じゅういち 最弱の文化祭事件
最弱の文化祭から最弱の文化祭事件にしました。海風奏です。
文化祭当日迎えます。
楽しんで頂ければ幸いです!
準備だとか色々あったけど、何かとスムーズに進み、文化祭当日を迎えていた。
1日目、クラスのカフェは中々な盛況具合だった。俺と涼音のシフトは共に午前9時から11時。まあまあ忙しかったから、あまり話す時間もなく、ただただパンケーキを焼いた。
気づけば11時。
「11時までの人終わっていいよー」
俺は一息つき、エプロンを外す。そして飲食スペースをチラと見る。
「あ、理央君!中庭に先に行ってて!ラファちゃんも私が連れてくから!」
「了解。待ってるね」
「うん!」
さて、ジュースでも買って待ってようか。文化祭ということもあり、気が緩んでいた。
故に背後から近づく2人の気配にすら、気づくことができなかった。
突如としてハンカチで口を塞がれる。よくわからず普通に呼吸した俺に眠気が襲う。
ああ、テレビドラマでよくあるやつだ…
その思考を最後に、俺は意識を手放すこととなった。
***
「理央君待ってるだろうから、急ごうか」
私はラファちゃんにそう言う。ラファちゃんは眠そうにコクリと頷いた。
ラファちゃんの着替えに少し手間取ってしまったがために、今理央君を中庭で待たせている。急がなければ。
そうやって中庭に急いでいると、急にラファちゃんが立ち止まった。
「ラファちゃん?」
「りおのはんかちだ」
「え?あ、ほんとだ落としたのかな。持って行ってあげよっか」
「ん」
そこでふと違和感を覚える。ハンカチが落ちていたのは中庭を過ぎた廊下に落ちていたから。向こうに自販機はないし、中庭を通り過ぎる理由が無いのだが。
「じけんのかおりがする」
「そ、そんなまさか」
中庭を確認する。だが、何処にも理央君はいなかった。
「じけんのかおりがする」
「……やばいんじゃない?」
「やばい」
「で、電話かけてみるね!」
私は理央君の電話にかける。が、いつまで経っても電話に出ず、私は電話を切った。
「ラファちゃん、探そっか」
「うん。そのまえに」
***
「なるほど、理央君が…」
と、本学校の理事長である、神楽友濂さんが顎に手を当て真剣な眼差しでつぶやく。原中美里さんも隣にいた。
「もうバレたなんてことはないはずだし…」
「…理事長?」
「ああいや、こちらの話さ。それで、心当たりは?」
「ここくらいです」
「そうか…なら、手分けして探すしかないね。一応警察官の友人に電話を入れておくけど。それと、はいこれ」
理事長がラファちゃんに何かの鍵を渡した。
「何の鍵なんですか?」
「マスターキーと古いタイプの鍵のマスターキー」
「ダメじゃないですか!?それ貸しちゃったら!」
「いーのいーの。ラファエルちゃんは理央君と《契約の糸》があるんだし、1番に見つけると思うし」
「《契約の糸》?」
「気にするな。マスターと使い魔の繋がりのことをかっこよく言ってるだけなんだ」
「美里は僕が中二病かなんかだと思ってるのかい?」
「当たり前な」
美里さんがそう答えると、背景にガーンの文字をつけたいくらいの表情を浮かべ、膝をついた。
「卒業できたと思ったのに」
「ロリコンと一緒で治らねーよ」
「あ、あはは、とりあえず私たち理央君探しますね」
何というか、ちょっと退室したかった。
「ああ、そうだね。じゃあ手分けして探そう。見つけたら連絡入れて。美里、携帯番号教えてあげて。僕は友人に電話する」
「ああ」
「ありがとうございます」
***
「それじゃラファちゃん、聞き込みからしてみよっか。誰か目撃してる人がいるかも」
「うん」
と言っても、理央君の顔を知ってる人に聞かないと見たとしても印象に残ってないかもしれないな。そう思いながら歩いていると見知った顔を見つけた。中学からの友達である、箕形愛花だ。
「あ、愛花ー!」
「んー、涼音じゃんどしたの。てっか彼氏はー?」
「だから理央君は彼氏じゃなくて、てか今はそうじゃなくて、理央君どこかで見なかった?」
「彼氏ちゃんは見てないよ。なに?涼音彼氏ちゃん探してんの?」
「だから彼氏じゃって、それどころじゃないね。そう、行方がわかんなくて」
「クラスのグルチャで聞いてみる?」
「んー、手段選んでる場合じゃないから、お願い」
「ん、まあ誰か反応するっしょ。じゃ私彼氏と待ち合わせしてっから」
「うん、ありがとう」
さて、次は何をすればいいかなと考えた時、ラファちゃんが袖をクイっと引っ張ってきた。
「しんてんあった?」
「わからないけど、もしかするとあるかも」
そう言って私はとりあえずチャットアプリを開く。すると通知が入っていた。
『特別棟の方に男2人に担がれてた気がする』
『中庭近くで見たけど』
『特別棟の階段上っていってたよ。男2人に担がれて』
『待ってホモに誘拐されたのん?笑』
『それはまずい、とてもまずい(語彙力の欠如)』
『涼音の彼氏の貞操ピンチ』
『待てそれだと桐生女ってことにならね?』
『ならねえだろ』
そこから下はもう何の情報もない雑談だったので見るのをやめた。
犯人は男2人。証言からして特別棟の1階以外。理央君を担いで移動してるなら最短ルートで目的地に行くはず。じゃないともっと多くの人に見られる。絞られてきた。
「ラファちゃん、特別棟に理央君がいるよ」
「ん、いこ」
特別棟…確か立ち入り禁止のゾーンがあったような。確か4階に。
でも一応、順に見て行こう。
***
身に覚えのない物置部屋で、俺は目を覚ました。
ぼやけている目でドアを見た。鍵のタイプが古いので特別棟。科学室及び科学準備室は例外で最新の鍵。よってそれ以外の特別棟ということとなる。
ガラスの部分に紙が貼ってある。元々貼られているもののようだ。となると3階の科学準備室か、4階の立ち入り禁止エリアの準備室もしくは備品室。
先程述べた通り、科学準備室の鍵は最新なので違う。結論。4階の立ち入り禁止エリアの準備室か備品室。
ふっ、頭が冴えてるぜ…
って、頭が冴えてても意味がねええええええええええええええ!?
