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とある世界の少年少女  作者: 橘葵
第一章  一から紡ぐ物語
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第六話  前夜、青葉の思い

時計が午後九時を告げる音を立てた。

青葉は、片付けをしながら、考え事をしていた。


明日、どのように敵を倒そうか。

現場の写真は上がっているのに、まだ誘拐された人が解放されていないということは、相手は相当の手練れであるか、数がとても多いのだろう。


いくら清美がいても、さすがに数で押されると勝ち目がない。

明日の計画は、もしかしなくても行き当たりばったりになっているよなと、青葉は不安になった。


「明日は魔力がつきないようにしっかり準備しておかないといけないんだけどな。」


青葉の魔法は、強力なものや、全体攻撃の魔法が大半を占めている。

後は、最低限の治癒魔法と、自分の魔力を少し増幅させる魔法しか覚えていなかった。


否、覚えてはいるが使えないのだ。能力や適性などの関係もあって、青葉は中程度の魔法の制御がなかなかできない。

青葉は、昔からその事実に無力感を覚えていたのだった。


「まあ、中程度の魔法を使わなくても勝つことは多分できるからなー。

もしも無理そうなら、清美と二人でセット魔法にしたらいいし。」


セット魔法というのは、決まった組み合わせを順序通りに詠唱すると、魔法の力が増幅されたり、特殊な効果が表れたりするものである。

青葉が能力持ちの人と対等に渡り合うために生み出した、言わば必殺技のようなものである。


普通の人だとそんなことは全く必要のないことだったので、全く盲点だったのか、青葉の考えたセット魔法は効果が抜群だった。


青葉と清美は、使える魔法の属性的に相性が良く、敵を倒す必要があるときにはよく一緒に組んでいた。


「私と清美で組んだら、都市一のペアになれるはずなんだけどな…」


そう呟きながら、青葉は椅子に腰掛けた。


清美は、とある事情でペアを組んで行動するということに抵抗がある。

ただ、一人でも充分強いので、一年前まではあまり積極的に行動するということがなく、家族以外とのコミュニケーションもあまりとっていなかったようだ。

そんな状況であったのに、いきなり都市を移るようにと言われ、凄く不幸な人生だなと思っていたらしい。


青葉も、清美があれほどの戦闘能力を持っているのに、なぜこの都市に移らなければならなかったのかわからなかったが、本人曰く、

能力を活かして仕事をした方が、将来的にいい方向になると役所に言われたらしい。


清美曰く、人生の転機は菜々葉と出会ったことだという。

菜々葉と出会ってから、少し積極的に行動するようになり、コミュニケーションも慣れていないものの、とれるようになってきている。との事だった。


「…でも、あの二人の関係は諸刃の剣なんだよな…」


プライベートを大事にする清美と、人のデリケートな部分にも触れてくる菜々葉は、とても微妙な関係だった。

青葉は、こんなことを考えるのも久しぶりだなと思い、どこか懐かしいなと思った。


話がどんどんそれてきているなと青葉は思って、しっかり敵を倒すビジョンを明確にするために青葉は再び考え始めた。


やはり、火力で押しきってしまった方がいいのだろうか。

しかし、それだと誘拐された人も巻き込みかねない。

かといって、一人一人倒していっていると時間がかかりすぎる。


「地形や敵のいる場所がわからないと考えられないよな…」


と呟き、青葉は情報が少なすぎるので、それ以上考えることを断念した。


そんなことを考えていたら、修悟が部屋に入ってきた。


「あのさ、魔法って他にないの?俺、あの四つだけだと不安なんだけど。」


と、なぜか笑顔で修悟は言った。

まあ、多分そうだろう。しかし、他の魔法を教えようにも、修悟が使えそうな範囲で、青葉が教えられるものはあまりない。

なので、青葉は修悟に簡単なセット魔法を教えることにした。


「正直さ、今私が修悟に教えられる魔法はあれくらいしかないのよ。

だからさ、さっき教えた魔法の詳しい活用法を教えるよ。」


青葉は、修悟に正直に言った。

今の修悟の状態では、魔法をコントロールできずに魔力が暴走してしまう恐れがあり、そんな危険を冒して教えるほどの勇気は私にはない、と。

それなのに、修悟は笑顔を崩さずにいて、逆に青葉が調子を狂わされたような気がした。


「セット魔法って面白そうだね。どんな組み合わせがあるのか?」


どうやら、修悟はかなり食いついてきたようだった。

青葉は、そんな修悟の姿を見ていて、思わず笑顔になってしまった。


「じゃあね、まずは…


青葉は、セット魔法について修悟に教え始めた。


修悟が使える魔法の範囲では、グロードとウィンディを組み合わせてできる簡単な目潰しや、フローズとウォーティアを組み合わせてできる氷の作成にが使える。

青葉は使うシチュエーションを含め、丁寧に修悟に教えた。


話し終えたとき、修悟の顔はどこか満足そうで、青葉としても話がいがあった。


「ありがと。本当に出会って一日とは思えない充実ぶりだったよ。」


「これを覚えていたら、かなり役立つからダメ元でもいいから、明日一回使ってみるといいよ。」


青葉がもちろん都市の外でね、と補足すると、修悟は分かってるって。と笑った。


「じゃあ、俺はもう今日は疲れたから寝るわ。明日、頑張ろう‼」

「修悟がそこまで言ってくれるとは…凄い嬉しい。おやすみ。」


再び修悟は自室へと戻っていった。

青葉も、修悟が積極的に聞いてきてくれて嬉しいと思っていたが、一日で色々ありすぎたのか、どっと疲れが襲ってきた。

青葉は、大きく欠伸をして、


「ちょっと早いけど、私ももう寝ようかな。お風呂は…明日でいいか。」


青葉は、修悟がすやすやと寝息をたてていることを微笑ましく思いながら、戸締まりや、電気の確認をした。



時計が、午後10時を告げる音を立てた。


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