このア法使いが!!
「__おい、俺は何をすればいいんだ?」
ついさっき来たばっかりの異世界を見渡しながら(一応)魔法使いのティアと歩いていた。
こうして意味も宛てもなく歩いていても日が暮れるだけだ。
「うーん…そうですねぇ~、特に何も考えてなかったので。 じゃあ冒険者にでもなります?」
「いやおい、なんだよその軽い感じ。これでも一応現代での生活捨ててきてやってんだぞ?
何も考えてなかったとかな…」
「はいはい!ギルドに行きましょう!ギルドに!」
「お、おい!」
そう言って俺はギルドに連れていかれた。
ギルドはとても広く、木でできた温かみのある建物だった。
朝から飲んだくれた冒険者たちに忙しそうに定員さんが食べ物を配っている。
ぎっしり並べられているテーブルを避けて奥に進んでいくと、
やっと受付が見えた。
「すいません、この人が冒険者になりたいそうです。」
それを聞いて受付のお姉さんがほほ笑む。
「まず、職業を選んでもらいます。最初に選べるものはこちらです」
メニュー表を見ながらティアとうなる。
「どうしよう…ナイトとかプリースト…いろいろあるんだな」
「そうですね、結構種類が多いです…私は親がどっちも魔法使いなので、
即決でしたからね。きちんと見たことなかったんですよ」
「職業ってそんな軽い感じで決まるのか…?」
「けっこうそういう人は多いみたいですよ?」
異世界と日本ってたいして変わらないように思えてきた。
「あっ!プリーストで援護してもらえると助かります!」
「そうか、じゃあプリーストでお願いします」
「かしこまりました。」
パソコンのようなものに何かを打ち込んでいった。
「では、そこの石に手をかざしてください」
「?はい…」
石に手をかざして何が起きるのだろうか…。
そう思いつつも手をかざす。
「はい、大丈夫ですよ。これでカードが出来ましたよ」
「カード…ですか?」
「これはレベルや覚えているスキル。…その他もろもろを記録してくれるカードです。
スキルを覚えるのに使ったり、依頼を受けるのにも使うので絶対なくさないようにしてください」
お姉さんからカードを受け取った。
言われた通り、いつとったのか分からない顔写真とレベル、職業が書いてある。
こういうものをもらうと冒険者になったという実感がわいてきた。
これで俺も冒険者デビューかぁ!
なんか現実で普段通り学校に行って、勉強する生活より意外とこっちの方がいいかもしれない、
なんて思ってしまう。
「よし!さっそく依頼を受けに行こう!」
「のってきましたね!ゴブリン狩りぐらいならできると思いますよ!」
そんなことを言ってノリノリでゴブリン狩りに行ったものの…。
「お前、魔法どこに放ってんだよぉ!!ぐほぉっ!」
「そんなこと言われてもっ!『アクアホール!』そっちに行っちゃうんだから
しょうがないじゃないですか!」
ティアの魔法がことごとくあたらない…というか俺にあたってるんだけど!
「うっ!し、死ぬ!俺…」
「トウマさん、死なないでください!今日はここまでにしましょう」
そうしてゴブリンを一匹も狩ることができずにギルドへ戻ってきた。
「__でなんで俺にばっかあたるんだよ!お前何やってんだ!?
俺死ぬところだったんだけど!」
「し、知りませんよそんなの!というかそれのための修行なんです!」
ティアにヒールをしてもらってひん死状態を回避した俺は、ティアと街を歩いていた。
「え?見習い魔法使いから卒業するためじゃないのか?」
「…そうですね、少し昔話をしましょうか」
そう言ってティアはしんみりとした顔をしてこんな話した。
「今から少し前、私はかなり優秀な魔法使いだったんですが、
覚えたてのすごい魔法を使いたくてそこらへんの木に向かって放ったんです。
そしたら…真後ろの城にあたってしまって。飛んだ破片が目に入って大けがした
もんですから城に乗り込んでいったんです!でなぜかばれたんですよね。
命はとらないから、見習い魔法使いに降格させる。って言われて…。」
こいつバカだ。
「このア法使いがぁ!!」
「アッ!ア法使い!?」
「お前魔法を命中できないとかふざけた事言ってんじゃねーよ!
