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魔道具少女は恋を知らない。  作者: ゆきうさぎ
◆王女様編◆
103/143

◆第103話



「まぁ忠誠のことは後でもいいや」

「へ?」


エドワードはそう言って、先ほど置いた剣を腰に差した。

その様子を見ていたマーシャルは突然エドワードと目が合ってしまい。真紅の瞳を彷徨わせる。


「シャル」

「なん、ですか」


マーシャルはバッと顔をそむける。

なんとなくエドワードの顔を見ることが出来ないのだ。

そんなマーシャルの様子にエドワードは笑みをこぼす。


「俺、シャルに告白したんだけど?」

「・・ぅきゃっ!」


エドワードはいつまでたっても自分に背を向け続けるマーシャルに、そっと背中にスーッと指をはわした。

途端に上がる、マーシャルの声。

そしてマーシャルは睨むようではあったが、エドワードの方を見たのであった。


「告白した相手に背中しか見せないってどういう魂胆?」

「いや、あの、その、」

「俺は冷静にさせる時間はあげないって言ったよな?」

「いやでもね、」

「それとも俺は全くそういう対象にならない?」

「そんなこと!」


ない!と言いかけて、マーシャルはエドワードの弧を描く唇を目にした。

言わされたと思っても時すでに遅し。

みなまで言わなくとも、エドワードには伝わってしまったのだから。

マーシャルは慌てる。


「仕方ないなぁ」


エドワードは深いため息をついた。

そして乱雑に自分の髪をかくと、マーシャルを見つめた。

ただそれだけで、マーシャルの心臓は跳ねる。


「本当は嫌だけど考える時間をやる」

「え?」

「なに、いらないの?」

「いります!いりますから!」


なんとも必死なマーシャルにエドワードは苦笑を漏らす。

そんなに考えるのかと、少しばかり気落ちはするものの、自分は対象外ではないとマーシャルが言ったため、可能性は0ではないと考え直す。


「期限は、」

「無期限で」

「お前な」

「だって期限決められたら焦っちゃうじゃないですか」

「もうとりあえず俺のになっとけばいいだろ」

「なに言ってるんですか!?」


誰だこの男は!?とマーシャルは顔を引き攣らせる。


「まぁいいけど」


そう言ってエドワードはマーシャルの白銀の髪を撫でた。

マーシャルはされるがままだ。

その様子にエドワードは呆れたように笑う。


「エドは、」

「ん?」

「なんで私なんですか?」


マーシャルは自分は確かに見た目だけならばそれなりに見られるものであると自負しているが、それ以外は他の娘よりも劣ると思っている。

縫物をする暇があれば魔導具をいじるし、花を愛でる時間があるならば剣を振るというそんな娘である。

身分も見目もいい娘ばかり見てきたであろうエドワードが自分を好きだという理由がマーシャルにはわからなかった。


「なんでだろうな?惚れちゃったもん仕方ないよな」


エドワードはそう言うが、一目惚れだったんだと思っている。

それも20歳の今のマーシャルではなく、少年として会った時のマーシャルにだ。

そんなことは誰にも口が割けても言えないが。


「まぁしばらく俺で悩め」

「言ってくれますね」

「なぁシャル」

「なんですか」

「俺はちゃんとお前が好きだよ」

「っ!」


正攻法だが不意打ちだとマーシャルは思う。

好きだと単刀直入に言ってくれるのはいいが、こうも不意に言われると恥ずかしい。

顔を赤くするマーシャルを散々堪能したエドワードはちらりと医務室の扉を見た。


「そろそろ入ってきてもいいんですけどね」

「エド?」


エドワードは扉に向けて声を発する。

マーシャルには何をしているのかわからなったが、ガチャリという扉が開く音がした時に「まさか」と小さく言葉を漏らした。


「いつからいるって気付いてたの?」

「最初から」


医師は入ってくるなりエドワードにそう言った。

医師の後ろにはエリックが立っている。

マーシャルは穴がはあったら入りたい気分になった。


「じゃあ俺もう戻るんで」

「ちょ、エド!?」


エドワードはどことなく楽しそうに医務室から出ていってしまった。

そんな後ろ姿を見送ったマーシャルは何とも言えない脱力感を感じた。


「随分元気そうじゃないか」

「おかげさまで」


マーシャルは医師の診察を受けながら、エリックと話をする。

疲れ切っているマーシャルは先ほどからため息ばかりだ。


「しかしエドのやつ、タイミング考えろよな」

「どれの」

「どれってなに。エドに何されたの」

「・・・・・何でもないです」


マーシャルは布団の中で悶える。

そんな様子を見ていたエリックは少しばかりマーシャルを憐れむのだった。


「思ってたよりも回復が早いですね」

「そうですか」


マーシャルを診察した医師はそう言うと、カルテに何やら書きこんでいく。


「とくに体に異常はないようですので、このまま出てもらっても構いません。ただ、随分寝ていたので体は鈍っているし、いろいろと弱っているので、十分に労わってあげてください」

「はい」

「あと、くれぐれも今回のようなことは起こさないこと」

「はい、」


マーシャルは素直に頷く。

素直な反応に医師は気分を良くして満面の笑みでマーシャルを医務室から見送った。

よたよたと壁を伝いながら、マーシャルは歩く。

その隣にはエドワードではなくエリックが歩いている。

マーシャルは心底隣にいるのがエドワードではなくてよかったと思った。


「ウィズが心配していた」

「ウィズ様が?」


なんとも珍しいことだと、マーシャルは目を丸くする。


「ウィズは魔導具の次にマーシャル嬢を可愛がっているからな。こっちに帰ってきたら医務室で眠っていると聞いて悲壮感いっぱいだった」

「それ、悲壮感じゃなくて、パシリがいなくなったことへの絶望感じゃないですか?」

「ハハハ、マーシャル嬢はそう思うか!」


エリックは豪快に笑った。

その声に反応した貴族たちがエリックとマーシャルの方を見て、訝しげに顔をひそめた。

そんな様子を見たマーシャルはため息を漏らす。

そして思い出すのだ。

普段エドワードと一緒にいるからあまり思わないが、単体でいればエリックも乙女の心をつかんでやまない美丈夫だったと。


「・・視線が痛いわ」

「よく言う。エドの隣を平然と歩いてたくせに」

「いやあれはもう気にしたら負けというか」


そういうレベルで視線があっただけなのだ。

気にしていたら、マーシャルは今頃胃に穴があいていると本気で思う。

そもそもマーシャルはそんなに繊細にできてはいないし、自他共に認める図太さを持っている。


「ああそうだ、マーシャル嬢」

「なんですか」

「シェイラ様がめちゃくちゃ会いたがっているらしいぞ」

「・・どこの誰情報ですか」


王都の警備が主な仕事である黒騎士が、シェイラの気持ちなど知る由もない。


「サーシャが言っていた」

「サーシャ様が?」


はて?とマーシャルは首を傾げる。

自分の目の前にいる男は青騎士団団長であるサーシャとは犬猿の仲、水と油のような存在である。

そんな男がサーシャと話をするだろうか。

その答えは、否。

マーシャルは訝しげにエリックを見た。


「サーシャがやたらにマーシャル嬢のことを聞いてくるからな聞いただけだ」

「なるほど。仲良くしてるわけではないんですね」

「俺がサーシャと?考えただけでも気持ち悪いな」


マーシャルは呆れたようにエリックを見た。

なんとも素直でない2人だと苦笑を漏らしたマーシャルは、もう少し歩けるようになって体力を取り戻したらシェイラに会いに行こうと決めたのだった。






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