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魔道具少女は恋を知らない。  作者: ゆきうさぎ
◇宝石箱編◇
47/143

◇第47話

少し分量多めです。

一番最後は誰とは言いませんが一人称です( ..)


ていうかそろそろ宝石箱編終わらせたい・・




「聞いてたのかしら、今の王子の話」


まぁ聞いていないわけないかと、マーシャルは呆れ半分で宝石箱を見る。

閉じ込められて、魔力を吸われ続けているといっても、半分ほどは自分の意志で閉じこもっているようなお姫様なのだ。

とんだわがまま姫じゃないかと、マーシャルはここ最近ずっと思っている。


「言っておくけど、魔力はもう吸われることはないでしょうから、出てくるかこないかはあなたの意志よ、お姫様」


数日をかけて、マーシャルは宝石箱に白い魔石を嵌め込んでいた。

それは光の力を宿した明るい魔石だ。

マーシャルがわざわざ光の精霊に頼み込んで造ってもらった、稀にしか見ない何とも純度の高い魔石である。

それを、闇の魔石の力を相殺するために使っていた。

いや、実際は相殺どころか元々の闇の魔石の力よりもかなり強い。

外部からの呪いを防ぐためだ。

マーシャルは中の呪いも外部からの呪いもすべて跳ね返せるよう、過剰なほどに光の魔石を使ったのだ。

つまるところ、マーシャルはすでに手は施し済みであり、人食い宝石箱は今では何の変哲もないただの宝石箱でしかないのであった。

だから、あとは閉じ込められているシェイラ次第なのだとマーシャルは言った。

シェイラが出たいと思ってくれなければ、宝石箱は開きそうにないのだ。


「ていうかいい加減にしてくれないですかね」


マーシャルはふんぞり返るように座りながら、宝石箱に話しかける。

はたから見れば宝石箱に話しかけている気狂いにしか見えないが、話している相手が実はこの国の第一王女だとわかれば冷や汗ものだ。

不敬罪で首を撥ねられても文句など言えないほどには、マーシャルは不躾な態度をとっている。

レイモンドに知られれば、説教だけでは済まないだろうとマーシャルは思っている。

それでもと、マーシャルは思う。

このままでは、いつまでたってもこのままで、そのうち痺れを切らした側妃に箱ごと壊される日が来るんじゃないかと、マーシャルは危惧している。

そして宝石箱の中に引きこもっているお姫様はそれすらも受け入れてしまいそうで嫌なのだ。


「私にはわかりませんけど、嫌でしょうね、玉座をかけた勢力争いなんて。自分がこの国の王になるなどと言ったわけでもないのに勝手にまつりあげられて、弟と対立しなきゃいけないなんて」


