~屋根まで飛んで壊れて消えた~
「ふ~ん♪ふふ~ん♪ふんふ~ん♪」
今日は金曜日。部活に入っていないため、明日から完全に休みな私は上機嫌で家路についていた。
「ちょっと!鹿波危ないよ。降りな!」
道路の縁石にのり、両手を広げバランスをとりながら歩いていると、隣りから注意される。
「大丈夫だよ~。そんなに心配しなくても。ほら、見よ。この圧 倒的な安定感!」
心配をしてくる彼女に私は、縁石の上で荒ぶる鷹のポーズを披露し安全性をアピールする。
「だから止めなってば!ったく。普段から私の見てないところでも、色々やらかして心配かけてんだから。一緒にいる時ぐらいは大人しくしててよ。」
「し、失礼な。いつ私が美奈に心配かけたって言うのさ。」
心当たりがありすぎて強く言い返すことができないぜ……。素直に縁石から降りるべきなんだろうけれど、正直少し縁石の上を歩くのが楽しくなってきている。なので、そのまま続けていると
「珍しく部活がオフだからって、一緒に帰ってあげてるのにこれだよ……。鹿波は。だから彼氏出来ないんじゃないの?」
な、なんと失礼な。
「じ、自分がいるからってぇ。見てください!皆さん、これがリア充のヨユーってやつですよ!」
立ち止まり、車道に向かって両手を大きく広げながら呼びかける。道行く人達に奇異の目で見られるが気にしない。そのまま体の向きをかえ歩道に向かって呼びかけようと--
「え」
「ちょっとっ!?鹿波!」
縁石を踏み外し、道路側に倒れこんだ。そして、そこに車が迫ってくる。
「うわっ」
急いで立ち上がり車を避けるも、さらに道路に入り込んでしまう。
「早くっ!戻ってきな!」
歩道で、美奈が私に必死に呼びかけてくる。
「分かってるよ!っと、危なっ!」
それに応える間にもう一台、車が来たのを避ける。そのまま歩道側に急いで戻ろうとする。
「鹿波っ!早く、後ろぉっ!」
「え?」
後ろ?つい、立ち止まって後ろを振り返ってしまう。そこには明らかにスピードのおかしい車が物凄い勢いで私めがけて突っ込んできていた。何とか歩道にたどり着こうとするがーー
次の瞬間、私の体は空高く舞い上がった。そして、そのまま地面に叩きつけられた。凄まじい衝撃が体中を襲うとともに、何かが潰れる嫌な音が聞こえる。
「鹿波ぃ!」
美奈が私にかけ寄ってくるのが足音でわかる。
「み、な……」
激しい痛みの中、だんだんと意識が薄れてくる。側に来た美奈に残る力で手を伸ばす。
「かな、かなぁ……」
伸ばした手を握りながら美奈が私を、小学校以来呼ばなくなったあだ名で呼ぶ。そして、徐々に幼稚園からの幼なじみである親友の顔も見えなくなってくる。
「う、あ……」
何も見えなくなり、自らの死をすぐそこに感じる。死にたくない。いくらそう強く願ってもどうする事もできない。
遠のく意識の中、美奈の手を強く握る。だが、その力も弱くなっていき感覚もなくなる。
ありがとう、ごめんね。そう、伝えたかった。
心を満たす無力感の中
ーー私の意識は途絶えた。
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