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とある世界の少年少女  作者: 橘葵
第一章  一から紡ぐ物語
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第七話  修悟の誓いと青葉の願い

次の日の正午ごろ、4人は自転車で都市の外へと向かっていた。

何だか爆発音のようなものが聞こえてきたが、そんなことは気にしない。


菜々葉と清美は修悟のいた世界に興味があるらしく、自転車を走らせながら修悟と会話をしているようだった。そんな感じで時間を潰していると、都市の外へと続く門までついた。

都市の外へ出ようとしたとき、警察官の人に止められたが、嘘の理由を言い、何とか都市の外へと出た。


「あれ…」


清美が何かに気づいたような素振りを見せた。


「…植物の、種類…写真と同じ、だから…この辺り」


修悟は驚いた顔でいたが、青葉と菜々葉はいつもの事だよねと笑った。

しかし、森林へと続く道は自転車が通れるような道でなく、青葉たちは自転車を停めざるをえなかった。


「じゃあ、少し気を引き締めていかないと…」


青葉は三人に言った。

このときはまだ、青葉たちには結末が全く見えていなかった。


探し始めて一時間ほどたった頃だろうか。

この辺りであるはずなのになかなか見つからない。


「なかなか見つからないよね…」


諦めの早い菜々葉がそう言った。

青葉は周囲を見渡して、


「まあまあ、そんなに焦ることはないって。」


と気楽に言った。

その時、菜々葉がもっと向こうの方を探さない、と提案してきたので、

青葉たちはその提案に乗り、停めていた自転車に乗った。


青葉たちは、緊張感が薄れていた。

まるで、ゲームの中で作戦を行っているかのように。

失敗しても、まるでリセットしてしまうかのように。

現実感が全く湧いてこないのか、それとも現実から目を逸らし続けているのか、青葉たちには、分からないままだった。


今いた場所の、道を三つほどずれた所に青葉たちは自転車を停めた。

青葉にはなんだか物の焼けた匂いを感じたが、どうやら他の三人には感じられないらしい。

気のせいであった時が恥ずかしいので、青葉はそれからは気を外しながら森の中へと進んでいった。

青葉たちがだいぶ森の中まで進んできたとき、清美が言った。


「…このへん、さっきあった…植物と共通するのが、多い。」


清美がそう言っているので、このあたりかもしれない。

青葉たちは周囲を見渡した。


青葉は左手の方角から何かの違和感を感じ、まずあそこから探そうと言った。

五分ほど歩いたことだろうか。青葉たちは違和感のあった場所にたどり着くと、仰天してしまった。





そこに着いたとき、残っていたものは爆発後のクレーターだけであったのだ。


しかし、その爆発跡には違和感があった。クレーターのあたりには、氷の破片が落ちていたのだ。

辺り一面を氷漬けにしたのだろうかという範囲で氷の破片が大量に落ちており、融けた氷でぬかるんでいる部分も見受けられた。

どうやら、状態を見る限り氷漬けにされてからは一時間もたっていないようだった。


そして、大量の氷の破片に混じって建物の残骸も見受けられた。

という事は、答えはかなり絞られる。



自然に起こった爆発ならば、そんなことがあるはずもない。

確実に魔法が絡んでいる。そうでなければあり得ないのだ。

もう、何かを始めるには遅すぎたのだ。

青葉たちは確信した。ここが、美乃里や梨花が収容されていたところだ、と。


美乃里や梨花は、ここで命を落とした可能性がある、と。



修悟以外がそれを理解した時、時が凍り付いた。

菜々葉と青葉は、涙が零れ落ちるのを堪え切れないようだった。

それと対照に清美はいつもの冷静な姿が変貌し、犯人への怒りに燃えているようであった。


悲嘆に暮れていた時、青葉はある事を思い出した。

青葉は、修悟に「ある事」を頼むために口を開いた。


「ねえ、お願い。世界を、時間を、巻き戻せるんだったよね。美乃里とか、梨花が、こんなことにならないように、私たちが、こんな運命に、ならないように、してほしいな。」


修悟は、いまひとつ実感の湧かないような顔をして、


「分かった。皆がこんな顔をしなくてもいいように、絶対、やってやる。」

と、三人の顔を見て、きっぱりと言った。


「『平和』の神に願う。世界を巻き戻すよう。」

「そして三人に誓う。巻き戻った後の世界では絶対成功させてやる。」





そして世界は流転し、修悟の、青葉たち四人の戦いが、幕を開けた。





*_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*


『平和』の神は、修悟たちの行動を天から見ていた。


修悟が転移したあと、突如起こった誘拐事件。

それも、おかしなことに修悟の近くで起こった。

こんなすぐに巻き戻るような事が起こるなんて、神には想定外のことであった。

修悟が存在している範囲で巻き戻る場所の最善は、あそこしかないだろうと神は思った。


それの作業を完了させた時、神は悲しそうな顔で呟いた。





「…ごめんなさい。私のせいで」





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