0.青年と呪われた少女の回想譚のはじまり
ようこそいらっしゃいました。
これから私がお話しするのは、このあたり一帯を治めていたベントリー伯のとあるお屋敷で、私自身が見てきたことです。
一番古いことになりますともう17年以上も前の話になりますので、そのすべてが本当にあったことであるとは私にも保証できないのですが……。しかし今からお話しすることのほとんどは実際にあったことで間違いありません。
――私が告白する意義、ですか?
ええ、ご存じのとおりベントリー伯は先の戦争で血筋が途絶え、もはやお世継ぎもいらっしゃいません。あの広大なお屋敷もまもなくお取り潰しになるでしょう。私のようにあのお屋敷に隠されていた秘密を知る者も、ほとんどいなくなってしまいました。もともとが少なかった、というのもありますが、それと同様に消されてしまったり、病や戦争で死んでしまった人もいたでしょう。そして私自身、かつての同僚と道をわかって、こうして秘密を抱えながら寂しく生きていくのが辛くなってしまったのです。――わかりませんか? たとえ今、わからなかったとしても、いずれあなたにもわかるときが来るでしょう。
……前置きが長くなってしまいました。それでははじめましょうか。
繰り返すようですが、このことは他言無用にお願い致します。もっとも、広めようとしたところで、いかほどの人が信じてくれるものか、私にもわかりかねるところですがね。それとは関係なく、私はこの物語を広めてほしくはないと、そう強く願っているのですから。