第一話 初めの初めの物語
朝が来た。
今日も普通の朝だ。
上川青葉は、いつものように伸びをしてから、タブレットを開いてメールボックスを確認した。
多分、今日も空なのだろう。
いつもメールボックスを開いて虚しい気持ちになることまでが青葉の日課だった。
「初めまして。
突然で悪いのですが、頼みがあります。どうか僕に会っていただけませんか?
会えるようならば、返信してください。」
初対面で名前を名乗らないなんて…と青葉は苦笑いしながら、
「構わないですよ。ただし、午前中に、私の家で会う事になってもよろしいですか?」
と返信した。すると、
「ありがとうございます。では、9時ごろに行かせてもらいます。」
と、返信が来た。
家の場所、分かるかな…と、一抹の不安を抱えながら、人を迎える準備に取り掛かった。
まあ、こんな事が起こるなんて珍しい。不安よりも期待が上乗せされていくような気がした。
上川青葉は能力者である。それも、人の記憶を見ることができるというものだ。
この能力には少し操りにくい点もあるが、かなり役に立つ。
能力者といっても、別にこの世界では普通のことだ。ただ、少し特殊だというだけの話だ。
青葉はこの能力を使って、相談屋を開いていた。ただ、別にこの世界で、この能力を直接使って人の役に立つ、という事はほとんどなく、普段は時間を持て余す毎日を送っていた。
その毎日は、14歳である青葉にとって、劣等感をもたらすことだった。
あのまま都市を移らなかったら、今とは全く違う生活が送れていたはずなのに。
家族は魔法を使う能力に特化しており、青葉が十三歳のときに都市を移る事になったので、青葉は一人暮らしであった。
ピーンポーン
丁度9時になった頃、家のチャイムが鳴った。
「あのー。どちらさまでしょうか…」
青葉は怪訝そうな顔で少年に聞いた。
その少年は、この都市ではあまり見ない服を着ていた。どこから来たのだろう……と青葉が不審に思っていたが、返答によってその疑問が晴れた。
「今朝メールをしたものです。」
「ああ、その方でしたか。失礼いたしました。どうぞ上がってください。」
とりあえず、不審なところは見当たらなかったので、少年に家に上がってもらう事にした。
「初めまして。私の名前は上川青葉です。今日は一日よろしくお願いします。
あの…名前と年齢を教えてもらってもいいでしょうか?」
「こちらこそ初めまして。僕の名前は木下修悟です。あ、年は14です…
よろしくお願いします。」
まさかの同い年であったことに驚きながら、もっと驚くような記憶が視えた。
その事実を修悟に伝えるか迷っていたところ、修悟が、
「あの…ここ最近あり得ないことが立て続けに起こっているのですが…
ちょっと話を聞いていただけないでしょうか。」
たぶん今視えた事は間違いではないのだろう。話を早く進めたかったので、
青葉は修悟に言った。
「あの、もしかしたらなのですが、あなた、神に導かれて…
異世界召喚、されてません?」
初めまして。橘葵です。
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