第5話 蛇鶴八拳
いじめって知ってる?
「虐め」なのか「苛め」なのか解らんけどね。
子供の頃は小児喘息を患ってましてね。
それに加えてアトピー性皮膚炎も持ってまして。
まぁ今でこそ体力と腕力と大胸筋モンスターと言われてますが、
当時は運動やらなにやらは大の苦手でした。
小学生のカースト制なんてものは全国同じで運動が出来る子が上位で
運動が苦手な子はカースト最下位になるわけですね。
はれてカースト最下位に分類されていたわけですけど。
カースト最下位の人間がどのような学校生活を送るのか?
まぁ想像の通りです。
どんな想像をしましたか?
友達が居ないとか、陰キャで固まるとか、無視されるとか?
僕の時はそうですねー
北海道だってこともあり、冬は衣服を雪の中に埋められて隠されたりですね。
雪なので見つからないんですよ。
それでもうろうろと徘徊して探し回るんですけどね。
この時の心情は「服を無くしたら帰っても親に何て言えば良いか解らない」です。
それで必死に探すんですよね。
それと当時は爆竹がありましたね。
爆竹を持たされるわけですよ。
その爆竹に火がつけられるんですけど、我慢して持てと言われるので持ってるわけです。
親指の爪が爆竹で吹っ飛ぶんですよね。
痛いです。
爪ってキレイに吹っ飛ばないんですよ。
根元はくっついて先端側がベロンと剥がれるんですよね。
元には戻らないし、剥がし取るにしても痛いしで大変です。
あとはマウンテンデューですね。
その空き缶に何人かが代わる代わるおしっこを入れるんですよ。
するとマウンテンデューのような色味になるんですよね。
炭酸飲料よろしく泡もなんぼかありまして。
それをどうするのかって?
もちろん見て楽しむんですよ。
飲んでる所をね。
親の通帳と印鑑を取って来いってのもありましたか。
殴る蹴るなんてことは日常すぎていじめの認識すら無くなってますよね。
日常ですから、挨拶と同じです。
ある日、テレビの放送でカンフー映画がやってたんですよ。
ジャッキーチェンの確か蛇鶴八拳だったと思います。
弱くていじめられてるジャッキーがじいさんの師匠について修行をするんですよ。
それはそれは辛い修行なんですけどね。
それを耐え抜いて強くなって敵を倒すって映画ですね。
生まれて初めてカンフー映画を見たのだと思います。
親に泣きながら懇願しました。
これをやらせて欲しいと。
自分もこうなりたいんだと。
小学生が泣きながら親に物を頼む光景ってのはなかなか想像出来ないですが。
親にも思う所があったのでしょうね。
バスで通えるところに少林寺拳法を教えているところを探して来てくれましてね。
はれてその道場に通うことが出来ました。
片道1時間以上かけて歩いて帰るなんてこともしてました。
ところで。
冒頭にも言ったのですが、僕は小児喘息がありましてね。
喘息の症状がひどくなると呼吸困難になるんですよ。
「もう少しで死ぬところでしたよ」と病院の先生に親が怒られてる姿を何度か見た記憶があります。
体的にはかなりしんどかったはずなんですが、良くやってましたよ。
道場から家に帰って食事になるんですけどね。
箸が持てないんですよ。
手に力が入らず食欲も無い。
しかしですね。食べなければ強くなれないと。
ジャッキーチェンのようにはなれないと。
自分はジャッキーチェンのように強くなるんだと。
スプーンを痙攣する手で持って食べてました。
やはり強さってのはイコールで日々の鍛錬の積み重ねになると実感するわけです。
いじめっこのパンチは遅く弱く、キックも遅く弱く。
逆にこちらの突きは一撃では止まらず、毎日のように叩きこまれている一連の動作は相手の戦意を喪失させるには十分なわけでして。
そういう事が出来るようになった頃には喘息も良くなり、なぜかアトピーも酷くは無くなってましたかね。
まぁ、世の中にはそう言う人も居るんだな程度に聞いて頂けたら幸いです。




