(4)ビッグプレゼント
翌日からREIZのサードアルバムの録音が始まった。キーボーのいない録音スタジオで令が奮闘していた。歌と演奏に加えて、プロデュースと録音エンジニアリングを一手に引き受けていたのだ。
「さすが、キーボーの息子だな」
タッキーとベスが感心していた。もちろん、キーボーとの経験の差は歴然だったが、そのセンスは勝るとも劣らないと言っても過言ではなかった。
「見様見真似です」
令は照れていたが、超一流の素質を存分に発揮していた。
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「満足のいくまで思う存分にやれ」という社長の全面的な後押しに支えられて、REIZはなんの気兼ねもなくアメリカでの録音作業に没頭できた。だから、妥協することなく細部にまで気を配った緻密な作業を進めることができた。そして、半年という異例の録音期間を経て、全曲英語のサードアルバムが完成した。
本より先にアメリカで発売することになった。
発売元はエレガントミュージックUSA。
エレガントミュージック社のアメリカ現地法人を設立したのだ。
辞令を受け取った時、少なからず驚いた。
代表取締役社長という肩書が与えられたからだ。
まさか社長と呼ばれる立場になるとは思わなかったので、喜びよりも驚きの方が大きかった。
しかし、それは日が経つに連れて重圧に変わった。
社運をかけた挑戦の重さに押しつぶされそうになった。
それでも、本社の社長も轟も全面的にバックアップすると言ってくれたし、企画部担当を外れることになったので、覚悟を決めて背水の陣を敷いた。アメリカに家を借りて、妻を呼び寄せたのだ。そして、失敗したら責任を取って辞表を提出する覚悟だと伝えた。人生を賭けた大一番が始まろうとしていた。
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社員が少ないので、社長兼企画部長兼なんでも課長としてフル回転で仕事に臨んだ。アメリカの市場を熟知している現地のプロモーターや広告代理店と何度も打ち合わせをして、発売日とプロモーションを固めていった。
そんな時、思いもかけない、そして、信じられない幸運が舞い込んできた。それは、キーボーからのビッグなプレゼントだった。
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「あいつらが卒業祝いをしてくれるって言うんで、REIZのことを頼んだらさ」
くくくっと笑った。
「あっさり、OKだって」
また、くくくっと笑った。
しかし、なんのことかさっぱりわからなかった。
何がOKだって?
それに、あいつらって誰?
首を傾げるしかなかったが、キーボーはそんなことにお構いなく平然と言葉を継いだ。
「発売日が決まったら教えてくれって。すぐに飛んでいくからだって」
と言われても、なんのことかまったくわからなかった。
口を尖らしていると、彼はまたも平然と言ってのけた。
「発売日にジョイントコンサートをしてくれるってさ、ビートローリングスとクイーン・クリムゾンが」
はっ?
えっ?
何?
それって……、
ほとんど気絶しそうになった。
「彼らが前座をするってさ」
その瞬間、目の前からキーボーの顔が消えた。




