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white snow―リメイク版―  作者: 紅騎士と黒猫
Hasemiya Ren 2
16/20

#16

 「こんなところ歩いてられねえ。車を見つけなきゃな」


 トーニョが言うように、ここは戦場。

 生身の人間が歩くようなところではない。


 「車か……」


 スノーには心当たりがあるようだった。


 「グレイのところに行くか。ここからさほど遠くないはずだ。ただし、奴の家が爆撃で壊されてなければの話だが」


 「行くしかないな」


 僕が言うと、スノーは軽く頷いた。

 それから、戦場の道から少し逸れた森に僕たちは入っていった。

 こうして森に入ると、あの時のことが思い出される。

 僕は身体のどこかが締め付けられるような感触を覚えた。

 僕の心が悲鳴を上げている。

 これ以上、森には入ってはいけないと、忠告しているのだろうか。


 「おい、大丈夫か?また記憶喪失か」


 僕は頭を抱えて座り込んでしまった。

 スノーがなにかを言っているが、僕の耳には届かない。

 視界が暗くなってきた。














 僕が目を覚ました時、そこには誰もいなかった。

 冷たい地面。木枯らしが吹く音。森の中。

 スノーたちは?おいていかれたのか?

 僕は訳も分からないまま、暗い森の中を彷徨った。

 しかし行けども行けども、見えてくるのは枯れた木ばかり。

 悪夢か?僕は悪夢を見ているのか?















 二度目に目を覚ました時、前には見知らぬおじいさんがいた。


 「わっ!!」


 「おお、やっと起きたか。そこで待ってなさい。スノーたちを呼んでくる」


 そうか。やっぱりさっきのは悪夢だったんだ。

 おじいさんは腰を押さえがら、椅子から立ち、隣の部屋にいった。

 薄暗い部屋の中、たった一人残された僕は、夢から覚めた興奮が止まぬまま、ベッドの中で静かに深呼吸をした。


 「具合はどうだ。もう出発するぞ」


 「っ、体が痛いよ」


 「ぐずぐずするな。さあ、立て」


 スノーは僕を乱暴に叩き起した。

 僕は嫌々ながらも、ベッドから起き上がった。

 その時だった。誰かがドアをたたく音がした。

 何事かと、急いで隣の部屋にいくと、カウンターの下に隠れていたトーニョが唇に人差し指を当てて、静かにと小声で言った。

 僕とスノーはトーニョの傍に駆け寄った。

 そこにはおじいさんの姿もあった。


 「奴らが来たんじゃ」


 「奴ら?」


 おじいさんのいうことが僕には分からなかった。

 代わりにスノーが答えてくれた。


 「凶暴化したアンドロイドだ。あの屋敷にいたアンドロイドたちと同じにするなよ。奴らは人から独立したただの殺人ロボットだ」


 「殺人ロボット……」


 「しっ。来たぞ」


 その瞬間、無理やりに開けられたドアが勢いよく開いた。

 トーニョは素早く銃を構えたが、次の瞬間には銃を下ろしていた。


 「助けて!奴らに追われているの!」


 ドアから現れたのは二人の男女だった。ただでさえ狭いカウンターに強引に入ってきた。


 「待って。来るわ」


 女性はそう言って、トーニョに銃を構えているように指示した。

 しばらくすると、足音が聞こえてきた。

 皆は息をのんだ。

 来た。奴が……目の前に。


 「今だ!!」


 トーニョがそう意気込むと、引き金を2、3発引いた。

 アンドロイドの胸、頭から、白い煙が漂った。


 「急所だ。やったな」


 おじいさんはそう言い、トーニョの肩をたたいた。

 倒れて動かなくなったアンドロイドを棒で突いたり、その場で解体したりした。

 驚くべきことは、人間そっくりの容貌だ。

 あの屋敷のアンドロイドたちはいかにも機械という容貌だったが、彼は違う。

 その後、僕たちは武器と弾薬の準備をした。

 おじいさんはさっきスノーの言っていたグレイ。

 グレイの車は生憎故障中で、直すのに4時間はかかると言われ、僕たちは小屋で待機というかたちになった。


 「スノー、これは一体?」


 僕はアンドロイドに顔を向けながら聞いた。


 「すごいだろ。だから言ったんだ。外の世界はお前の思っている理想とは程遠いって」


 スノーは銃の弾を数えている最中だった。

 僕は二人の男女に声をかけた。


 「あなた方は?」


 「僕は譲司じょうじといいます。彼女は」


 「由梨ゆりです」


 譲司と由梨は恋人らしい。

 二人で地下鉄に乗り、南の地に逃れようとしていたのだという。


 「いきなり、電車内が暗くなって……再び照明がついたときは、悲鳴の渦でした。僕たちは必死に線路を走ってきたのです」


 「そうですか……」


 僕はこれ以上話すことは無いと判断し、スノーのところに戻った。


 「で?なにか分かったか」


 「いや、なにも。女性の方は由梨。男性の方は譲司っていう名前らしい」


 「ふーん。そうか。厄介ものが増えたな」


 「えっ?」


 僕は思わず訊き返した。


 「いや。何もない。……おい、トーニョ」


 そう言って、スノーは僕から逃げるように、トーニョのほうにいった。

 僕は軽くあしらわれたような気がしてならなかった。


 


 



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