だったなぁって、思ってさ」
そう言いながらベルを押す。
「ご注文をどうぞ」
「デミグラスオムライスの特大と大を1つずつ」
「かしこまりました」
店員さんは注文内容を確認し、厨房へ向かって行った。
たわいのない話をしているとオムライスが運ばれてくる。ふわとろな卵に包まれたチキンライス。そしてこの店のオーナーが丹精込めて作ったデミグラスソース。いつ見てもすごい。何度やっても卵はふわとろにならないし、ソースは凝ったもの作れないしで、自分じゃ中々満足するものを作れないからな。
チラと涼音の方を見て、驚愕する。なんか、そう。デカかった。涼音の顔の大きさを遥かに上回る大きさ。
「た、食べきれるの…?」
「うん、このくらいなら余裕かな」
「そ、そっか」
まあいっぱい食べることはいいことだ。涼音は様々な銃器を扱うために鍛えているし、食べても全てエネルギーに変換されてしまうのかもしれない。
同時にいただきますをして頬張る。
「んー!おいし!とろとろー!」
「うん。いつ食べても美味しいや。お肉も柔らかいし」
「そういえば理央君料理できたよね」
「これ程上手くはないけどね。いきなりどうしたの?」
「できるようになりたいなって思って。そしたら一緒にできるじゃん?」
「じゃあ練習しようよ。まずはお手伝いから始めてさ」
「付き合ってくれる?」
心配そうに顔を覗き込んでくる。それに俺は笑顔で答えた。
「もちろん。でも、普段はお母さんを手伝ってあげてね」
「あっ、うん。もちろんだよ!」
程なくして、食べ終わり、少し休んでから店を出る。
帰り道、俺は長く一緒にいたいと言って、遠回りする。目的は1つ。綺麗なイルミネーションを見るためだ。大通りにドンと構える噴水が見えてきた。時計を見れば、ドンピシャだ。
噴水は強弱を上手く使い分け、躍動感を演出する。そしてその強弱に合わせて七色のライトが当てられる。幻想的、とはこのことだろうか。
「涼音」
「ん?」
「これ、プレゼント」
俺は箱を取り出し、涼音に渡す。
「開けてもいい?」
「うん。気に入ってくれればいいけど」
俺が選んだのは、ハートが2重に重なっているネックレス。なんの意外性もない、シンプルなハート。
「可愛い」
「よかった」
「ね、付けて付けて」
「うん」
俺は箱から丁寧にネックレスを取り出し、涼音に付けた。そこまで高くないのに、とても輝いているように見える。
「ありがとね、理央君」
「どういたしまして。じゃ、帰ろっか」
もう空は暗い。あんまり遅くなると、涼音のお母さんが心配するだろう。
「うん!」
俺たちは手を繋いで、夜の街を歩いた。
***
SNSにて。
Suzune
今日理央君とデート!お買い物して、チュープリ撮って、ご飯食べて、プレゼントもらって、満足すぎる!
愛花
へえ、あいつやるじゃん。
yuri♪
チュープリ見せろー!
Saki
見せろー!
Suzune
チュープリだけはや!他のなら見せたげるよ。
愛花
しゃーなしそれで見逃す。
Suzune
じゃあ、ここに貼るね。
送られるプリクラの写真。
愛花、yuri♪、Saki
桐生の顔ウケる。
***
明けましておめでとうございます。目覚めて1番にそのワードが頭をよぎる。そう新年。1月に突入したのだ。
そして今日は初詣に行く。俺と涼音とラファの3人で。
まず朝ごはんに雑煮を食べて、大掃除を開始した。
まあ広い家ではないし、毎日ある程度掃除を継続して行っていたので大して時間はかからないだろう。
寝ている間に落ちた埃を掃除機で吸い、小物を整理。モップをかけて床は終了。
そして窓、トイレ、風呂場、その他諸々と次々に掃除して行く。
1時間くらいで大掃除を終える。時計を見れば、約束の5分前には着くことができるであろう時間になっていた。
「よし、行こうか、ラファ」
「ん」
ちゃちゃっと着替え、ラファを抱き上げて涼音の家に向かう。
「おはよ、そんで明けましておめでとう、涼音」
「あけおめすずね」
「うん、おはよーあけおめ!」
「よし、じゃあ行こうか」
今から行く場所は、近場にある中規模の神社。それなりに人がいるだろうが、混んでいるイメージはない。
着いて早々に参拝列に並ぶ。ラファと涼音は俺の前に立って2人で話している。ラファは涼音が近くにいると涼音にべったりになってしまうようだ。
そして10分ほどで順番が回ってきた。さて、お願い事はどうするか。とりあえず賽銭を入れ鐘を鳴らし二拝。手を合わせ少しずらし二拍手してずらした手を戻す。どうか平和でありますようにと願って一拝。そして横に履ける。
「さてと、何か食べて帰る?」
「「わたあめ」」
見事に涼音とラファがハモった。俺はそれが少し面白くて笑ってしまう。2人はちょっと不満そうな顔をしていた。
「ごめんごめん。行こうか。逸れないでね」
「うん!」
涼音が元気に返事し、腕に抱きついてくる。それを見たラファがぷくぅっと頬を膨らませた。なので手を握ってみた。
「ん」
満更でもないような様子で苦しゅうないと言わんばかりの表情をしていた。ほんと愛らしいなあ。そんなことを思いながらわたあめが売ってる屋台に向かう。
「あと2ヶ月で1年生は終わるね」
「そっか、4月には2年か」
「2年になったら2体目の召喚だね」
「1体目より確定でランクが低いんだったよね」
「どんな使い魔でも基本的に6割くらいは容量占めるからね。小動物みたいな子がいいなあ」
「俺は前衛が欲しいよ。俺だけじゃ絶対きついと思うし」
そうこう話していると、わたあめが売っている屋台に着く。俺は2つ注文するとすぐに袋に入ったわたあめを受け取った。俺は涼音とラファにそれぞれ渡す。
「でも、ラファが容量8割占めてるからね。期待値は高くないかな」
「ラファちゃん容量大きいね。アルテミスは6割だよ」
「死んでなければ完治可能だからね。援護も強いし」
「理央君と相性いいもんね」
ん?涼音さん?ちょっと妬いている様に見えるのは気のせいですかね?そう思いながら涼音の顔を覗き見ようとした時、涼音が前方に指差した。
「おみくじだ」
「引きに行くか?」
「うん、引く」
「じゃあ行こう」
おみくじの置いてある台に向かい、100円を3枚巫女さんに渡す。そして大きな筒を受け取る。とりあえず俺が先陣を切る。出てきた棒の先に数字が書いてあり、その数字を巫女さんに言えば、その数字の引き出しからおみくじを1枚取って渡してくれる。涼音とラファも同じ流れでおみくじを手にし、一斉開封。
「吉か。微妙だな」
「末吉。微妙だね」
「しょうきち。びみょう」
3人はお互いに顔を見合わせ、思わず笑みがこぼれる。
「まあ悪くはないっていう点に関してはいいのかな。これは」
「そうだねぇ」
俺はふと恋愛の項目に目が行く。『気をつけなさい』。一体何にどう気をつけろというのか。まあいい。
「結びに行こうか」
「うん!」
結び所に向かい、3人分同じ場所に結ぶ。少し、高めの場所。
「それじゃあ、帰ろうか」
俺は涼音に手を差し出す。
「うん」
涼音はそう返事し、しっかりと俺の手を握った。
バレンタイン入れるつもりだったけど、理央達が2年さになるまで結構あったので区切られていただきました!次はワンチャン涼音視点あるかな…




