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紫の灯  作者: 志水燈季
過去
25/57

25.高校生から見た関係者

都築紫(つづきゆかり):このお話の主人公。かつて放浪し、(ともしび)の従業員となる。

荻田雅(おぎたみやび):灯の店長兼調理担当。

荻田司(おぎたつかさ):雅の息子。

皆川円(みながわまどか):灯の接客担当。本名は南雲(なぐも)


羽鳥温嗣(はとりただし):この街の一応お偉方のトップ。

白石史音(しらいしあやね):雅たちと旧知の女性。




「へー、じゃあ()だ聴いてないんだ? 雅さんの誘拐」

「ああ。訊いたには訊いたけど、そんな時間は無かった」

「――今日、ここの開店時間が遅かったのは、それが理由か」

「……申し訳ありません」

「ん? 別に責めていませんよ。訊いただけです。全く、アスカは言い方がきついんだから」

「ノゾミ、フォローは有り難いが、もう少し控えめにしてくれると尚良い。俺の茶を返せ」


 4月1日土曜日の午前。家庭料理食堂――だったか?――灯はいつも通りの喧騒に包まれていた。

 だが、高校生と思われる2人組――何故なら、藤原達人(ふじわらたつひと)が着ていた緑系のネクタイを付けた制服と同じ格好をしているからだが――に指摘されたように、今日は30分程遅れての開店となっていた。


 その原因はもちろん、あの人――葛西湊(かさいみなと)の来訪だった。


 いつも、あの人が去ると、俺も去ることが決まる。そして、同じ場所へは2度と戻らない。

 ……どんな時でもそのパターンだった。


 それが――、


 

 トントン。


 ノックの音がして、振り返ると見たことのない、地味な男性が立っていた。


 その姿を認めた史音が、「あれー、可純(かすみ)さん。どうしたんですか?」と尋ねると。

 その男性は、苦笑しながら。


「どうした、じゃありませんよ、史音さん。戻らないと思っていたら、まだ灯にいたんですか? もう半ですよ。というより――」男性は店内を見渡し、


「まだ、開いてないんですか?」

 と、訊いて来た……。


 

 それからは大わらわだ。何しろ俺はまかない飯――開店前に、雅が作る朝食――を食べてすらいなかったのだから、「ほら早く!」と急かされるまま冷えたそれを食べさせられて、何か言おうと思っても準備に勤しむ方が優先で。


 全く。どうしてこいつらはそういう事に(うと)いんだろう。

 「いつも、いつも……」それがこいつらには通用しない。


 いつも、いつも。不審な目を向けられて。やっと雇ってもらっても、あの人が来て。ばらされて。追い出されて。冷たい目で見られて――。


 それがいつものことだった。


 それなのに。

 あの人が来て、あの人がいつもの話をして。そこだけいつもと一緒だった。

 それが、

 最初から違っていて。そして、今回もいつの間にか、話が変わっていた。

 俺の「殺人」の話がまるで重要視されてない――。


 そして、もう1つ――。


「ところで、雅の「誘拐」って、やっぱ皆知ってるのか?」

 カウンターに座り、先程から俺に話を聴いてくる高校生2人――。愛想がえらい違い、互いの呼び名から愛想が良い方が「ノゾミ」、仏頂面が「アスカ」らしい。名も訊いてないので、呼び名からしか判断しようがないのだが。因みに2人とも男子高生だ。――これもいつもと違うところか……。


「ああ。有名だからね、この話は。ここが出来たのと前後してのことだったし……。大人たちは一時期騒ぎまくってたような記憶が……。そこら辺のことはよく覚えてないですけど」

 答えたのはノゾミの方だ。…それはそうか。

「まあ、10年前じゃなあ……」今現在高校生じゃ、当時は小学生になったかならずかぐらいの年齢(とし)だろう、この2人も。

「いかにも雅さんらしいですよね、今考えると」

「おまけに羽鳥温嗣も絡んでるということだしな」


「え…羽鳥温嗣もこれに絡んでるのか!?」

 言葉少なにしては、アスカの言葉は聞き逃せないものばかりだ。


「……はあ。そうですよ。だから、表立っての非難は出来ないんですよ、誰も。あの人を非難出来るのは、あの人の味方だから」

「確かに、雅さんと温嗣さんが組めば、もう色んな意味で天下無敵。基本同類だよね、あの2人。成し遂げちゃうんだから」

「そういえば俺も、あいつも――立場は同じだったな。家族が居ないという意味では。それが公然の秘密どころか逆に周知の事実だし」

「僕がマシに思えて来るな。いることはいるから。隠してるだけなのに。まあ、確かに彼は素性が判らないし、君は亡くしてる。彼も亡くしてる可能性があるかも知れないし、まあ、引き取られた先が恵まれたと思うかどうかは本人次第。その点彼は稀に見る幸運の持ち主だったかな」

「弟に感謝しろよ。俺は恵まれなかった方に入るな。世間はそう見ないだろうし、むしろ、奴の方が恵まれなかった方に見る。それが普通だ。お前が普通じゃない」

「つまり、君も普通じゃないということだな」


「な……なあ、誰のことを言ってるんだ?」

 2人で進む会話。一瞬、俺の事かと思ったがそうじゃない。だが、ノゾミが「改めて本人に聴いた方が良いと思う」と言い、更に、話題を変えたため、結局答えは得られず(じま)いだ。やっぱりか……。だが――いつ聴ける?


「あのう、円さんの苗字が実は「南雲」だったって本当ですか?」

「そうだよ」


 それは知ってるんだよ、昔から!

本当、いつ聴けるんだろう……次回、絶対次回入れます。頑張ります。

さて、今回の高校生2人組は脇キャラで、また出る……予定です。作者もとにかく予想が付きません。でもこういう脇キャラの裏設定考えるの好きですね。だから話が進まないんですがね……。

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