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最上極

 

 須尚からREIZのデビューアルバムの大成功を聞いて、自らのことのように嬉しくなった。親友の努力が報われたことに大きな喜びを感じた。

 すると、須尚が長崎で苦労していた時のことを思い出した。あの時は、マイナスからのスタートだと愚痴を聞かされたこともあった。「そのうちいいこともあるよ」と慰めたが、「そうかな?」と落ち込んだ声が返ってきたことも一度や二度ではなかった。

 それでも、彼は不屈の精神で逆境を跳ね返した。それだけでなく、売上をグングン伸ばして、福岡、大阪、東京へと栄転を重ねた。

 そして今、彼自身が手掛けたバンド、愛娘が中心メンバーとなっているバンドで日本の音楽界を席巻している。なんと素晴らしいことだと心の中で拍手を送った。


 しかし、自分の置かれた状況を考えると、その喜びは半減した。いや、激減したと言った方が当たっているかもしれなかった。実は、最悪の結果がニタス博士から告げられたのだ。

 B誘導体に続いて、AとCの誘導体も試験中止に追い込まれていた。

 理由は同じだった。毛が太くなりすぎて、聞こえすぎるショック死が起こったのだ。

 それが告げられた瞬間、合弁研究所は沈鬱な空気に包み込まれた。誰もが意気消沈した。最上は死にたくなるほど落ち込んだ。


 研究開始から2 年が経っていた。なんの成果も得られないまま時間だけが過ぎてしまった。

 それに、新たな誘導体の開発も行き詰まっていた。どんなことにも動じないニタスでさえ、口数が少なくなっていた。最上には成す術がなかった。


 音野と冶金が共同開発している骨伝導補聴器は順調に課題をクリアしていたが、有毛細胞の毛の再生薬に成功しないと難聴に対するトータル・ソリューションは提供できない。骨伝導補聴器は外耳と中耳に障害のある患者の聴力向上には期待できるが、内耳に障害のある患者には難しい。だから、なんとしても再生薬の開発を成功させなければならないのだ。


 何か手立ては無いか、

 何か見落としていないか、


 最上は必死になって糸口を探し続けた。



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