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(8)圧巻のライヴ

 

 翌日は快晴だった。雲一つない真っ青な空が広がり、正にイベント日和という最高の天気だった。

 会場の稲佐山公園に設けられた特設ステージでは、ビフォー&アフターが最終の音響チェックを行っていた。もちろん、ギターを弾いているのは自分ではない。ツアーに同行しているギタリストだった。


「須尚さん、スナッチはどこにいるの?」


 轟が慌てふためいていた。


「もうすぐ始まるのに、どこにもいないの」


 しきりに時計を気にした。


「探してきます」


 あたりをキョロキョロ見回しながら、スナッチを探す振りをして走った。そして、彼女から見えないところまで行くと、急いで仮設の楽屋へ走り込んだ。


 中には誰もいなかった。カーテンで仕切られた小さなスペースで背広を脱ぎ、急いでステージ衣装に着替えた。そして、サングラスをかけ、髪を前に下ろした。


 今から僕はスナッチだ。

 ビフォー&アフターのスナッチだ! 


 自らに言い聞かせて両手で頬を叩いた。その時だった、


「須尚さん、スナッチいた?」


 轟が楽屋へ入ってきた。その瞬間、あっ、というような真ん丸な目になって、スナッチに変身した自分を指差した。


「どこにいたの? みんなで探してたのよ。でも、良かった」


 安心したような表情になって肩を掴まれた。


「ところで、須尚さんを見なかった?」


 無言で首を横に振った。声を出すとバレると思ったからだ。


「おかしいわね……」


 彼女が首を傾げた。


        *


 ビフォー&アフターのデビュー・ライヴが始まった。キーボーとタッキーとベスの3人とツアー・ギタリストの演奏に会場は沸いていた。

 それを聞きながら楽屋で曲順の確認をしていたが、出番が近づくにつれて緊張が高まり、拭いても拭いても掌の汗が止まらなくなった。


「次よ」


 轟に背中を押されて楽屋を出た。ステージの裏側をそっと歩いて、観客に気づかれないようにアンプの陰に隠れた。そして、掌の汗をズボンで拭き取ったあと、両手で頬をバチンと叩いて気合を入れ、ベスの斜め後ろに移動してギターを構えた。


 曲が終わってタッキーがこちらの姿を確認すると、スティックでリズムを取り始めた。


「ワン、トゥー、スリー、フォー」


 イントロを弾いた瞬間、会場から大歓声が沸き起こった。

 思わず鳥肌が立った。

 サビの部分でキーボーとベスの歌の掛け合いが始まると、キャーという歓声が押し寄せてきた。

 陶酔状態の中、無我夢中でギターを弾き、速弾きを連発した。物凄い歓声と拍手に我を忘れて弾きまくった。すると更に凄い歓声が沸き起こった。


 シビレまくった。

 もう上り詰めるしかなかった。

 ハイになったままエンディングへ流れ込んだ。

 ジャン♪ と決めた瞬間、観客が総立ちになった。

 物凄い歓声と拍手がステージに押し寄せてきた。

 そして、一斉に皆が叫び始めた。


 アンコール、アンコール、アンコール、


 それに応えて全員でステージに戻り、何度もお辞儀をした。

 しかし、それだけでは許してくれなかった。アンコールの声が鳴り止まないのだ。


 アンコール、アンコール、アンコール、


 楽屋に引き返したあとも、更に大きな声で求められた。

 3人に目を向けると、次々に頷いた。

 考えていることは一緒だった。

 楽器を持ってステージに戻ると、またも大歓声が迎えてくれた。


「ワン、トゥー、スリー、フォー」


 二度目の『ロンリー・ローラ』が炸裂した。



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