5、紫の実技
都築紫:このお話の主人公。放浪し、灯に辿り着く。
皆川円:灯の接客担当。
荻田雅:灯の店長兼調理担当。
「うわー、凄い!上手。雅さん、比じゃない」
「全くだ。引退しようかな」
好き勝手な事を……。――まあ、褒められて悪い気はしないが…。しかし……。
「うん。合格合格。明日からでも働いて!」
――んな、無茶な…。
という、俺の目を読み取ったのか、――んな、馬鹿な! というか常識だ!――円が言う。
「気が早すぎ、雅さん!まだ、何の説明もしてないんだよ?」
「流石だな、親父。買い物には便利なその潔い性格。人にまで、当てはめるなよ、――毎度のことながら」
円の横から口を出してきたこの青年。名を荻田司。雅の息子だと教えられたときは流石に驚いた…。
面接――とも言えないが――をしていたら、入り込み、大体の事情を聴き、「じゃあ、料理しろ!」と言って来た。あれよあれよという間に、とりあえず作らされたのが…。
「美味しい、炒飯!このパラパラ加減が…、絶妙!」
試食を務めているのは、円。
「円はね、この3人の中で、最も舌が肥えてるんだよ。」
解説、司。――道理で、いきなりカウンターの椅子に座っていた訳だ……。
「うん、円のOKも出たことだし、――で、いつから働く?」
名前といい、日付といい、一心不乱な性格だな、この店長。他のことは気にしない。
「僕らとしては、いつでも歓迎です。」
「いや、司君、君が言ってどうする。僕に言わせてよ。」
「そうだよ。せめて私!でしょ!」
――この3人何なんだろう……。いきなり、無銭飲食未遂な奴を雇うのに、誰も反対しないのか!
平和な奴らだ……。
そう、思った俺は思わず言っていた。
「良いっすよ。別にいつからでも」
「「「……」」」3人沈黙。
――何で、黙るんだ!!やっぱり言わなきゃ良かったか!
「――あっ!もう消えた。惜しい!」
最初に口を開いたのは、円。――っつか、何が?!
「うーん、中々貴重なものだな……」
これは、雅。腕組みまでしてる。
「え、やっぱり?写真、撮っときゃ良かった、紫君の初写真」
後悔まで、始める司。――へ?俺の写真?っていうか、今……。
「え!ずるい!名前知ってるの?」
円…。そういえば、教えてなかったか、こいつには。なにしろ、即、料理。だったから、そんな暇も無かった。――教えておくか。隠す理由も無い。
「都築紫。都、築く、紫。で、つづきゆかり。調理担当志望」
円は、一瞬驚いた顔をしてみせたが、すぐに微笑み、
「接客担当の皆川円です。都築紫君、家庭料理食堂、「灯」へようこそ!料理、笑顔、共に素敵でしたよ。」
灯って、ここの店の名前だったのか…。そんな感じはしてた…。っていうか、俺笑ってた……!?
「だから、円、それ、俺の台詞でしょ!もう、2人して、俺の気持ち代弁するんだから…」
雅の主張は最後まで無視され続けていた。
そういえば、灯が店の名前だって、書いてなかったような気が…。人名の次は店名…。何だか書きそびれていました…。とにもかくにも、ここまで読んで頂けてありがとうございました。
今回から「登場人物紹介」という立派なものでもないですが、入れていきたいと思います。次からは司も入りますね。よろしくお願いします。