ゴブリンぐらい狩れるんじゃないのかよ!?」
「そ、そんなこといいました?」
「言ってた!このままじゃ俺に被害が及ぶんだよ!?
これじゃ修行もクソもないじゃないか…。」
「なんとか解決方法を探しますから…。怒らないでくださいね?」
怒った俺におどおどしながらティアが話しかける。
日本で暮らすよりこっちの方がいいとか思った俺がバカだったんだ。
…日本に帰りたい。早くもそんなことを思っていた。
__次の日。
「そこでもくもくしてるのなんだ?」
昨日からずっと気になっていた事を聞いてみた。
ティアの隣にひっついている…くもみたいな生き物についてだ。
顔くらいの大きさをしたその生き物はふよふよとティアの隣に浮いている。
「ああ、くものことですね。この子はくもです。悪魔ペットショップで
店員さんを困らしていた魔ペットで、0円で譲ってくれました」
「そ、そうか。」
どんな反応すればいいんだよ。
「えっと…くもだよな?よろし…。」
くもから大量の水をぶっかけられた。
「俺何かしたか!?何もしてないよな!?」
「ああ、たぶん話しかけない方がいいと思います。
嫌われてますね」
「何もしないで嫌われるのかよ!」
「一目見たときから敵対視してたっぽいです」
「…。」
「私の魔法を手伝ってくれる大事な相棒ですからね?
睨まないでくださいよ!」
俺たちは魔法を命中させられないア法使い、ティアのために
魔道具屋で、助言をもらうことにしたのだった。
「__で、いつになったら着くんだよ!」
「ちょっと待ってください!えっと…ここをこう行って…。
あれ、おかしいな行き止まり?」
「おい!貸せ…。反対側だよ!お前どんだけ方向音痴なんだ!?」
やっと待ちに待った店の前に着いた。
ドアを開けて中に入る。
「!?…い、いらっしゃいませ!」
びしょぬれの状態で来るお客さんはなかなかいないんだな。…当たり前だけど。
「トウマさん、そこで止まってないで店長さんに会いに行きますよ」
「え?なんで店長の必要が…ちょっと待てよ!」
あわててティアのあとを追いかけると、
そこに白いひげをはやした優しそうなおじいさんがいた。
背中がピンとしていて元気なのが分かる。
「店長さん、お久しぶりです」
「おぉ、ティアさんか。よく来てくださったな。
…あそこにいるのはどちらさんかね?」
「あの人はトウマさん。私の修行を手伝ってくれています」
「よ、よろしくお願いします。トウマです」
俺は慌てて頭を下げた。
このおじいさん異常な貫録があって少し緊張してしまう。
「よろしくな、トウマさん。私はウィゴーだ。
…それで今日は何の御用かね?」
「私の攻撃があたらないのは知っていますよね?」
「ああ…そうだな。」
少し苦い顔をしてウィゴーさんが頷く。
「それで、トウマさんがいるとすべての魔法がトウマにいってしまって…。」
「ほう…、もしかしたらトウマさんに魔法を吸収する力があるのでは?」
「お、俺に魔法を吸収する力が?」
「うむ、有効利用すればかなりの力だ。」
そうか…!俺は昔から運の悪いことに巻き込まれたりすることが多かった。
(今がその状態)
でも単純にそれは運が悪いだけではなくて、吸収する力があったからだったんだ…!
