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#20
「もうそろそろ起きてもいい時間じゃないかしら」
女が枕元で呟く。
僕は大きなあくびをしてみせた。
「もうお昼の1時よ。年寄りのおじいちゃんじゃあるまいし」
女の皮肉っぽい嫌味に、僕は聞き捨てならんと横目でちらっと女のほうを見た。
「なんだって?」
「なんでもないわ。さ、はやく起きなさい」
彼女はフランシア。彼女こそこ理想郷(アルカ―ディア)を生涯懸けて求めた女。そして、僕にとって最大の敵。
「君がここにいるってことは、ここは夢の中か?」
「どうやらそのようね」
「何故――――――」
僕は固唾を呑んだ。
「何故あの時、僕を止めてくれなかったんだ?」
フランシアはなにも語らなかった。
「どうして君は……」
目の前が暗くなっていく。僕はとてつもない絶望感に襲われた。
「もう手遅れよ。なにもかも」