「ふがー!ふぐふぐ!?んーー!」
くっ、口が塞がれている!自分の身体の状況確認してなかったな。口は塞がれ、手足はバッチリ縛られている。そして胸部辺りに3周程巻かれている。要は詰んでいると。どうしよ。
「あ、姉御遅いっす」
「ちゃんと捕まえたか?」
「はいっす!多分目覚めてんじゃないっすかね?そこまで強い薬使わなかったんで!」
まずそのお薬を何処で入手したんだコンニャロウ。オカシイダロォ!
「じゃ、誰も入れんじゃねえぞ。そこのロッカーにでも入って隠れてろ」
「はいっす!」
誰だか知らねえが、こんなことしやがって、タダじゃおかねえぞ!最弱でも何とかなる。
ガラガラ。
「よお、桐生理央」
えー、入室してきましたのは、この学校で1番喧嘩のお強い比嘉亜由沙さんです。ザ・女番長でございます。
染めた金髪でショートヘア。バッチリ決まってますね。
ん?タダじゃおかねえとか言ってたって?やだなあ何を言ってるんだか。そんなこと言うわけないですよお。
…言えるわけないじゃんかああああああ!!
だってな、あの悠さん相手に使い魔なし(悠さんは使い魔あり)の肉弾戦仕掛けて引き分けだぞ?
「ん、んぐ…」
「お?何だ?」
ひいいいい!?怖い怖い怖いラファ涼音タスケテー!
「まあいい、用を済ませっか」
「んー!んん!んー!」
「大丈夫、痛くしねえから」
出たよ信用できない言葉!?
「アタシはな、あんたに言いたいことがあんだよ…」
と、顔を赤らめて言う。照れとかそんなんじゃなく、興奮で。やだ、これ食べられる。
「んー!んー!」
「お前さあ……可愛すぎるだろ?」
は?
「襲いたくて襲いたくて堪らない」
えっと。
「拒否権はねえ。お前は、俺が食うから」
カチャリと、ベルトの金属の音が鳴る。まずい。そっこは非常にまずい!
と、その時。
「あっその部屋はダメでぶくべふぁ!?」
「行かせゔぇぶるび!?」
(希望の)ガラガラ!ドアが開く。
「理央君!大丈夫!?」
「りおー!」
「ふぐん!ふがー!」
「ちっ、やっぱり見つかったか」
比嘉さんはすぐに戦闘態勢になり、何故かすぐ拳を下ろした。
「ラファエル。水か、相性わりーな」
そう呟くと、窓から飛び降りた。
「じゃあな!諦めるわけじゃねえぞ!」
それきり、比嘉さんの声は聞こえなくなった。よかった。ホッとしていると、ラファが紐解に来てくれた。涼音は背を向けて、何やら電話をしていた。
とりあえず手が解放されたので、ベルトを締め、チャックも閉める。
「ありがとう、涼音、ラファ。助かったよ。もうこっち見てもいいよ?」
「みつかってよかった」
「本当だよ、すごく心配した」
「ごめん、まさか襲われるとは思ってなくて」
「まあいいや、まだ今日のメインには間に合うから行こ」
「メイン?ああ、フォークダンスか」
「そそ。私と、ラファちゃんと、できればアルテミスとも踊って欲しいな」
「喜んで。なんか疲れてるけど、頑張るよ」
それから校庭で火を囲みフォークダンスを皆が思い思いに踊る。涼音はとても楽しそうに。ラファは少し眠そうに。アルテミスはとても恥ずかしそうに。俺とフォークダンスを踊った。何か目線を感じたが、気にしないことにした。
その後、2日目、3日目の文化祭は涼音、ラファ、アルテミスが俺にピッタリくっついていたため、3股だとか、色々言われた。
どうでもいいが、アルテミスは俺より身長が大きかった。
今回はギャグというかゆるいというか。
まあどんどんシリアスになる………かな。
いい意味で皆様の想定外になるかと。なればいいなぁ。まあそれは結構先の話。
次回、題名浮かばないんで、そうですね。
理央の過去の件、終結に向かっていきます。




