#17
僕たちが車の修理にあたっている頃、二人の男女は体を寄せ合っていた。
「ねえ、譲司……」
「なんだ?」
「私たちは、この中では他人でしょ」
「それがどうした?」
「もし、他人か身内。どちらかを犠牲にするとしたら?」
「……他人、だろうな」
「ええ。そう。私たちはこの中では他人。何かあった時に真っ先に犠牲になるのは私たちよ」
由梨が言うと、譲司ははっとなって顔を青ざめた。
「どうする?」
「仲間割れを起こさせればいいのよ」
すると、由梨は譲司に耳打ちした。
「なるほど……」
譲司はにやりと怪しい笑みを浮かべた。
一方その頃、その様子をじっと見ていたスノーは、あの二人の男女を嫌悪するようになっていた。
「お前らは手伝いもしないのか。そんなんじゃ車に乗せてやらないぞ」
「……手伝いたいところだけど、人手が足りていたようだから」
「じゃあ、外の見張りでもしろ。アンドロイドが来た時には悲鳴で知らせてくれれば一発だ」
「く、車の修理の方にするよ」
譲司はそう言って、蓮たちのほうにいった。
由梨はスノーのことを恨めしそうに見つめ、譲司の後についていった。
「ほら、やっぱり。あの男、私たちのことを嫌ってるわ」
「そのようだな」
「どうする?早くしないと……」
「大丈夫だ。君のことは僕が守るよ」
そう言って譲司は由梨を抱きしめた。