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とある世界の少年少女  作者: 橘葵
第一章  一から紡ぐ物語
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第十五話  よそよそしさは全開で


時は一日前まで巻き戻る――


――世界の再生が行われる。

三度目も、またあの場所から始まるようだ。



_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*


朝日が差し込む部屋で、青葉はゆったりと椅子に腰かけながら、少年に向かって言った。



「異世界転移、していません?」


青葉がそう言い切った時だった。

突然世界の埋め合わせのようなものが行われているように感じた。


それが完了したと思われるかのように変な流れが止まった。

突然少年の様子がおかしくなった。

少年は何が起こっているかもわからないかの表情をしていたのに、いきなり瞳に決意を宿した表情になっていた。


「……えっと、これは?」


こんなわけのわからないこと、青葉のほうが困惑してしまうだろう。

いきなり異世界人が現れたかと思うと、今度は謎のタイミングでの世界の改編。

青葉は、とりあえず前に居る少年が何か知っていないものかと口を開いた。


「俺が、お前らを救わないといけない展開に?なってる。」


青葉は、少年もあまり理解できていないようだと感じた。

しかし、青葉の本業は相談屋。まずは記憶を視て解決を図らないといけない。


「……信じられないことかもしれないけど、これから俺たちの身にはとんでもないことが起こるんだ。

多分俺が話すより青葉が俺の記憶を視たほうが早いと思う。頼んでいいか?」


どうやら、それが少年の相談内容らしい。

青葉は、それには頑張って応えないと、と思い、必死で視えてくる情報を整理した。


「……何これ。こんなことあっていいわけ?」


前に人が居ることを忘れて、青葉は思わず強い口調で呟いた。

明日に行ったらもう遅い。

その事実だけが、青葉の胸を締め付けるのだった。


ただし、必然的に起こることは対処しないと思うのが青葉だ。

何とかして敵を倒さないと、この都市に平和はやってこないだろう。

そうと分かった時、青葉は少年を見て、


「これから、私と組んで、頑張っていきませんか?前の世界でも、またその前の世界でも同じだったように。」

「もちろん。青葉が居ると心強いってもんではないよ。」


ここに、三度目の仲間結成が成功したのだった。


「となると、乗り込みに行くのは今日のほうがいいですよね。しかも、清美たちが居ないとちょっときついかも、て感じなんですか?」


青葉は、丁寧な姿勢を崩さずそう言った。

少年は、少し考え込んだ後、


「明日だと、もう間に合わないかもだから、出来るだけ早く行ったほうがいいんだけど……」


となぜか口ごもりながらそう言った。


「俺はさ、まだ自転車も持っていないから、まずは駅前に行かないと何もできないんだよね……」


青葉は、じゃあ何で駅前に行かないといけないのか、と不思議に思ったが、多分前の世界では駅前で時点屋などその他もろもろを調達したのだろう。

多分、行動は少年が経験した前の世界をなぞるほうが早いだろう。

青葉は、まずは駅前に行くことにした。


「じゃあ、今からでも駅前に行く?」

「あ……でも仲間集めないと結構しんどいかもって前の世界で清美が言ってたかも。」


仲間集め。簡単に言うが、まだ何も起こっていない以上、真実を伝えて仲間になってもらうのは無理がある。

前の世界では青葉はどうやって仲間を集めていたのだろうか。

今の青葉はそれが一番知りたい事になった。


考えた結果、まあ、嘘をついて連れて行っても大丈夫だろう。という結論が出たので、青葉はまずは自転車の調達を行う事にした。

頑張れば、昼の三時くらいに出ることが可能だろう。

青葉は、今回は事件が起こる前に行動しようという気になっているようだった。


「仲間集めは私のほうで何とかするので、先に自転車を手に入れに行きましょうか。」

「あ、うん。」





二人はとりあえず準備をして、マンションのエントランス前に降りてきた。


「じゃあ、行きましょっか。」

「うん。」


二人の間にはどこかよそよそしい雰囲気が漂っていた。

二人のそんな空気を打ち壊すように、少年が口を開く。


「でもさ、青葉、仲間って感じがしないから、もうちょっと砕けてくれてもいいんだけど……」

「これが私のポリシーなのです。」


青葉はぴしゃりと言った。

砕け始めるのは自分のタイミングで。前の世界では青葉はどのように話していたのかが気がかりだったが、前の世界に頼りすぎても良くないと思う。

青葉は、この世界では自分のタイミングで砕けていくことを決意した。


「……そっか。前の世界の青葉、かなり話しやすかったんだけどな。

今の世界の青葉は、なんだか別人みたいで。不思議な感じ。」

「ですが、何で前の私は初対面の人と砕けて会話していたんでしょうか……?」

「そこまでは俺に聞かれても困るかな。」


青葉たちはそんな感じで、どこかかみ合わない会話をつずけながらショッピングセンターへと入ってった。

そして、自転車売場まで来た。


「じゃあ、ここで選んでてください。私は少ししたら戻ってきますので。」

「……は、はあ。」


青葉は食料品売り場へ行った。

少年は、青葉の態度に困惑しながらも、出来るだけ自分のペースを崩さないようにしていた。



_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*


「今日はなーに、にしよっかなー」


そんなことを考えながら青葉は食料品売り場をさまよっていた。


青葉は少しテンションが上がっていた。

少年の前ではあまりそれを出す事はなかったが、青葉も内心はとても興奮しているようだ。


それもそのはず。とても久しぶりに青葉の元へと来訪者がやってきたのだ。それに、その少年は済み加茂整えておらず、しばらくは青葉の家で滞在しなければいけなくなるだろう。