「ん?そういえばちょうどいい武器があったような…。
おい、あれ持ってきてくれないか?」
店員さんに何か耳打ちするとすぐ、ティアが持っているのと似たような
杖が出てきた。
「これは自分に来た魔法を敵にあてたりできる道具だ。普通の人には
ただの防御にしかならんが、お前は攻撃として使える。
どうだ?持って行かないか?」
「いいですよ!トウマさん!ぜひ買いましょうよっ!」
掴みかかってくるティアを引き離して大事なことをきく。
「失礼ですが…お値段は?」
はっきり言って今の俺たちはゴブリンさえも倒せない超弱小パーティーだ。
お金などない。
「ああ、もともと売れなくて捨てようと思っていたものだから、
あげるよ。その代わりこれで敵をたくさん倒してくれ。いいね?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて店長さんが聞く。
「「はい!もちろんです!」」
俺たちは気づいたらそう答えていた。
「行ってよかったな!ホントいいおじさんで良かったよ!」
そんなことを言いながら、杖をすりすりする。
あの後俺が濡れてるのを見て、魔法で
「私がなんであそこに行ったか分かりますか?
あの人は昔とても高名な魔法使いだったんです。私の父の師匠と
言ってもいいひとですし」
「そ、そんなすごい人だったのか…。」
まあそれだったらあの貫録があるのもわかる気がする。
「じゃあ早くゴブリン狩りの続きに行きましょう!」
「分かった!次はいける気がするな…!」
__そしてゴブリン狩りが始まった!
「いきますよ!トウマさん!」
「おう!」
『アイススピア!』
…来る!
杖を敵の方に振って!
『反撃!』
一匹のゴブリンに見事命中した!
「いい感じです!この調子で次も行きましょう」
「分かった!」
『タイダルウェイブ!』
次も…!っておい!!
「大量の水が流れてきてんだけど!?」
「早く逃げてください!津波に襲われますよ…」
いきなりティアがパタッと倒れた。
「ど、どうしたんだ!?」
「魔力を使い果たしました…。運んでください…。」
「はっ!?ああ、もう!」
魔力を使い果たして倒れているティアをおんぶして津波から逃げる。
ゴブリンたちが津波に足を奪われて飲み込まれていくなか、
必死の形相で走っていった。
「お疲れさまでした。本日の報酬です」
受付のお姉さんから報酬を受け取った。
ゴブリンを無事倒せて、今日は報酬をゲットすることができたのだ。
札束を手にしたのはこのときが初めてだ。(当たり前だけど)
「す、すごい。札束だ…!」
「それはいいですけどレベルを見ないんですか?
かなり上がってるはずです」
「レベルか?」
カードを見てレベルを確認する。
…レベルが3になっていた。
「レベルが低い冒険者ほどよくレベルが上がるんです」
「へぇ~、まあそれはいいんだが…。」
そう言って俺は自分を指さした。
「すげぇ寒い。」
さっきの津波に飲み込まれ、びしょぬれになったのだった。
__そんな毎日はあっという間に過ぎ、俺もそろそろ異世界に慣れてきた頃だった。
「緊急クエスト!緊急クエスト!冒険者の方々はギルドに
集まってください!」
「ん?せっかくゆっくりしてたのに…、なんだ?」
ベンチでゆったりコーヒーを飲んでいた俺たちは、街に突然流れ出した放送を聞いた。
街の住民たちがどよめきはじめる。
「あら!Gよ!今年もG出たのね…。」
「Gが…。とうとう現れたか!」
「ほら、みんな早く逃げるぞ!早く!」
みんなG、Gと騒ぎながら逃げていく。
え?Gってゴキ◯リの事?
なんでGにそれだけ慌ててんだ…。
「ちょ、ちょっと早く逃げましょうよ!Gに襲われたら死にますよ!?」
「は?お前何腕引っ張ってんの?俺昔Gすっごい倒してたぞ?
G倒すのなんか楽勝だよ!」
「うそっ!そ、そんなすごい人だったんですか!?」
青ざめた顔をしたティアは俺のことばに衝撃を受けて、あわあわしていた。
「とにかくギルドに行くぞ!杖に網を付けて…っと!ほら!」
自信ありげにいう俺を見て、ちょっとはっとした顔をする。
「…行きましょう!」
いきなり笑顔で言ったティアの様子が気になったが、まあいい。
今は、Gだ!
