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紫の灯  作者: 志水燈季
来店
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8.色上

都築紫(つづきゆかり):このお話の主人公。かつて放浪し、灯の調理担当となる。

皆川円(みながわまどか):灯の接客担当。

荻田雅(おぎたみやび):灯の店長兼調理担当。

白石文人(しらいしふみと):水人の1人。文武両道で水人の学級委員を務める。

羽鳥満月(はとりみちる)藤原匠真(ふじわらたくま):共に水人の1人。


水人(すいびと):文人・満月・匠真が在籍するクラスの俗称。現在中学2年生。




 「で、紫さん。「色上(しきがみ)」の話は聴きました?」

 「……は?」


  先刻まで騒いでいた奴らの1人、羽鳥満月が突然こっちを向いたかと思うと……。

 ――今、何て言った?


 「……聴いてないのね。――よろしい!説明しましょう。父様が来るまで時間あるでしょうから」

 「これはこの街の基本的なことなの、紫君。覚えておいてね」


 「……はあ。」

  満月と円の台詞に圧倒され気味の俺はもう既に頭が回っていない……。



 「我らが住む県は、地域ごとに突出した様々な経済や文化がそれぞれに存在して。ここ木樹(こだち)は、学問と芸術の街ってね。それを一括してまとめているのは本来は行政なんだけど、この街は昔、すごい勝ち抜き戦というか……弱肉強食?というか……が、あったらしく数ある企業の、その中でも、ある4つの企業が他の会社を吸収して大きくなったの。今現在、この街は全ての企業がこの4つの会社の傘下に入っている訳。「色上」というのはその4つの企業をまとめて指す言葉よ」

 「つまり、平たく言えば他所(よそ)で言う「財閥」かしら。色上の権力は言わずもがなっていう感じで。この街って意外と権力を気にする人って多いのよ」

 「――そうなのかなあ……」

 「……まあ、1番気にする筈の人が気にしてないけど。だから、そんなに堅苦しく考える必要はないわよ」

 「……」


 ――満月の説明と、円の補足。解りやすいような……、解りにくいような……。えと……要するに……。


 「一部に凄い権力の持ち主達がいて、その下がいて、別れているけど、更には「そのこと」を気にする人と、気にしない人にも別れているって事か…?」


 支離滅裂な文章(ことば)で、読んでいる人は(他人が聞いても)判りづらいと思うが……俺が解ってないんだからしょうがない!


 ――なのに。


 「そう!その通り!紫さん、理解力良いねー!――ねえ、匠真?」

 「ああ。他から来た人たちは皆、?な顔をするんだがなあ。紫さんは別格だ。」

 「俺らからしたら、普通だけどな」


 ――あ、あのなあ。


 「言っておくが、俺はまだ理解した内に入ってない、絶対に!「寮」の事だって、「水人」の事だって!」

 「まあ、それはそうよね。これだってまだ氷山の一角みたいなものだし。「習うより慣れろ」ってとこかしら?――まあ、怒らないであげて。彼らは生まれた時からここに住んでいるんだもの。これが「常識」ってやつになっちゃっているのよ。私だってまだ一部しか知らないわ。ここに来てからまだ日が浅いんだから」


 ――そうなのか。随分水人(こいつら)と親しいと思っていたが。――って、氷山の一角ですか…コレ…。――何か、忘れてるような……。

 

 「それでね、1つ補足を加えると……」


  ゲンナリしている俺を前に、円はまだ、説明を加えようとしている。――はいはい、今度は何ですか。


 「水人は、生徒だけじゃなく、家族を含む周囲の人たちを含めて、そう呼ぶのもあるのよ。「水人生(すいびとせい)」と呼んだら生徒だけだけど。――それでね、その場合は権力を全く気にしないという意味もあるの、清々しいほどに。現に満月(トリ)ちゃんや、匠真君も色上の家の人たちだけど全く気にしていないのよ。水人って、こういう人多いから。まあ、気楽に付き合って」

 「改めて、羽鳥家の一人娘、羽鳥満月です。匠真とは色上仲間でもあるのー!」

 「……俺は、次男だけどな。だから、色上とか、どうでも良い」


  匠真の溜息混じりな自己紹介を横目に見ながら、文人は、


 「満月、テンション高すぎ。ただでさえひくネタなんだから。――ほんと、ある意味凄いが温嗣(ただし)さんも。――まあ、俺は色上ではないからな。ただの羽鳥の下にある会社を父親が経営しているってだけで。」


 ――え?

 ↑これは、どっちの意味か自分でも判らなくなってきた……。――すると、そこへ円が。


 「あ、そうそう忘れてたわ。灯も羽鳥の傘下よ。雅さん、とても仲が良いのよ。温嗣さんと。――いやあねえ。これが今日の説明の目的だったのに。でしょう、トリちゃん?」

 「そうですよ。今日、父様が紫さん見に来るって張り切っていたから。まあ、一応、予備知識として。説明長くなってしまいましたが、一応今の話は頭に入れておいて下さいね、紫さん。まあ、父様相手だと、そんな知識より余程料理の腕が見たいと言ってくると思いますがね」

 「そうだな、というよりそっちの方が重要なネタだと思うんだが?」

 「匠真君の言う通りね。まあ、気楽にね、紫君。温嗣さん、愉快な人だから」

 

  えー!!

  声にならない叫びを上げた俺。――いや、気楽って、愉快って。確かに満月たちは普通に接してくるが、これって異常だろ!言っちまえばここのオーナーみたいなもんの娘だろ。その上、本人って。気楽はちょっと……。


  ここで、俺は先刻忘れていた事に気付いた。俺はまともに面接を受けてない!ここで素性を訊かれたら、俺は……。何と答えれば良い?



 カラン

 「あ、温嗣さん、いらっしゃいませー!お忙しいところを。皆でお待ちしておりました」

 「やあ、円。満月が邪魔してるね、文人や匠真も。で、早速見せてくれないか、噂の料理人を。凄腕だと聴いたが」


  後ろ向きになっている俺を尻目に、その人はやって来た。今後多分に世話になる人は、灯の扉に付いているベル――あったのだ――を鳴らしながら。

 


  

ご無沙汰しました、志水です。長々と休んでしまいました、申し訳ない。実は色上などの事情をあまり考えずに書いていたもので……ツケが回ってきたというか……。いやはや、本当に申し訳ない。今回からはもう少し長く、早く書いていきたいと思っております。次はもう一人父親を出したいと思っております。今回少し出て来た……。

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