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紫の灯  作者: 志水燈季
過去
24/57

24.誘拐と…詐欺と…

 都築紫(つづきゆかり):このお話の主人公。かつて放浪し、(ともしび)で働きだす。

 荻田雅(おぎたみやび):灯の店長。

 荻田司(おぎたつかさ):雅の息子。

 皆川円(みながわまどか):灯の接客担当。


 葛西湊(かさいみなと):突然現れた円の叔母。紫を知る。

 白石史音(しらいしあやね):雅たちと旧知の女性。




 さすがに全員驚愕している。


「お……おい、親父」

「だって、事実だろう?」雅は素知らぬ顔で司を見ながら飄々と答える。

「い……いや、それは……事実だが……」


 この司の動揺を隠せない声に、葛西湊も紫も更に驚きを増した顔をする。


 まあ、あとの2人――史音と円は「あーあ」といった悟った顔になっていた。



「じ…事実なん…ですか?」

 

 湊も紫も、半信半疑だ。

 雅の性格を知る紫は、冗談ではないか、と疑っているが、逆に雅の性格を知らない湊は、こんな風に重大な事実を言えるものかと疑っていた。


 そして――


「事実ですよ。丁度、この店を開く直前でしたかねえ――ああ、つまりもう10年程前になりますねえ。当時小学生と思われる他人の子を「誘拐」してきたんですよ。勝手に」


――ああ、本当なんだ……。

 

 その横柄な態度から逆にそれは事実だと2人とも思ってはいた――。


 だが、動揺する湊が何とか発した問いに、雅が重ねて自身が犯した「誘拐」という犯罪を「自白」した。それは万が一嘘だったとしても、信じてしまうようなそんな口調であった。


「そうだったんですか……。驚かされてばかりですわ、貴方には。それでよく警察の手を逃れましたね、どうやったんです? まさか都築君のように、証拠不十分とか?」

「ああ! ほぼそうですね。運が良かったと言えるんですかねえ、まあ、いつかあの子の本当の親に訴えられる日が来るんじゃないかと思っている……んですよ」


「それはそれは。フフッ。つまりこのお店は、「灯」は、最初から犯罪者が料理を作るお店だったんですねえ。道理で驚かれないこと」


 葛西湊は笑みを深め――


「フフッ、これで安心しましたわ。()が何をしなくとも、勝手にこのお店は――もう先が見えているんですもの。そうでしょう?――貴女もそう思いますでしょう?」


 ゆっくりと向きを変え、その不敵な笑みを浮かべ、赤と黒に彩られた華美な衣装をまとった女は、まるで違う、うすい灰色のスーツに身を包んだ女へと同意を求める。その姿は、まるで不釣り合いな図として他の人間たちに写った。



 笑みを向けられた女は、少し伏し目がちになりながら応えた。


「本当に、そうですね――」


 満足な答えを得た女は、勝ち誇ったかのように言葉を続ける。


「見たところ、貴女常連客のようね。ということはこのお店を知る人――そのような方にそう思われているのなら、間違いありませんわ。私によって評判が変わるということはないようね。最初からこのようでは」

「ちょっと、叔母さん!」


 円が怒鳴った。今の一言に腹が立ったのだ。

 完全なる侮辱だ。雅のおかげで多少は緩和されていたが、円はこの数十分間我慢してきた怒りを遂に叔母に向けていた。


「いい加減にしてよ! 灯を侮辱しないでよ!仮にも私の職場を――。紫君のことだってそうよ。大体何で叔母さんが紫君のことを気にするのよ。紫君が何したかなんて叔母さんにどうして関係があるの。そりゃあ私は紫君のことなんて何にも知らないし。殺人犯ていうのも信じられないけど。でも!叔母さんが、他人が勝手に話す内容じゃない――」

「他人じゃないからよ」


 叔母の一言が、姪を黙らせた。「どういう意味?」と戸惑う円に、更に続ける。


「あなた――本当に覚えていないのね。どうして――自分の母親が亡くなったのか。どうして――私が独りになったのか。あなた、本当に覚えていないのね。あの頃――何があったのか。あれが元で、私はこんな活動をしているのに。あなたはきれいさっぱり過去を忘れて、生きているのね。亡き母親の姓すら変えて」

「……」


 動揺する姪を眺めながら、叔母は首を振り、言った。


「ここの店長さんが、誘拐犯だということになるなら、あなたはさしずめ――詐欺か、偽造かしら。「皆川」という姓を名乗るなんて。父親の籍に入ったというなら話は別だけど。それはあり得ないわね。――ねえ、どうして? どうして姓を変えたの? 「南雲(なぐも)」を何故捨てたの? 母親の姓を――私の旧姓を」


 答えない姪に、叔母は呆れたような表情を浮かべ、では、お邪魔いたしました。お仕事頑張って下さいね。とだけ言い残し去っていった。



「ふー。本当に私は灯は潰れないと思うけどなあ」

「うわー、そういう意味だと分かってはいたけど、なんかヒヤヒヤしたー」

「どうしてー?」

 湊が去った後、史音は椅子に座りながら先程の湊との会話を思い出す。本当に、きらびやかな服だったなあ。自身のスーツを見ながら思い出す。

 司も机にもたれかかる。やっと息をついた。そんな感じだった。


「円」

 今なお、青白い顔を浮かべ下を向く彼女の頭上に声と共に、ポンッと手が置かれた。

 それが自分の許に寄ってきた雅だと、円はすぐに判ったが顔を上げられなかった。

「ごめんなさい。嘘ついて」


 涙は見えないが声が泣き声に変わっている。そのことに全員気付いたが、何も言わずに待つ。


「叔母さんの言う通り、苗字変えたら変わるかな……って。過去を消したくて。事実――消えてるし」


「まさか、円が1番動揺するなんて」声を発したのは紫だ。彼もまた椅子に腰を下ろしていた。

「俺にとっては、円の姓より雅の「誘拐」なんだが。あれは何だ?」


 もう悟りきった表情の紫だった。



何がメインなんだか、この物語、正直判りません。紫のことより雅を優先、と思ったら円が最優先で、(しかも半分強引に)終わってしまいました。

とりあえず、円と雅を早く収拾つけたいです。でないと、紫に行かない~。

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