そう考えると、青葉は興奮せずには居られなかった。


「さてと……今日は久しぶりに自炊してみますか。あんまりレパートリーないけど、和食位なら作れるでしょう。」


そう言いながら、青葉は今日の料理の食材を次々とかごに詰めていった。

いかにも庶民的な食材ばかりが入っている。青葉はなかなか豪華な料理、というものを習得していないようだ。


そして、すべての食材を詰め終わると、青葉はレジへと向かい、清算を済ませた。


「じゃあ、あの子の元へと向かいますか。」



青葉は、袋に食材を抱えながら、少年の元へと歩いて行った。





青葉が戻った時、少年は、黒の自転車の前で待っていた。

少年はそれをとても気に入っているようで、とても大事そうに眺めていた。


「俺はこれがいいかな。」

「分かりました。では、ちょっと待っていてください。お会計を済ませてきますので。」

「……」


やっぱり、傍から見るとただの変な二人組であろう。

微妙に噛み合っていない会話をかわし、青葉はレジに向かう。


「お会計、一万八千円になります。」

「はい。これで。」

「ありがとうございましたー。保証書はこちらになります。大事に保管しておいてください。」

「あ、ありがとうございます。」


この世界では、子供一人でこのような大きな買い物をするのは珍しくない。

しかし、どうやら少年の住んでいた世界では違ったらしく、きょとんとしていた。


「こんなに大きな買い物、子供だけで大丈夫なの?」

「これくらいは、大丈夫ですよ。私たちの住んでいるマンションの住民も、全員親と離れて暮らしていますから。」


青葉は、少し寂しげににそう言った。


「では、戻りましょうか。そろそろあの二人とも協力を取り付けなければなりませんし。」

「……そうだね。こんなにのんびりしていられないんだった。」


時刻は十一時前、青葉たちはショッピングセンターを出て自宅のあるマンションへと戻って行ったのであった。

青葉は、ショッピングセンターでの一連の流れで、少年に悪いことしてしまったかもな……と、そう思った。





_*_*_*_*_*_*_*_*_*_*


マンションの管理人に少年の事を話し、少年の自転車はマンションの自転車置き場を少し借りる形で置かせてもらうことになった。


そして青葉たちは部屋へと戻った。

部屋に戻っている時、青葉は、少し砕けて話してみようかな……。と、そう思った。

青葉は、勇気を出して砕けてみることにした。


「あのさ……俺ってどうしたらいいと思う?

今日は多分役立たずのままで終わってしまうと思うけど、何もせずに青葉に迷惑はかけたくないんだ。」


「えーっと、じゃあね、……


修悟の顔が、ぱあっと明るくなった。

それに気づいていながらも、青葉は続ける。


「多分、一番最初の世界で私が魔法教えているでしょ?それで私のフォローしてほしいかな。」

「分かった。精一杯やってみるけど、俺は清美ほどの実力者でもないし、あんまり期待しないほうがいいかもしれない。」

「分かってるって。大丈夫。魔法は実戦で覚えていったら、いつかうまくなれるから。」


青葉は、修悟にそう言った。

修悟は青葉が見ている限り、魔力のコントロール力に優れているので、練習すればかなりいい線まで伸びてくれるだろう。しかし、魔力量と覚えられる魔術に制限があるので、そこが気がかりだった。


「じゃあ、私はちょっと菜々葉と清美に声かけてくるから、そこらへんで座って待ってて。すぐ戻ってくるから。」

「はいはーい。ありがとう。ほんとに。」


修悟は青葉に、完全に気を許したようだった。

どうやら青葉が気を許してくれるのを待っていただけのようだったが。

そんな姿を見て、青葉が誰にも聞こえないほどの小さな声で


「それでこそ仲間だね。私がもっと早く砕けてたら良かった。ごめんね。」


そう言って、部屋から出て行った。






青葉は、少し菜々葉たちを誘う方法を考えていた。

幸い、まだ事件ははまだ始まってすらいないので、騙して連れていくのも容易だ。

下手に真実を伝えてしまうと混乱して、厄介なことにになってしまうと考えた青葉は、騙して菜々葉たちを森林へと連れ出す事にした。


青葉たちの部屋より二階上に、菜々葉たちが住んでいる部屋がある。

その部屋のインターホンを鳴らし、人が出てくるのを待った。


そして、予想外にも出てきたのは清美だった。

清美だと、少し話が通じにくい面もあるが、まあついてきてくれるだろう。

青葉は、清美に向かって言った。





「今日さ、今すぐにでも都市の森林のほうに行かない?ちょっと探検してみたいところがあるんだけど。」














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