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須尚正

 

 また同じ路線……、


 轟から依頼を受けた4曲目の曲調を聞いて唖然とした。いくら大ヒットしているとはいえ、この路線を続けたらビフォー&アフターらしさが無くなってしまう。

 それに、元の路線に戻さないとバンドが危ない。テレビに映るタッキーとベスの生気のない顔が気になって仕方がなかった。


「哀愁のあるハードなフォークロックに戻すべきです」


 強い口調で訴えたが、受話器の向こうで轟は無言だった。


「『涙のベル』と同じ路線を続ければバンドは崩壊しますよ。それでもいいんですか」


 精一杯、危機感を伝えた。しかし轟は済まなそうな声で、「もう決まったことなの。私にできることは何もないの。ごめんなさい」と謝った。


        *


 悪い予感は……残念ながら的中してしまった。轟から聞いたところによると、タッキーとベスの不満は限界に達し、その怒りは企画部長や轟にとどまらずキーボーへと向かったらしい。

 (いわ)れのない非難を受けるキーボーも態度を硬化させたそうだ。両者の溝は埋めようのない深さになり、最早修復は不可能な状態になってしまったのだという。


 あれほど仲が良かった3人なのに……、


 犬猿の状態に陥って、顔も見たくない程の嫌悪感を抱くようになった状況を想像した。


 なんでこんなことになったんだ……、


 関係者の誰もが望まない最悪の結果をもたらしてしまった事態に頭を抱えた。


 バンドが空中分解してしまったなんて……、


 まだ信じられなかった。

 いや、信じたくなかった。

 しかし、事実を変えることはできなかった。順調に成功への階段を上っていたビフォー&アフターの活動はエレガントミュージック社の企画部長に翻弄(ほんろう)され、花がしおれるように散っていった。今まさに桜が開花しようとしていた時に。



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