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(7)ロンリー・ローラ

 

 日曜日の12時55分、ラジカセの電源を入れ、アンテナを伸ばした。そして、河合のラジオ局にダイヤルを合わせて、その時を待った。13時から始まる『今週のベストテン』という番組を聞くためだ。


 番組が始まった。コマーシャルのあと、御機嫌なテーマソングが流れたと思ったら、男性パーソナリティーが速射砲のように言葉を繰り出した。そして10位から順番にヒット曲を紹介していき、6位までの紹介が終わったあと、CMが始まった。


 次だ。


 心臓が早鐘を打ち出した。ラジカセを食い入るように見つめて、その時を待った。


 永遠に続くかと思われたCMがやっと終わると、待ち望んだ『新譜紹介コーナー』が始まった。


「今週ご紹介するのはエレガントミュージック社期待の新人バンド『ビフォー&アフター』です」


 パーソナリティーが甲高い声を発したあと、思わせ振りに少し間を置いた。

 そして、ひと際通る声で、「ビフォー&アフターのデビュー曲『ロンリー・ローラ』。カッコいいぜ!」とキメた。


        ♪  ♪


『ロンリー・ローラ』    作詞作曲:スナッチ


 見知らぬ街の小高い丘に 一人の娘が住んでいた 

 寂しそうな目をして

 彼女はいつも一人ぼっち 生まれた時から親の顔さえ

 ロンリー・ローラ 知らない


 夕焼けの海に 祈りを告げる

 どうか今 わたしの目の前に 愛するあの人を

 あなたのお恵みで……


 愛する人は嵐の中で 波にのまれて死んでいった

 ロンリー・ローラ 一人さ



 愛する人が死んだことを 彼女は今も信じていない

 きっといつか帰ると

 思い出の中にしがみついて 愛する人の写真を胸に

 ロンリー・ローラ 待っている


 朝焼けの空に 祈りを告げる

 どうか今 わたしの目の前に 愛するあの人を

 お願いもう一度……


 虚しく声が空に響くだけ 愛する人は小さな星に

 ロンリー・ローラ 一人さ


        ♪  ♪


 ラジオ局のオンエアとレコード店のプロモーションがうまく噛み合った長崎で『ロンリー・ローラ』に火がついた。そして、熊本、佐賀、更には、九州全体へと広がっていった。それを見た会社は急遽プロモーション用のライヴ日程を組み直し、長崎から始めることになった。


 それによって一気に忙しくなり、準備に忙殺された。

 そんな中、ライヴ前日には企画部長、営業部長に加えて取締役までやってくるという連絡が入った。


 イベントの準備だけでも大変なのに、会社の偉いさんを迎える準備までさせられるなんて何を考えているんだ! 


 愚痴の塊になっていたら、更に手に負えないオファーが来てしまった。長崎でのライヴにスナッチを出演させろという指示が出たのだ。


 勘弁してくれ。エレガントミュージック社の長崎担当『須尚正』とギタリスト『スナッチ』の一人二役なんて無理だ。勘弁してくれ!


 余りの無理難題に怒りが爆発しそうになったが、断り切れなかった。キーボーとタッキーとベスに電話で拝み倒されて、須尚正とスナッチの二役をやる破目になってしまった。


 背広姿の須尚正とステージ衣装のスナッチ、

 どこでどうやって変身すればいいんだ? 

 変わり身の術を教えてくれ! 


 ヤケクソになってブーたれるしかなかった。


        *


 イベント前日、会社の偉いさん達を長崎空港に迎えに行き、その足で河合のラジオ局へ連れて行った。

 大学の同期である2人の取締役は懐かしそうに学生時代の話で盛り上がり、夜の宴会へと向かっていった。

 轟と共に同席するようにと誘われたが、翌日のイベント準備があるのでと断って、キーボーとタッキーとベスが待つホテルへ向かった。そして、練習用に借りていたスタジオで深夜まで何度も音合わせを繰り返した。



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