#19
まさかこんな真夜中に来るとは思わなかった。
そうか、奴らはロボットなんだ。昼、夜なんて関係ない。
トーニョは鉄パイプで必死に抗戦していた。
奴らは頭を砕かないと死なない。くそっ。誰なんだ!!こんなロボット作った奴は!!
「蓮、後ろ!!」
スノーにそう叫ばれて、気づいたときには、アンドロイドは床に倒れていた。
トーニョが鉄パイプで頭を殴ったおかげだ。
僕は、トーニョに礼をいうと、素早く車に乗り込もうとした。
「ねえ、懐中電灯を持ってきて!!」
そう由梨にいわれ、僕は隣の部屋に駆けこんで、部屋中を所構わず調べた。
机の引き出しに懐中電灯があり、僕はそれを腕に抱えた。
そのときだった。扉が急に閉まる音がして、僕は驚き、慌ててドアの向こうにいる人間に助けを求めた。
が、誰も応答しない。おいおい、まさかそんな……。
僕はここへきて初めて、あの男女に上手く騙されたということに気がついた。
「くそっ」
僕は悔しさのあまり、ドアを思いっきり蹴った。
ドアは鈍い音を立てただけで、びくともしなかった。
「おい、蓮は?」
スノーが訊いてきたとき、トーニョは初めて蓮がいないことに気がついた。
しかし今助けに行くのは無謀と思われた。
すでに車は、7、8体のアンドロイドに囲まれている。
それを追い払うだけでも精一杯だ。
ようやく、車のドアが開けられる状態になったが、それでもアンドロイドたちが襲ってきて、なかなか車の中に入れない。
すると、グレイが小型の銃を発砲した。
「なんだ、銃があったのか」
「4発だけ残しておいた」
「なるほどな。さ、早く乗れ」
トーニョは皆を急かした。
グレイ、由梨、譲司、スノー、トーニョの順に、車に乗り込むと、運転席のトーニョは車のアクセルを勢いよく踏んだ。
猛スピードで走りだした車は、アンドロイドを撥ね退けていった。
「……っ。くそ……」
何度試みたが、ドアは開かなかった。
このままでは奴らが入って来る。そうなると二度と出れない。
スノーたちは?きっともう遠くに行ってしまっただろう。
しかし、あの譲司と由梨は要注意人物だ。わかっていたはずなのに……。
自分の鈍感さを責めながら、僕はここから早く出なければという焦った。
ガシャンッ――――――――――――
僕は息を殺した。
奴らか?それとも……。
ガシャッ、ガシャガシャッ――――――――――――――
扉が……開いた。
僕は近くにあった懐中電灯をぎゅっと握りしめた。
小さいものでも、使い方によっては武器にはなる。
扉の隙間から黒い影が見える。
僕は深呼吸をして――――――。
「スノー!?」
飛びかかろうとした僕に驚いたのか、スノーは目をまんまるにして、口をぽかーんと開けていた。
「大丈夫か?」
「えっ……ああ。まさか助けに来てくれるとは思わなくて……奴らかと思った」
「そうか。さ、早くしろ」
外に出ると、車があった。
僕は一番奥の席に座った。そこには二人の男女の姿があった。
「大丈夫だった?ごめんなさい。私、気づかなくって」
「……いいんだよ。別に」
今はまだ問い詰めない方がよさそうだ。
このペテン師女。
僕は心の中ではそう呟きながら、彼らの前ではつとめて笑顔に接した。
車は山道を抜け、でこぼこの道路に戻った。
その間にも車は大きく揺れた。
戦場の跡は何度見ても痛々しいものだ。