「__というわけでGを倒すのにご協力よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
何十人もの勇者たちがギルドに集まった。
みんなの異常なくらいの気合いで、ギルドが煮詰まっている。
「なぁ、Gってそんな大人数で倒すもんなのか?」
「…さぁ。」
「…。」
さっきからティアはこの調子だし、ホントにどうしたんだこの街は。
すると突然地鳴りがし始めた。…ほかのヤバいモンスターが来たのだろうか。
「Gだぞー!戦闘用意ーっ!」
急いでドアを開け、外に出た勇者たちは真面目な顔で剣を構える。
…っておい待てよ。Gって今Gって…。
「Gって…。Gってこんなにでかくて速い生き物だっけ。」
「何言ってるんです?この世界のGは…」
「__ゴットのGですよ?」
目の前にはゴキ◯リを何倍にもしたようなでかくて強大な『モンスター』がいたのだった__。
「お、おい、どうすんだよこれ!」
「だから、逃げましょうって言ったじゃないですか!!私は見てます!
トウマさんが勝手にやるって言い始めたんですよ?」
「ちょ、ちょっと!じゃあなんであの時言ってくれなかったんだよ!?」
「…。」
ティアは俺から目を離すようにそっぽを向く。
…こいつ後で締め上げてやる!
「とにかく、お前はG退治を手伝えよ!」
「うわぁぁっ!!やめてください!引きずらないでぇっ!」
なんとかティアをG退治に参加させた俺は、Gのほうを見た。
いまだに動きを止めないでジタバタしている。
「トウマさん、このGは毎回苦労して退治するのですがすぐ新たなGが
生まれてくるという危険なモンスターなんです。だからとっとと逃げた方がい」
「魔法を唱えろ!俺が魔法をあてるんだから!」
「聞いてます!?…もうしょうがないですね…。やってやりましょう!」
「よし!その調子だ!」
Gは今縄で抑えられているが、さっき暴れていたことによって民家が何件か
つぶれている。こんなのが前も来ていたのか…。
縄で抑えられたGに向かって、魔法使いたちが魔法を放つ準備を始めた。
そろそろクライマックスに近づいてきたようだ。
『ファイアーボール!』
『ウィンドチェイサー!』
『サンダーボルト!』
その魔法はGに向かって次々と放たれていく。
Gはその魔法を受けて痛手を…ん?
「あれ、魔法消えてないか?」
「私魔法放ったはずなのに!?」
「どういうことだよ!」
魔法使いたちがざわざわし始める。
…魔法が次々と消えてしまったらしい。
「あれ、どうしたんだろうな?」
「え、えっと…。」
ティアが指さした俺の杖の先には…
魔法が吸収されたときに放つ光が出ていた。
今にもあふれだしそうなくらい。
…俺は自分に不吉な能力(?)があった事を今はじめて気づいたのだった。
みんなが俺の方を見て一気にしずまり帰る。
魔法の威力の大きさを感じ取ったらしい。
『反撃っ__!!』
自分の力を全開に出して
魔法を唱えた…!
「__いやぁー、スッキリしましたね!あれ!」
Gを倒した数日後、俺たちはそれなりに普及された報酬を
持って、ほくほくしながら馬小屋に帰っていた。
あの後、魔法の威力によってGは飛び散り、無事Gを倒すことができた。
俺が魔法を吸収する力を持ってなかったらあの魔法の威力は
出せなかったということで、ちょっと多めに報酬をもらってきたのだ。
「これで家も買えるな!しばらくは休もう。この金で
少しは食っていけるよ。」
「そうですね、ちょっと疲れましたもんね!
今日は肉を食べてがっつり行きましょう!」
「いいや、ソフトに魚でいいと思うぞ?」
「肉ですよ!」
「魚だ!」
「肉!!」
「魚!!」
楽しそうに袋を抱えてかけていく俺たちを
周りの人たちは、痛い人という目で見ていた。
こんにちは!星里ひゆです!
今回はGを倒しに行くのがメインの話です。
書きなれていないもので、少し投稿が遅くなりました。
次話も見てもらえたら嬉しいです!
閲覧ありがとうございました!




