~決意~
お母様が部屋から出た後、私はアンナさんに服を着替えさせられた。
楽しみですねぇ。お金持ちの誕生日パーティー。
お高いプレゼントに、机を埋め尽くす豪華な料理の数々…………グフッ。
おっと、うら若き乙女には相応しくない笑い方をしてしまった。
ホントに、楽しみですよ。
だって、お母様があんなに美人だったんですよ。そしたらお父様もイケメンに違いありません。I☆KE☆ME☆N!
I☆KE☆ME☆N!
異世界初のイケメン……私、気になります!あと、お金持ちそうなおうちなので呼び方はお母様、お父様呼びをすることにします。実際は言えないから、心の中でだけどね。
未知なるイケメンとの遭遇に心躍らせていると、アンナさんが諸々の準備を終えたようだ。
そして、ついにその時がすぐそこに……。待ってろよ、イケメン!
アンナさんに抱かれ、廊下にでる。異世界で初外出ですよ(部屋から出ただけ)。
廊下は、部屋と同じくそこらかしこに豪華な装飾が施せれている。映画で見た貴族の家みたいだね。というか、本当に貴族の家なのかもしれない。
それにしても、大きい家ですねぇ。私が前世で住んでいた家は二階建ての一軒家だったけれど、それと比べるのは失礼なくらい大きい。
長い廊下をアンナさんに抱かれながら移動していると、他の扉よりも一際大きい扉があった。
そして、アンナさんはその前で止まる
「失礼します。ノアお嬢様をお連れしました。」
ノックをした後アンナさんが、部屋の中に呼びかけると
「うん、入って」
中から優しくて静かな、だけど良く通る男性の声が聞こえてくる。
両開きの大きな扉を開けて中に入ると、
大勢の使用人風の人達と、お母様。そして静かな雰囲気のイケメンに迎えられる。
「「「ノアお嬢様、お誕生日おめでとうございます」」」
「おめでとう、ノア」
「おめでとう」
凄い。こんなにたくさんの人に一度に誕生日を祝われるのは初めてかもしれない。
イケメンさんはやっぱり私のお父様っぽいね。
私は、アンナさんからイケメンさんに渡される。イケメンなお父様に抱かれた私は内心テンションがすっごい上がっている。
だって、イケメンに体は1歳児だけど心は女子高生が抱かれてるんだよ!顔近いし恰好いいしいい匂いだし。
お母様も美人だし、これは私の将来は美少女で決まりだね。
お父様は、黒髪黒目なのでとても親近感がわく。ピンクとか青みたいな奇抜な髪色の方はアニメだけで十分です。
優しく頭を撫でられる。うっとりですよ。そりゃあ、もう。1歳の赤ちゃんで良かった。初めてそう思った。
…………。
優しげに微笑みながら私を愛でるお父様
それを優しく見守るお母様
さらにそれを微笑ましそうに見ている使用人の方々
………………。
…………………………。
何だ、穏やか世界は。誰もしゃべらないんですが。誕生日パーティーってもっと盛り上がるものじゃないんですかね。すっごい静かなんですけど。
いや、いいんですけどね。あんまりシーンとした空間が好きでないというか
「あーうー。」
暇なので声を出してみる。うまく喋れないからね、日頃から喋っとかないと。
「パ、パァ」
よし、うまく言えた。さっきのような失敗はしない。私は学習するのだ。
私の言葉を聞いたお父様は、少し驚いたあとすぐに笑顔になる。
イケメンの笑顔……眩しい。
「凄いな、もう言えるようになったのか。偉いぞ、ノア。」
やっぱり、この世界だとまだ喋れないのが普通なんですね。褒めて貰えましたよ。
「さっき、私のこともママって呼んでくれたんですよ。」
嬉しそうにお母様はお父様に報告する。その前の出来事は言わないんだね。良いけどね。
お父様とお母様に愛でられてる間、私は部屋を見渡す。
……凄く、豪華です。普通にシャンデリアがありますよ。やっぱりお貴族様なんですかね。お城みたい。いや、お城なんでしょうね。実際。
それにしても、本当に良い所に転生したね。家族も優しいし、私のことを愛してくれている。身分も高そうだから生活の心配もしなくていいし。
初っ端にバトルに巻き込まれて初日から軽い女を引っ掛ける転生よりもずっと良い。
「うん、じゃあそろそろお願い。」
お、なんですかね。そろそろ私、お腹空いてきましたよ。
お父様が声をかけると何人かの使用人の人が部屋の外にでる。
しばらくすると扉が空き、たくさんの料理が運ばれてきてテーブルに並べられる。
やっぱりパーティーはこうでないと。食べ物はフランス料理っぽい豪華なもので見たことのないものも混ざっている。
椅子に座り料理を囲む。私は、お父様の膝の上です。イケメンの膝の上……勝った。
何にだよ。
当たり前だけど使用人の人は一緒に食べないんだね。囲まれて見られながらの食事は緊張するけど慣れるしかないんだろうね。
食べる前にプレゼントを貰った。クマのぬいぐる……きぐるみ?いや、巨大なぬいぐるみか。
その後、お父様に料理をドキドキしながら食べさせて貰ったりしながら静かにパーティーは終わりを迎えた。
子供の前でイチャつくのはやめましょうよ、お二人さん。聞いてるほうが恥ずかしいです。
ーー私は、死に。そして転生した。
この世界で、私の人生は続いてる。
何があるかわからないし、誰と出会うのかもまだわからないけれど
見たことがないものや、知らないことに出会い、
大切なものが出来るかもしれない。
前世のことを忘れるは出来ないけれど
ここで、生きて行こう。命ある限り
そう思った。
プロローグ終了です。次から1章です。お付き合いいただけると嬉しいです
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