マーシャルは自分で言っておきながら、想像して顔を顰める。

ほんの少しだけ、自分とレイモンドに置き換えてみたのだ。

まぁどれだけ想像してもレイモンドが勝つところしか想像できなかったのだが。


「おまけに側妃様はお姫様を嫌っておられるとか。そのせいでディートリア様とはあまり一緒にはいられなかったんですね」


側妃であるレイチェルが王妃やその娘にあたるシェイラたちを嫌っているのは憶測ではなく周知の事実だ。

レイチェルはそれを隠そうともしなければ、どれだけ陛下に言われても態度を改めようともしない。

城内の噂では、レイチェルは殺したいほどに憎んでいるとまで言われている。

特に継承権が絡んできてからは、その思いはなおさらだと言われている。

そりゃあ引きこもりたくもなるよねーと、マーシャルは言葉にしないものの思った。

それではだめなのだけど。


「嫌になって引きこもりたくもなりますよね」


マーシャルは、間違いなく自分も引きこもっていると言いきれる自信があった。

それどころか、もしかしたらすべてを放棄して逃げ出していたかもしれない。

そう思って、否と自嘲するように笑った。

自分には、到底逆らえそうにない兄がいるのだ。

逃げる前に捕まえられて、権力も何もかもレイモンドのものにされるなと、簡単に想像できてしまった。


「でもそれじゃ何も解決しないですよね、お姫様」


マーシャルはほんの少しの嫌がらせを込めて、シェイラのことをお姫様と呼ぶ。

シェイラは今年の生誕祭で成人を迎える。

この国の成人は18歳であり、シェイラは今17歳だ。

誰かからお姫様と呼ばれるような年齢でもなければ、この国を背負って立つ人間だ。

まぁ現在20歳であるマーシャルからしてみれば子どもになるのかもしれないが。


「その宝石箱の中にいれば、なんでも丸く収まると思ってました?それはちょっと甘いんじゃないですか?」


おそらくシェイラだとて、まさか自分の魔力が宝石箱に奪われているなど思ってもいなかっただろうが。

それに心を癒してくれる闇の魔石の力が使われているのだ。

宝石箱の中は大層心地良いことだろう。


「考えたことあります?残された人たちのこと」


マーシャルは先ほどのディートリアの疲れ切った哀愁漂う姿を思い出す。

それと一緒に、ディートリアから知らされた王妃たちの状態も思い出した。

正直、マーシャルも思っていたよりも酷い状態に驚いたのだ。

肉親であり、今まで一緒に過ごしてきたシェイラにとっては認めたくないことだろう。


「お姫様がいなくなって悲しんでいる人たちがいるんですよ。ていうか、喜んでいる人もいますけど、喜ばせておくの悔しくないんですか?」


マーシャルは悔しいと思う。

なぜ自分がこんな目にあっているのに、のうのうと相手は生きているのかと、マーシャルならば思う。

そして間違いなく仕返しを誓うだろう。

だが、仕返しなどと言っている前に、お姫様にはもっと考えなければならないことがあると、マーシャルは思っている。

それは、自分がいなくなって悲しんでいる人たちがいるということだ。

それをマーシャルはわかってほしいと思っている。


「いいんですか?このままで。ディートリア様、寂しそうでしたよ」


末姫も精神状態が危ないと言っていた。

それもこれも閉じ込めれられたシェイラを思ってのことだ。

それほどにシェイラは大事にされているし、慕われているし、好かれているのだ。


「引きこもりたいのなら別に止めませんけどね、できたらお姫様を心配している人たちとしっかり話あってからにしてほしいですね。あんなにお姫様のこと心配してるんですから。ていうか、会いたいとか思わないんですかね?」


マーシャルはため息まじりにそう言うと、そろそろエドワードが来る頃だろうと思って椅子から立ち上がった。








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「姉上が結婚してどこかへ行っても、会えないなんてことないと思ってたよ。だからかな・・すっごく寂しいし、正直自分の中で整理ができてない」


「会えるものならね。まだ姉上と話したいことややりたいことが沢山ある」


「妹のリーソフィアも会いたがっている」


懐かしい声と、懐かしい名前が聞こえていた気がした。

その声は寂しいと言っていた。

その声は私を姉と呼んでいた。

その声は愛しい妹の名を呼んだ。

その声は、紛れもなく弟であるディートリアだと気が付けば、無性に彼に会いたくなった。

普段から側妃様のことがあって会えない弟だが、こうして私を慕ってくれる。

それが無性に嬉しくて、そしてそれと同じくらい申し訳なかった。


「聞いてたのかしら、今の王子の話」


そして次に聞こえてきたのは、ここ最近私にやたらと話しかけてくる声だった。

聞き慣れない声だった。

その声は敬語になったり、親しい友人と話すような砕けた口調になったりと、語りかけてくる言葉遣いは様々だったけれど、この声は私に様々感情を向けてくれた。

苛立たしげに語尾を荒げているときすらあった。


「ていうかいい加減にしてくれないですかね」


そうちょうどこんなふうに。

そして名前も知らない彼女はいつも確信めいたことを私に言うのだ。

出てこいという言葉は一度は口にしないくせに。

言葉の端々からは、出てこいという気持ちを感じてはいるが。

いつまでも宝石箱の中に閉じこもっているのはよくないとわかっている。

けれどこの中はとても心地が良い。

それに私がいなければ、王位争いはなくなって、すべてが丸く収まるじゃないかと思っていた。

なのに。

彼女はそれでは甘いという。

そして悲しんでいる人たちがいることを教えてくれた。

わかってはいたのだ。

だけど、実際に聞かされると、胸が張り裂けそうになった。

ごめんねと謝りながら、愛しい妹たちを抱きしめてあげたいと思った。


「引きこもりたいのなら別に止めませんけどね、できたらお姫様を心配している人たちとしっかり話あってからにしてほしいですね。あんなにお姫様のこと心配してるんですから。ていうか、会いたいとか思わないんですかね?」


最後に、そう聞こえてきた。

その言葉に私は会いたいと、強く思ってしまった。







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