表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/103

最上笑美 

 

「おじいちゃん」


 笑美が男性患者の耳元で呼びかけた。彼は耳に手を当て声を聞こうとしたが、「聞こえん」とびっくりするくらいの大声を返してきた。仕方がないので、今度はもっと大きな声で呼びかけた。


「おじいちゃん、このお薬は1日3回、食後に飲んでね。こっちの薬は食前よ。わかった?」


 彼は頷いたが、すぐに目を逸らせたので心配になった。


 本当にわかっているのかしら? 


 確認が必要だと思って、もう一度耳元で問いかけた。


「どっちが食後で、どっちが食前?」


「1日3回じゃろ。そんなことわかっとる」


 通じていなかった。すぐに服薬説明書と薬袋を回収し、2つに分けた。〈食後用〉と〈食前用〉に。そして、〈食後用〉は赤字で、〈食前用〉は青字で、目立つように太いペンで書いて、文字を指差しながら再度説明した。今度は彼も理解してくれた。


 調剤室に戻ると、若い薬剤師が労いの言葉をかけてきた。


「薬局長、ご苦労様でした。耳が聞こえにくい年配の患者さんが増えたので服用方法を説明するのも大変になってきましたね。高齢化が進んでいるから仕方ないですけど」


 その通りだった。患者の多くが老人で、難聴を患っている人も少なくなかった。だから、彼らとのコミュニケーションは楽ではなかった。


 老人性難聴に効く薬があればいいのに……、


 思わず大きなため息が出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